紙の本
科学技術政策の担当者に届いてほしい本
2011/09/02 21:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎日新聞の科学環境部は、ほかの新聞社の科学部とくらべて、扱う話題が果たして科学的な話題かどうかという点に、いい意味でこだわりが強い印象がある。だから読んでいて、面白い。
その毎日新聞・科学部所属の記者が「理系白書」という名の本をシリーズで出している。これは3冊目だ。新聞社らしく、根本に横たわる問題を次々にえぐり出す。
書名の通り、アジアに追い上げられ、危うい日本の科学技術というのがテーマだ。本書が書かれた頃は、日本人のノーベル賞受賞者が相次ぎ、山中伸弥教授らによってiPS細胞が発見されるなど、日本の底力に歓喜の声がわき上がっていたのだから、冷静に足もとの危うさを指摘する着眼点のよさが感じられる。
山中教授の偉業は、欧米で特許を取得するなど、このところ続々と海外で認められている。その背景事情から説き起こしているので、けっこうためになる。うまくいく可能性がはっきりしないのに、この研究に乗り出した動機など、異分野の者にも、考えさせるものがある。
本書の執筆時点では「今後のiPS細胞の特許をめぐる競争の行方は、なお予断を許さない状況だ」(p.41)とあるが、2011年の夏に晴れて、欧米で主要特許の取得に成功している。
ただし、第2章以降は、タイトルを見ただけで元気を失ってしまう。
第2章 「日本を猛追するアジア」
第3章 「人材を生かさない日本」
第4章 「進む道を見失った日本の戦略」
第5章 「日本は反撃できるのか」
第6章 「これからの日本のものづくり」
P.69にあるアジアのノーベル賞受賞者一覧(自然科学分野)では、日本が13人と他国を大きく引き離している。中国2人、インド1人、パキスタン1人というのが実情だ。ただ、受賞対象となる研究は、数十年前のものだったりするので、国を挙げてノーベル賞獲得を目指している韓国や、バイオ研究で有力な研究者を世界から集めているシンガポールなどに、もしかしたらいつか追い越されてしまうのかも知れない。その心配はたしかにある。
こうした日本の理系研究者のおかれた厳しい状況は、はなはだ心許ないし、こうした本の出版が、日本政府の方針を変えさせたりすることにつながればいいなと思う。
とはいえ、本書は2009年1月に刊行された本だから仕方ないとは思いつつ、2011.3.11の地震と津波、原発災害で弱っている日本人が読むには、ちょっとつらいものがあるというのが偽らざる心境だ。
震災から立ち直るまでは、明るい前向きなニュースが読みたいです。毎日新聞さんお願いします。ぺこり。
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2009/1/17 メトロ書店御影クラッセ店にて購入
2009/4/16〜4/20
毎日新聞社の科学環境部による理系白書の第3弾。
今回は、アジアの生産力・技術力アップを受けて、日本のこれからを説いている。山中先生のiPS 細胞という大ホームランの話から始まって(このあたりはまだ夢がある)、日本の理系の研究者や若い人たちの置かれている状況を、理系の真っ只中にいる私に言わせていただけば、もう何年も前からわかっている話を取材をもとに構成している(まあ、噂レベルや感覚とは違って数値的な裏づけはあるものの)。アジアに技術を盗まれたくない、というのも一理あるし、どんどん教えてあげればよい、というのも又一理である。なかなか結論の出るものでもないであろう。理系の人間としては、こうやって大新聞社がキャンペーンを張り続けてくれて、世間の理系を見る目が変わるのを期待するしかないのであろうか。とにかく、理系は苦労の割に報われなさ過ぎている。技術立国といいながら、「好きでやってんだろ」的な我慢を強いられすぎていて、理系に夢が無くなってしまっている。もっと、理系に憧れが持てるような社会にして欲しい(昨年、ノーベル賞をとられた先生方もおっしゃっていたが)。
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理系白書第3弾。アジアに猛追され、欧米に出遅れる日本のサイエンスの未来は?
問題は、ずばりマネジメントの問題。資金がまわらない、評価ができない。特許競争に負ける。などなど・・・。
これは、日本がダメになったというよりは、日本の地位が向上したためだと思う。かつては、先頭を走る欧米を追いかけるだけで良かった。しかし、いくつかの分野では追いついてしまった現在では、自ら戦略を立てなければならない。それを行う力が今の日本には足りない。逆にアジアは、かつての日本のように、先頭集団を猛追している。
例えば、NatureやScienceなどで評価されてから、大幅な予算が出たりする。つまり海外で評価してもらわないと決断できないわけだ。これでは、先頭は走れない。
文理を問わず、マネジメントの訓練をしっかり積ませないと、この国は沈んでしまうと感じた。そして、制度を変える、減点主義をやめて、リスクを取っていけるようにする。海外からの評価を待って予算を投入していたら、利益は少ない。
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ビジネスセミナーに一緒に参加した理系学生に教えてもらった本。
技術者の立場・視点から描き下ろしている本。
営業職ではあるが、メーカーに関わる自分にとっては、今後の製造メーカー、いやむしろ
日本における”危機”とか”警戒心”を感じさせてくれる本。
中国、インドなどの国々から優秀な技術者が多く輩出される中、日本の技術者の未来とは。
日本における技術者の匠を多くしていくためにも、国レベルにおける政策が必要であるし、
今後はアジア諸国をそういった方面で牽引していきながら、日本の強さ・誇りを示していく必要がある。
個人が実力を発揮できない社会構造、転身や挑戦における失敗による立ち直れない雰囲気、安定志向などが
取りまている環境では、日本の優秀な技術者は海外へと出て行ってしまう。
こういった問題を、個人レベルでも常に熟考していきたいと奮い立たせてくれた本。
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2008/3/6
科学のけるアジアの猛追や日本の科学戦略の問題点について述べた後,日本が科学技術で世界と競争していく道を探るという構成。これから先発展していくのはコンピュータ,ナノテクノロジー,バイオなんだろうなと思うが…自分の進むべき道が見えてこない。
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またかよって感じですが第三弾です。
今度は研究に焦点をおいて書かれています。
日本ってなんだかんだ他国よりも科学技術に力を入れているようですね。
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日本はもはや科学先進国ではない!?という感じの本。
「日本を抜かせ、米国に追いつけ!」と言わんばかりに政策として科学を重要視する、韓国・中国。官僚制が硬直化や、意思決定に長い時間をかけるシステムになってしまった日本と違い、即断即決でバイオ面で猛追撃をかけるシンガポール。
それに対し、日本に打つ手はあるのか?新聞社が書いているだけの事があり、片方の意見に寄りすぎることもなくバランスよい。
日本の問題点は、ハード面重視でソフト面が軽視されること。アジアの諸外国と違い、危機感が若者に少ないこと。ハードスキームの硬直化が挙げられるのかもしれない。イノベーションは、異なるバックグラウンドを持つ人間がしょっちゅう触れ合うことでたくさん、大きいものが生まれる。
もう少しその問題点を踏まえた上で既存の技術をどのように生かしていくのか、ブレのない戦略の策定が必要になってくる。。
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大学で捨ててあったのを拾って読んだ本。
研究者や技術者の現状を取材したもの。
世界に視野を広めなくては!と感じる1冊。
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"飛躍するアジア どうする日本の若者たち"
【選書理由】
仲のいいブロガーさんが読んでいたから。
【感想】
「これから世界はどうなっていくのか」について知りたかったのに、
得たのは研究者として大切にしなければならない姿勢。
研究者に限らず、日本人はもっと自分をアピールした方が、
いいのかもしれない。
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[BOOKデータベースより]
二〇〇六年、中国人研究者の発表論文数は米国に次いで世界二位となった。引用された論文数や引用回数では、まだ日本が多いものの、理学分野では抜かれるのも時間の問題だ。工学分野においても、韓国をはじめとする電機メーカーに、シェアで抜かれている。日本人研究者は、今何をすべきなのか。
1章 日本発「夢の新万能細胞」のこれから;
2章 日本を猛追するアジア;
3章 人材を生かさない日本;
4章 進む道を見失った日本の戦略;
5章 日本は反撃できるのか;
6章 これからの日本のものづくり
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二〇〇六年、中国人研究者の発表論文数は米国に次いで世界二位となった。引用された論文数や引用回数では、まだ日本が多いものの、理学分野では抜かれるのも時間の問題だ。工学分野においても、韓国をはじめとする電機メーカーに、シェアで抜かれている。日本人研究者は、今何をすべきなのか。
研究室の先輩が置いていった本。科学技術が国を支える上で大事、しかし日本に置ける科学者技術者の扱いが低い。という一作目と似た内容。海外に技術者が流出していき、日本の国力が下がる。それを防ぐにはどうしたらいいかという話。色々な話があり読み応えがあった。
理系白書の三冊は(特に高校生に)是非ともすすめたいと思える本であった。