紙の本
ロシアの戦略の中身を分かりやすい文章で説明する1冊
2023/12/06 07:38
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウクライナや、ジョージアでロシアが展開した新しい国際紛争の形態は”ハイブリッド戦争”と呼ばれ、従来の軍事一辺倒ではなく、政治工作による世論の操作や、インターネットを利用した情報操作、サイバー攻撃などを複合的に活用しています。ロシアが用いる”ハイブリッド戦争”とはどういうものか、ロシアの国家戦略と絡めて解説しています。
従来の戦争は国と国との間で宣戦布告から始まって開始されるのに対し、軍が動く前にサイバー攻撃で相手国のインフラ等に混乱を生じさせたり、フェイクニュースの流布で世論を有利に導いたり、どこからが戦争なのか明確でない形で戦争が開始されるようになっています。また、ロシアで顕著なのは民間軍事会社が活発に活動している点です。民間軍事会社は、最新式の装備をそろえ、訓練も行き届き、正規軍と変わらない能力を保持するまでになっており、ロシア軍として活動してはロシアの関与が明確になり、国際法上の問題となるような状況において、ロシア軍に代わって紛争地域に展開し、治安維持やロシアが支援するグループの将兵への訓練なども請け負っているとの事でした。
ロシア自体が民主主義国家ではないが故、肩入れする相手国の政治体制が非民主主義的であったり、独裁制に近く人権の扱いに問題がある政権であっても躊躇なく支援している実態を、多くの実例を挙げつつ解説しています。実例としてはトランプ大統領が大統領選に勝利した2016年のアメリカ大統領選挙や、ウクライナのクリミア併合、ジョージアでの武力介入、アフリカ諸国への接触など、かなり具体的に挙げられています。
中国やアメリカを扱った書籍が多い中、ロシアを扱った書籍はあまり多くないので、読んでみました。
新書1冊にしては情報量も多いですが、あえて1点だけ気になったのは、著者の文体に「~であるという。」が多用されている事です。ロシアだけに直接取材が出来なかったりという制約もあるのでしょうが、あまりに伝聞っぽい印象が強く、読んでいてちょっとすっきりしませんでした。
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投稿者:sas - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハイブリッド戦争を平気で仕掛けることのできるロシアでは、子供たちにどういった教育を施しているのか?
ロシアが国連の常任理事国に居座っていること自体、世界の平和の安定に繋がらないことがあらためて分かった。
紙の本
現代の戦争
2021/02/19 10:09
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争と言えば、物理的破壊力を行使して相手を撃破することだと考えるし、国際法も遵守するひつようがある。しかし、国家として相手にダメージを与える手段は物理的有形力だけではない。サイバー攻撃やプロパガンダなど様々な手段が入り交じったハイブリッドなものとなっている。とくに、それらが得意なのは、技術力もあり民主的な政治倫理が欠如したロシアの得意分野である。本書は、その概要を明らかにしてくれる一冊である。
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「ハイブリッド」というのは「異質なモノが交じり合って成立している」という程の意味で、現在では広く用いられている表現になるように思う。それが付せられた「ハイブリッド戦争」ということになれば「??」という感だ…
「ハイブリッド戦争」というのは、正規軍による活動、非正規な武装勢力による活動、所謂“情報戦”ということになる情報操作等のあらゆる活動、陣営に有利になり得る勢力が権力に近付くことが叶うような、所謂“情報工作”というようなこと等、様々な要素を織り交ぜて「自身の陣営が有利になるようにあらゆる要素を適宜組合わせて展開する活動」という事柄の総称ということであるらしい。本書によれば、ロシアは21世紀に入ってから、場合によってはその以前から、利用可能なあらゆる資源を使って、そうした「自身の陣営が有利になるようにあらゆる要素を適宜組合わせて展開する活動」に努力していて、それを<ハイブリッド戦争>と呼ぶようになっているということであるようなのだ。
“戦争”とでも言えば、軍艦が列になって航行する様、軍用機の編隊が上空に飛び交う様、物々しい車輛の一群が街や原野を行き交う様を想うが、実はそれは「末端の事象」で、陸海空軍の兵器が動くに至るまでの「余りにも多彩な様々な事柄」というようなモノが存在する。そういう意味では、“戦争”というモノは何時の間にか「様々な要素が組み合わさる」という意味では「かなり以前から“ハイブリッド”」なのかもしれないと思っている。自身の中にそうした問題意識も在るのだが、それはそれとして、本書をなかなかに興味深く拝読した。
近年、ロシアでは「自身の陣営が有利になるようにあらゆる要素を適宜組合わせて展開する活動」に努力が執拗なまでに重ねられているのだという。それを本書の著者自身を含む論者が<ハイブリッド戦争>と呼んでいるということになる。
そういう<ハイブリッド戦争>というような展開の中に世界の様々な地域が関わるのだが、実は日本もその関りと無関係でも居られないのである。
色々な意味で「広く読まれるべき研究」というように思った。そういうことで広く薦めたい一冊だ…
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プーチン以後のロシアの外交戦略を調べると、国力の不足する中でハイブリッド戦争の手法を編み出してきたことがわかる、そのキーワードはサイバー戦・PMC・政治技術(世論誘導攪乱)である、と言うあたりが著者の主張で、流れや事例を鳥瞰しているところに価値があると思う。
概観なのでここの事例については踏み込む紙幅がなかったようだ。
世界情勢やサイバー戦に興味のある方にお勧めする。
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2013年 ウクライナ危機
プロパガンダ、親露派政治家、民兵、フェイクニュース、サイバー攻撃、経済脅迫
領土拡大ではなく、旧ソ連地域での影響力の拡大による一極を目論む
PMC 民間軍事会社
最前線で戦う戦士一人につき100人の後方支援。
ロシアでは非合法事業
ワグネル 5000人以上? 2000人以上が戦闘要員
シャープパワー
ソフトパワーの悪質版 フェイクニュース クリミア併合
サイバー攻撃
攻撃範囲が無限大、相手の特定困難、小が大を攻撃、不可視、法的グレーゾーン
ロシア サイバー軍1000人 中国10万人、日本500人へ
APT28 ファンシーベア、APT29 コージーベア、ブーデゥーベア、ベノモウスベア
DDoS攻撃
IRA 大統領選挙操作
エストニア
2013年タリンマニュアル NATOサイバー防衛協力センターCCDCOE
ジョージア
2011年CERTサイバートラップ ロシアのハッカー情報取得
中露 2015年サイバーセキュリティ協定
北極圏
温暖化による天然資源 北極海航路=北方領土の主点 択捉国後 潜水艦航路
軍事砕氷船、ミサイル防衛、航空機ツボレフTu160、極地戦車リザル、
空中発射弾道ミサイル キンジャール
ニカラグア
軍事支援 2017年グロナス(≒GPS)基地「チャイカ」
インド
軍事深化 70%がロシア製兵器 地対空ミサイル トリウームフ 原発2+5基導入へ
中東
シリア紛争への介入 海軍空軍基地 トルコへ接近 地対空ミサイル導入
武器大国
通常兵器で劣る面を ミサイル防衛、極超音速、核搭載型の新型兵器
極超音速滑空体 アバンガルド
極超音速ミサイル キンジャール
原子力推進魚雷 ポセイドン
原子力推進巡航ミサイル ブレベスニク
新型ICBM サルマト
アフリカ 最前線
地域紛争に関与 軍事拠点 天然資源 鉱物の輸入
非国家主体との対決の経験 欧米の価値観を共有できない非民主体制国
表面的に同じ方向の中国とも対抗し、中国一片道倒を避ける心情を利用
①武器兵器販売 原子力発電の輸出
②安全保障(反乱やテロ対策コンサルティング:グレーゾーンPMCとの連携)
③国連で65票の政治的ツール 影響力 フェイクニュースのフランチャイズ化
対抗策
・敵を知る
・サイバー領域レッドラインを設ける
・敵の負担コストを上げる
・防衛強化(サイバー衛生):情報リテラシー教育
・攻撃(インフラへのサイバー攻撃):反撃用ウイルス
・結果の警告(抑止効果)
・サイバー、宇宙条約(ジュネーヴ条約)
・同盟維持強化(中露対抗)
・リーダーシップ(国民への認知):ホワイトハッカー
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ロシアが実施しているハイブリッド戦争や現代ロシアの地政学を解説した本。『コーカサスの十字路』を著した廣瀬先生の新作だったので早速読んでみた。この前に古川氏の『破壊戦』を読んでいたので、内容はすっと頭に入ってきた。第3章の『ロシアの地政学』は、『新しい地政学』のロシアの章とほぼ同じ内容であったものの、新書で手軽に読めるのは大変助かった。
第4章以降は、ロシアが近年重要地域とみなしている北極、中南米、アフリカについてであった。特にアフリカは、近年ロシアの「ハイブリッド戦争展開の最前線」と位置付けられており、ロシアの「安全保障の輸出」戦略、はたまた他地域に対する「ハイブリッド戦争」の展開に利用されているという点は、非常に参考になった。
一読だけでは理解しきれない重厚な内容なので、折を見て再読したい。
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明確に定義付けされていないハイブリッド戦争、特にロシアのそれについて、実例豊富にわかりやすくまとめている。
正規戦・非正規戦の境を越え、ありとあらゆる手段を用いて政治的目的を達成しようとするハイブリッド戦争。ジョージアとの戦争で実績を積み、ウクライナで花開かせたと言われる。そしてシリアへこ介入もハイブリッド戦争の一環であり、かなりの部分がPMCに担われている。現代のロシアの戦争目的は領土拡大自体ではなく敵対的な同盟の弱体化、自身の同盟の拡充である。面白いのはロシア自体は自身の戦略をハイブリッド戦争と呼びたがらず、むしろ西側諸国からハイブリッド戦争を仕掛けられていると考えていること。ハイブリッド戦争にはprobing、探りとしての手段という側面がある。
コサックの由来やPMCが持つ魅力、ソフトパワーの悪質版であるシャープパワー、サイバー戦とタリン事件、北極圏や南米、アフリカ等での地域ごとのロシアの活動、についてもまとまっていてわかりやすい。
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「ハイブリッド戦争」の定義が広すぎる感がある(この批判は志田淳二郎の本でされてたように思う)が、ロシアの安全保障戦略において軍事力と非軍事的な力を巧妙に組み合わせ、使い分けて影響力を行使している実態はよくわかる。
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2022/4/18読了。まさに旬な話題で非常に説得力があり分析力も明快で現代の武力戦を多面的(サイバー攻撃、情報戦と宣伝戦)に見る思考がいかに重要になって来ているか恐ろしさと併せて興味深く読ませてもらいました。特に、第二章と第三章 ロシア外交のバックボーン-地政学は、今のプーチンロシアを知る上で参考になった。廣瀬教授の『コーカサス 国際関係の十字路』と『未承認国家と覇権なき世界』『ロシアと中国 反米の戦略』は読書予定に加えたい。
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プーチンの考えていることを知るならイズムィコ同士の本を読んだ後に読むべきはこれかなぁと思って手に取りました。ハイブリッドと言うとリアル空間とインターネット空間のハイブリッドを考えますが、それだけでなくアフリカの安定してないところに介入して属国を増やす作戦もあるのかと。美しいやり方とは思えないですが、国連の多数決で勝つためには子分を沢山作るのが有利なのも確かで、こういう帝国主義的行動をとる国はまだまだ出てくるのでしょうな。
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ちょっと硬い本だが、要は超限戦。
わりに子供っぽいことをやってるという気はするが、なんつか、豊臣滅ぼす前の徳川みたいな愚策のゴリ押しが効くみたいな感じもある。
地政学的な切り口なんか、ワガママの極みみたいな印象なんだが、それが事実なんだろうねえ。
日本は生き延びれんな。
つか、生き延びる意思を感じないところが、極めてやばい。
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ロシアの外交政策とそのひとつであるハイブリッド戦争について知りたい人におすすめ。
【概要】
●ロシアのハイブリッド戦争とは
ハイブリッド戦争の現状、脅威
●ロシアのサイバー攻撃と情報戦・宣伝戦
●ロシア外交のバックボーン
●重点領域-北極圏・中南米・中東・アジア
●ハイブリッド戦争の最前線・アフリカをめぐって
【感想】
●ロシアとウクライナの紛争が顕在化した2022年以前に書かれた本
●ロシアが実施するハイブリッド戦争の内容がよくわかる。
●中国と同じく、ロシアの地政学的計算による世界への進出について地域毎にまとめられていて理解しやすい。
●日本では国内の些末な問題ばかりメディアで取り上げられているが、世界的な各国の活動を見ていると、日本は現状で大丈夫なのかと心配になってくる。
マスコミによる情報配布に偏りがあるのか、それとも報道されるように足の引っ張り合いのような議論しか国会ではなされていないのか。
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ウクライナで顕在化した、現代の戦争。いわゆる「戦争」が始まる前に始まっている。こういう本が多くの人に読まれ、日本人の中にも防衛、情報セキュリティに関するリテラシーが高まればいい。自分も含め。
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2023年4冊目。満足度★★★☆☆
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、テレビにもよく出演する慶應義塾大学の教授が著者
今から2年前、上記戦争の約1年前に出版されたもの
ロシアが得意とするいわゆる「ハイブリッド」戦争を中心とする現代のロシアの国家戦略について、豊富な事例をベースに説明
かなり多くの国・人名などが登場するため、読みこなすのは労力を要するが、特にアフリカの国々とロシアの間では、お互いにウイン・ウインの関係にあることなど、一定の知見を深めることが出来た