今よみがえる丸山眞男
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今よみがえる丸山眞男 「開かれた社会」への政治思想入門
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画竜点睛を欠いた一書
2022/05/05 16:04
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投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
全三回(+α)のYouTubeと併せて一読。丸山眞男の思考とその達成について、大変勉強になりました。良著でした。ただ、一点だけ残念だったのは、丸山の云う「古層=執拗低音」の正体が、ムスヒのコスモロジーなり、マナイズム、アニマティズムである(88頁など)であるという結論はまずよいとして、それが日本の社会なり思想への「日本的なるもの」(72頁など)の浸潤あるいはそれへの変容を如何にして引き起こすのか、そのメカニズムというか作用機序が明示されていないのは、明らかに手落ちというか脱漏でしょう。(「liberty」や「権理」といった語の翻訳による意味遷移について触れていますが、これらはさしあたり「ヒ」の話とは関係していない(連関は示されていない)ようなので・・・
「私事が実はそこに紛れ込んでいるのだけども、本当は単なる私事なのだけれど、国家の名において行動する限り、それは悪たりえないという論理が生れることとなる。」(22頁)
「自分たちが悪をなしうるという自覚がないと、そこには”責任”という観念は生まれません。」(23~4頁、無責任の体系!)
「ステレオタイプ化してある思想家はこういう人だとやっつけてしまうようなやり方は、ものすごく不毛なものなのです。思想の展開には、いろいろな可能性がはらまれているのであり、その可能性まで含めて読んでいくことが大事なのだと思います。」(105頁)
「状況認識の欠落によって生じた損害を免罪にしようとする陰謀論的思考は政治的思考の成熟度が低いところで繁栄する」(168頁、同旨164頁)
「われわれの国の『近代化』は、『封建的忠誠』とその基盤を解体させることによって、同時にそこに含まれたかぎりの『反逆』のダイナミズムをも減衰させていった」(175頁、両者は形影相和すもの)
なお、最後の引用文については、読んだ際に樋口陽一氏の「正統の頑迷さが無ければ、異端のかがやきもない」という言葉を加えて思い起こした評者です。