紙の本
心に沁みる被災者の方々の語り
2021/03/13 17:17
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投稿者:Takeshita - この投稿者のレビュー一覧を見る
よい本を読んだ。著者が直接被災者の方々から聞いた話をモノローグの形でまとめたものだが、どの話も皆さんそれぞれこんなご苦労があったのか、今はこんなに頑張っているのかと心を撃たれる。語り手の中には福島以外の地域の人もいるがみな過酷な体験をしていて、読んでいて涙する箇所が幾つかあった。いとうせいこうさんは話し手が今そこにいるかのようにリアルに文章化している。震災10年、忘れてはならない語り継がれるべき体験集。
紙の本
表紙ばかり見てページをめくる勇気が出なかった
2022/05/09 10:30
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投稿者:amisha - この投稿者のレビュー一覧を見る
少し時間を置いて、また読み始め、最終章まで読んだ。
二本松で農業に従事する人の話のページで、ある若者を思い出した。二本松に嫁いだ従姉の息子である。彼は10歳で東日本大震災を経験し、兵庫県へ家族で自主避難。三重県の全寮制農業高校を経て、現在は二本松で農業法人に勤める。私は従姉の家族が、3.11に関わる取材を受けたり、それらが記事になったりするのは見聞きしていたが、直接何かを訊いたことがない。訊ねたくても訊ねられいというのが本当のところだ。自身の心のどこかで3.11や福島の原発事故のことをタブー視しているからだと思う。
記録する人、傾聴する人というのは非常に類い稀な才能なのだと思う。記録されることの大切さ、時を経て自身の体験を誰かに語る大切さを知った。
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「福島」とか「避難民」とか「犠牲者」とか、記号てひとくくりにすることの恐ろしさ。
人は皆、生きている。
一人一人の人生を。
記号でラベリングして、分かった気になるのは
やめよう。
知らないことを知らないと認めることから始めなければ、「知ろう」とする気持ちが生まれない。
「知ろう」とすることは、ただ、あなたの話をそっくりそのまま聴くことだ。自分の中に器をつくって、そこにそっくりそのまま受け入れることだ。
知った気になるな。
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もっと多くの声を聞いておかなければと思った。何年もかけて開墾し土壌を改良して作った麦畑が汚染土のフレコンバッグ置き場になってしまった話、牛の鼻が考えられない程伸びて死んでいた話など一人一人の人が抱えなければならなくなった痛みにせめてずっと耳を傾けていかなくては。
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震災を忘れるなとか何かを取り戻そうとかは外の人の発想
毎日毎日が続いていくだけ
そういう声が聞こえる
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遅ればせながらつい最近著者の「想像ラジオ」を読み、すごい作品だと思った。この著者の福島の人へのインタビュー集なら信頼できると思った。
WITH COW
餓死や殺処分をされた牛のことを考え、悲しんだことはあったが、具体的にどのような死に方をしたのかまで考えていなかった。杭に繋がれたままの牛の餓死、布を頭に被せられたまま成長する仔牛…辛くなる。
農家の方の心中を思うと、本当にやりきれない。
「もーもーガーデン」の存在を知った。ひどい状況の中で、できることを着実に実践される姿に敬意を感じる。
THE MOTHERS
母子だけの避難生活のことも知ってはいたが、やはり具体的なことまでは想像もしてなかった。気も頭もすごく使われていた、今も使われているのだということがよく分かった。子育て自体が大変なのに放射能のことも考えなければいけないとはなんと負担が大きいことだろう。子供の健康というのは親にとって一番大事なことだから。
RADIO ACTIVITY
富岡町の社協の吉田恵子さん。もともとすごい人だったのかもしれないが、震災があり、原発の被害があり、不幸が重なったことにより、隠れていた才能や力が発揮された気がする。それも自分のためというより、富岡町民のために。吉田さんがすごいのだけれど、人ってすごいな、他人のために頑張る人には、いろいろ偶然が重なり、うまく話が転がっていくなと考えさせられる。そんな貴重なラジオ放送だったが富岡町に戻ってからは続けられなくなった…それでも吉田さんは新しいアイデアで今日もみんなのために働いておられるのだろう。
"明日が見えないというところで生活する人たちばっかり聴いていたんです。だから何か楽しさを持っていないとやっていけない"
a flower
津波で父親を亡くした須藤文音さん。須藤さんやそのご家族と同じように家族を亡くした方が2万組。2万人亡くなった方がいるということは、そのご家族や親しかった人がその2万人の何倍もいらっしゃるということだ。
ご本人もおっしゃってるように、書く方法を持たなかった人、発表する場がなかった人にとって、書く方法、発表する場を持つ人が代表して表現することは意味が大きいと思う。
A LIFE OF LADY
こう言っては大変失礼だが、福島の小さな村にもすごく実力のある女性が、戦前生まれでもいらっしゃるということがわかった。実家に恵まれた方ではあるが。そう考えると、現在でも実力を発揮できてない女性は日本全国たくさんいる。ほぼ全ての女性が本来の実力を社会で発揮できてないのではないかとしみじみ思う。
a farmer
わざわざ浪江町に引っ越して農業を。えらい人って年齢関係ないなぁ。
The LAST PLASE
96歳の高原タケ子さんのたくましさ。ヘルパーさんも頼まず、一人で2000歩歩いて買い物にも。86歳で震災に遭ってそこから6回も引っ越しを余儀なくされて。しっかりされているだけに逆に大変だったと思う。もう年だとか寂しいとか私が言うのは何十年も早いと反省する。
a dancer
すごくバイタリティーのある日本舞踊のお師匠さん。
人のために動ける人はやっぱり強いなぁと思う。
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「想像ラジオ」を世に送り出した
いとうせいこう さん
2011.3.11から十年
また より凄い 心に届く
一冊を出してくださいました
特別な人ではなく
「フクシマ」にまつわる
「お人」から
流れ出てくる言葉の数々
身に沁みて
心に沁みて
伝わってきます
コロナ禍の中
オリムピック開催是非の喧騒の中
しみじみと語られる言葉の数々が
静かに
伝わってきます
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原発事故の不合理な影響を受けて、様々なその後を生きている方々の声。
一人一人が深く様々な考えを持って生きていることを、まざまざと感じる。本当にまざまざと。
特に最初の話が心に残った。
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5月26日新着図書:【著者が、2011年の東日本大震災の被害を受けた福島県の人たちから聞いた話だけが活字になっている本です。『想像ラジオ』と一緒に本書を読んで見ましょう。】
タイトル:福島モノローグ
請求記号:539:It
URL:https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/BB28182703
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「想像ラジオ」で東日本大震災で亡くなった人たちを想像して語り部となったいとうせいこう氏が、今度は震災で被災した人たち、被災した人たちの支えとなろうとした人たち、そういう人たち、特に女性にインタビューをして聞き書きをしたノンフィクション。
傾聴がいかに自分の硬直をほぐしてくれるかを知っていたから、聞くことに徹した結果、それは語ってくれた人たちのモノローグという形になったという。
ここで語られる様々な人たちの震災後を読んで、「力強い」、「力をもらった」というのは安易な感想だろう。
一人一人が震災と震災後の世界に向き合って、逃避することもなく、かと言って過度に逆らうのでもなく、ある意味淡々と、着実に一日一日を過ごしているという事がわかると、一体その一日は我々の一日と違わないのではないかと錯覚する。つまり、震災で大きな影響を残さなかった福島以外の我々と同じところまできたのだろうかと。
しかし、それは違うと思う。
作品の中で父親を亡くした女性が語る中で、震災後数日経って駅の近くなどを歩いていると、みんな普通の感じだったりして、本当は地震なんて夢だったんじゃないだろうか、父が亡くなったというのも夢だったんじゃないだろうかと錯覚するという話があった。
それはつまりとてつもない喪失感、地震で大切な人を失ったという感情さえも見失ってしまう程の大きな喪失を抱えているということなんじゃないかと。
震災から立ち直ったというかもしれないが、震災という記憶自体を消したいが故に喪失している結果があの淡々とした語り口ではないかと。
いとうせいこう氏はまだまだ聞き書きを続けていくという。いとうせいこう氏によってさらに残されるモノローグに期待したい。
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『想像ラジオ』で「語りすぎた」作者が、聞き手として福島の人の話を聴いて。
いとうせいこうさんが東日本大震災後の福島を訪れ、その地で生きる人々に話を聴き、まとめた本。
いとうさんは話の聞き手であるが、本の中では一切存在を消している。例えば、どのような質問をしたのか、相槌をしたのかなど、あとがきを除けばいとうさんの言葉は一切載っていない。
そのためだろうか、話し手の話はいとうさんに語られているはずなのに、読者にダイレクトに語りかけくるようである。話を読んでいるのに「聴いている」とは変な話だけれど、話し手が紡いでいく話は、インタビューとして読むよりも身に迫るように私に近づいてきた。
また、本書の特徴として、話し手の情報は事前に載せられていない。例えば、年齢や性別、職業など。語られていく話の中の情報から「ああ、この人は農家なんだ」とか「女性なんだ」と知っていくことになる。
そうするとなぜなのか、薄ぼんやりとした影のような姿をしていた語り手が、話を「聴いていく」につれて徐々に輪郭ができ、人間の形になっていくように感じた。そして見えるはずもない表情や佇まい、顔に刻まれた皺までも想像していた。これは不思議な体験だった。
あとがきに書いているが、いとうさんは精神科医で彼の主治医の星野概念さんに診療をしてもらっている中で、「傾聴」とは何かを体験的に学び、それが福島の人の話を聴くことにもつながったとある。(2人のやり取りは『ラブという薬』『自由というサプリ』という本にまとめられている)
私自身、2018年11月に青山ブックセンター本店で行われた『ラブという薬』のトークイベントに観客として参加していた。
その場でいとうさんが「今、福島に行って、寄り合いに参加して福島の人の話を聴いている。東日本大震災で福島にいた人。震災後も福島に住んでいる人。震災後、県外に避難したけれど、再び福島に戻ってきた人の話を。」ということをおっしゃていた。
その時にお話されていた活動が、こうして一冊の本としてまとまっていることに感動している。
『想像ラジオ』を書き、「語りすぎていた」といとうさんはおっしゃっている。そして、今はその分聞き手をしているのだと。
傾聴を重ねる外の存在であるいとうさんだから聞こえる話があると思う。そんな話をまとめた本をまた読みたい。
以下、備忘録として話し手の情報の記載。※未読の人は、前情報がない状態で読むことをオススメします。
WITH COWS
女性。福島の大熊で、牛の牧場を営む農家。福島の地で牛を育てる可能性を調査をしながら探す方。
THE MOTHERS
3人のお母さん。それぞれ子どもがいる。福島で震災を体験し、県外に避難し、再び福島に戻ってきた。
RADIO ACTIVITY
女性。富岡市民の避難先、郡山市の「ビックパレット」で富岡市民向けのコミュニティFMを開設し、ラジオパーソナリティも務めた方。
a flower
女性。宮城の気仙沼出身の介護福祉士。震災で父親を亡くした。そのときの話を『白い花弁』として「みちのく会談コンテスト」に投稿。最優秀賞を受賞。
A LIFE OF A LADY
老いた女性。福島の川内村出身。川内村で自動車会社の社長になり、その後『蕎麦の里づくり』に関わったり、村会議員になったりしている人。若いときから今に至るまでバリバリのビジネスウーマン。
a farmer
女性。福島の浪江町で有機農業を営む農家。
THE LAST PLACE
老いた女性。福島の浪江町出身。仮設を転々と移り住む。
a dancer
60代半ばの女性。日本舞踊を子どもたちに教える。震災後に日本舞踊のイベントを開催するために文化庁を巻き込もうと奔走したり、被災地支援の「おかやまバトン」を利用したり、それを真似た「ふくしまバトン」を子どもたちと行ったりした。
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いとうせいこう氏が聞き書きした被災者の証言の数々。様々な立場や年齢層の人たち(すべて女性)の地元への思いが詰まった一冊で、それぞれ人柄が滲み出るような淡々とした語りが印象的。被災牛による農地再生など、恥ずかしながら今になって初めて知る活動や事実も。災害復興住宅を終の棲家にしようとしているおばあちゃんの短歌が心に染みた。
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いとうせいこうさんが福島で聞き取ったお話を本にしたもの。
一人称はそれを語った人で、いとうさんは「おわりに」でしか出てこない。それ故、その方から直接語りかけられている気持ちになる。
喜びがあり、悲しみがあり、今の日常生活そのものなのだが、明らかに2011年3月11日の震災と原発の爆発により、不連続な線となったことは明らかだ。
本当の意味で、心が寄り添えることが出来る人になりたいと感じさせられた。
WITH COW
農場を営む人の、手塩にかけて我が子のように育て上げている牛に対する眼差しと、汚染され取り残されたそれらの牛の末路に嘆く姿を表す。
犠牲者は人間だけではないことを学ぶ。
THE MOTHERS
働き手となるお父さんと離れ、母と子の避難生活を余儀なくされる。経済面だけでなく、健康面なども考えなくてはならない。
RADIO ACTIVITY
富岡町社協の吉田恵子さんによるラジオDJ活動の話。
悲しみに包まれる雰囲気には、こういう人が必要だ。
人は気持ちの持ちようで、変わることが出来る。
言葉の力を感じさせてくれた。
a flower
須藤文音さんは、津波で父親を亡くした経験を通じて文筆家としての一歩を踏み出そうとしている。
銭湯から出て、下足箱から出した自分の靴の中には、何故か白い花が。やがてお父さんが見つかり、自宅で対面したその装束の胸元には、同じ花が添えられていた。
震災では不思議な体験をされている方が、大勢いらっしゃると聞く。道理では説明出来ない何かがあることを感じさられる。
A LIFE OF LADY
福島川内村、昭和17年生まれのおばあさんの話。
その頃にして所謂モダンで先見の明があったことに驚く。
原発事故による汚染でも、被害者意識だけで片付けないところが凄い。
a farmer
浪江町に引っ越して農業を始めた女子体育大学出身の女性の話。
震災が彼女を駆り立てたのか、もともと持っていたのか、意識を高く持つ人は素晴らしい。
The LAST PLASE
96歳の高原タケ子さんが生活を語る。
震災にあって、きっと大変だったと思うが、今までの苦労を重ねた人生に取っては、ただの1ページのごとく淡々と話をされていく。新聞にも短歌を多く投稿し、掲載されているという才女でもある。
こんなおばあさん素敵だな。
a dancer
鬱を克服し、時には文化庁にも押し掛け活動の援助を申し出るほど前進し続けておられる日本舞踊の女性先生のお話。
活動の中には、子どもたちを連れて県外遠征もされることもある。
福島というだけで、避けられていた子どもたちを招いてくれた岡山では、子どもたちが多いに満喫することが出来、帰りの新幹線では皆大泣き。
きっとこの子たちは、真っ直ぐに育つのだろうなと感じた。