『青い春を数えて』
2021/09/13 19:11
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
トラウマがあって本番に立てない放送部の知咲
Nコン有望な部長の有紗から託されたのは
──「白線と一歩」
料理が得意でSNSの投稿写真も人気の真綾
これといって取り柄のない姉に引け目を感じてしまう
──「側転と三夏」
自分に自身が持てず、疎外感、劣等感、孤独感に悩み揺れ動く高校生を描いた連作短編集
《爽やかだけが、“青春”じゃない。
青春小説の新スタンダード!》──はさみこみリーフのコピー
『響け! ユーフォニアム』をベースに本書のテイストをブレンドすると『愛されなくても別に』(吉川英治文学新人賞)ができあがる
2018年刊の単行本を文庫化、2021年7月刊
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「赤点と二万」の辻脇さんの「推薦システムずるい」発言は、さすがに堪えました。…というのも、高校は推薦で入ったからです。あの頃は、確実に楽をしようとしていた。大学でも楽をしようしたところ、見事に失敗。とりあえず前に進みたくて、専門学校に進学。内定を蹴って就活をやり直し、大手保険会社に中途採用。けれど大学を諦めきれずに退職して通信制大学。散々迷って、何度も失敗して…… 高校生ならではの感性だからこそ、今の私に伝わるものがありました。
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輝かしい高校生活をどのように思うかは、当事者でないとわからないですよね。ここに出てくる子たちは、みんな感性がみずみずしくて羨ましい。自分はどちらかというと、流れに流され、色々と諦め達観し、みたいな感じ(今考えてもイヤな奴だったな)だったので、純粋にいいなと思いました。とても面白かったです。
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青春って、決して明るく爽やかなものばかりではない。甘酸っぱい、ほろ苦い、そんな柔らかい言葉では表現できないような感情だっていっぱい経験する。今振り返れば「そんなことか」と思えるようなことでさえ、青春時代の自分は本気で悩んで葛藤してしまう。そんなことを、読了後に思い出した。
作者さんは今、青春を生きている最中なのかと思うほど、思春期に感じるリアルな感情を言語化している。どの登場人物も私に似ていないのに、どの登場人物の感情も納得してしまう。そうだよねって共感してしまう。
そしてそんな彼女たちを、今、羨ましくも思う。
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2021/08/03
ユーフォニアムの作者の作品ということで読んでみた。
高校生の青春を題材にした内容が5篇に渡って描かれていて、それぞれの話の主人公が前の話の登場人物と何かしらの形で繋がってる形で主人公が移り変わっていく。
ただ青春って感じではなく、高校生なりに色々考えたり、苦悩したりする様子が丁寧に描かれている。
世の中に対して疑問や謎の怒り、反発心を持ち始める思春期特有のどうにも表現しづらい難しい感情や行動を丁寧に表現していてとても読みやすかったです。
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モラトリアム真っ最中なJK5人の話。自分らしさとか、人生についてとか、思春期に悩むようなこと。
自分は大学生で、このようなモラトリアム期間は終わりかけかな?大人になりつつあるかな?と考えていたが、この本を読んで、JK5人に共感の嵐。あぁ、自分もまだまだ青臭いガキンチョなんだなと感じた。
でも、そのことに気づけて良かった。
自分らしさとは、人生とは、多様な考え方、青臭い悩みをこれからゆっくりと消化していければいいなと思えた本でした。
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響けユーフォ(アニメだけ見ました。)の時も思ったんですけど、この方は青春に潜む影の書き方が秀逸だなと思いました。
でも、どれも明るい兆しが見える終わり方なので好きです。
あとは個人的に言葉選びと、アップルパイ、ガトーショコラの表現する文が好きすぎてツボでした。
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連作短編かつ青春ものが読んでみたかったので購入。よかったです。
文章がお上手。比喩表現がきれいで、女子高生たちの繊細な心情を上手に描写できていたと思います。
そんななか星5にしたのは、ストーリーがありきたりで新鮮さがなかったから。まあその普通こそが本作の良さなのかもしれないけど、短編じゃなかったら飽きてたな、とおもった。
でも冬の海に二人で行って「寒い寒い」といいながらスマホをぶん投げるシーンは笑った。ティーンエイジャーおそるべし。
あとどうでもいいけど、作品で好きな映画の話になったとき、登場人物の一人が「アタックオブザキラートマト」と言ったのは面白かった。作者、何歳なんだろう。
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あまり面白くなかった。響け、で書きたいことは書ききってしまったのか。デビューが早すぎて、体験の引き出しがまだないからなのか。小説ではないものに挑戦してみると良いのではないかと思う。豊島ミホのように、作家を辞めてしまうのでないとよいけど。
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苦しくて、でもそれが現実で大人になればいい思いでにだって言う人は多いだろうけど、今日明日を生きることは私や彼女達にとってはとても大変な事で。こなければいいと思った。連絡も知らせもないなら時間ごと止まればいいと思った。だから、彼女が「死ぬ?」と言った姿が凄く綺麗に脳内に描かれて、凄く儚いんだけど、そこには彼女が生きていて、高校生のヒリヒリした感じが凄く伝わってきた。
誰かにとっては「たったそれだけ」の事だったかもしれないけど、その人にとっては「たった」とは思えない事だったんだと思う。
心中を考える姿も、綺麗な描写も、全てが青春で、綺麗で素敵で、キラキラしてて、とてつもなく痛いものだった。受け止めれる内容じゃなかった。それでも彼女達は生きていて行くんだろうなぁ。大人になりたいと思いながら。
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いい本だ。
一瞬安っぽそうな表現が多いと思ったが、感情を正確に捉えられているし、その感情に至るまでの出来事も自然に進められている。とてもしっかりした小説だった。
様々な感情が湧き上がってくる青春というジャンルを扱っていながら、物語ごとに1つのテーマが明確に定められているので読みやすかった。
大人の視点から冷静に読むとしょうもないただの高校生活の出来事が描かれているのに、感情移入が出来てしまった。
例えば、
「ブルーライトはもはや我々の親友であり、戦友だ。」
みたいな表現は、大人の視点ではしょうもないけれど、これに納得できるように描かれている。
作者の年齢は若いけれど、物語づくりの基礎は出来上がっているので、若者言葉の安直な表現でも感情移入できて、心を動かされた。
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「姉みたいに、困ったときに助けてと言える人間になりたかった。努力していると思われたら恥ずかしいから、何でもできるような顔をして。自尊心の鎧で自分を覆っているうちに、気付けば頑張っている状態が当たり前だと思われるようになっていた。背伸びした分の私の努力は、私だけしか見ていない。幼い頃の側転と同じだ。成功することが当たり前だと思われているから、誰の記憶にも残っていない。」 ー側転と三夏ー
何でも要領よくこなせてしまうというのは羨ましい。いいなあって思う。...でも、本当にそうだろうか?人は誰しも無意識のうちに人に期待する。その期待に答え続けていくうちに、やがて当たり前のことになる。もしかしたら、努力して努力してやっと出来上がった作品かもしれないものを、「あなたのことだもん、できて当たり前よね」という態度を出されたら息が詰まる。このことから、「人に期待する」ということは残酷だなと。誰しもが「こうあるべき」と自分の中にある狭い価値観で相手を固定して、そこから道が逸れた途端に「裏切られた」と声を上げる。相手の見えない部分が見えただけなのに、それの何がいけないんだろう。勝手に期待して、勝手に失望したのはそちらじゃないか。「期待する」という言葉は呪いのようだと多々感じる。
そもそも、面接に向いた眼鏡とは何なのか。面接に向いた服装、面接に向いた髪型、面接に向いた言動。そんなものを求めた先に、一体何があるのだろう。生地からクッキーを作るみたいに人間を型で抜いて、はみ出た部分を切り捨てる。余った端切れをまとめて作り直すこともせず、商品にならない個性はごみ箱へと消えていく。 ー作戦と四角ー
自身の個性が矯正されてゆくような感覚を持ったことがある。少しでも道を踏み外すと、「変わっている人だ」「ちょっとおかしいよね」ってそんな言葉を投げかけられる。段々それが重荷になって、積もりに積もって背負いきれなくて「当たり前」に個性が潰されてゆくのだと思う。「漠然と五体」の主人公のように、世間一般の当たり前と調和できるのであれば、そのような生き方で全く問題は無いのだろうと思う。調和できても出来なくても、合わないなと感じるものからはそっと距離をとって、自分らしくいれる心地よい生き方が出来ればいいなぁとのんびり考える。
今回の作品は全体的に自身が感じたり考えたりしたことのある内容で共感できる部分が多かったなと感じた。「赤点と二万」の大学受験で使わない教科を一生懸命勉強して学校内テストで良い点をとる必要性はあるのかという疑問。「作戦と四角」の生き方について模索中の人間に対して悪気なく吐かれた「可哀想」という言葉。それをどういう意味で使ったのかと、言うタイミングによってはうんざりさせられることもある。同情というものに対して嫌悪を覚えることがある。恐ろしい武器だと感じる。
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ライバルに負けると嫌になる、後輩に頼られると嬉しくなる、など表面的な感情のことばかり書かれていて、また文章としては比喩表現が多用されすぎ、技巧自慢のようで好みではありませんでした。序盤で挫折。
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青春の切実な痛さとその先にあるきらめきを感じた短編集です。描かれる人物はみんな女子高生なのだけど、彼女たちの抱える悩みや葛藤というものはどこか身に覚えのあるもので、性別の違う自分も学生時代を思い出し、少し胸が痛くなるような気持ちになりました。
収録作品は短編5編と掌編2編。描かれるテーマは部活での友人関係や後輩との関係性、受験をめぐるもやもやとした感情、あるいは姉妹関係であったりクラスや社会に対する違和感であったりします。
テーマ自体はそこまで目新しいという感じでもないけれど、語り口や登場人物たちの心理描写がみずみずしくとにかく共感しました。
失敗に対する恐怖。自分だけを頼ってほしいという感情。なんでも器用にこなしてしまうがゆえの不満。部活できらめいている友人に対する負い目。クラスメートに対する違和。自分に対する嫌悪。
彼女たちの痛さは自分の中のイタさを思い起こさせる。学生時代はもちろんたぶん今でもそのイタさというのは心に残っている。だから共感してしまう。
ただこの作品は痛さを描くだけではありません。各短編の彼女たちの痛さはきちんと昇華され、次の一歩へきっとつながるのだろうと感じさせてくれます。痛さとイタさの先にある成長を描いているからこそ、自分はこの短編集が好きだと思いました。
学生時代の日常の切り取り方と心理描写の鋭さが本当に素晴らしい作品でした。
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微かに繋がる少女たちの短編集。少女妄想中から百合成分を薄くして青春を追加した感じ。もう少し深掘りたい気持ちもあり、青春の一部としては一番(エモいところ)を切り取っているとも思う。
どれも良かったが、特に好みだったのは「作戦と四角」と「漠然と五体」。清水という女、めちゃくちゃ良かった。