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太平洋の試練 レイテから終戦まで 上
史上最大の海の戦いは悲劇のクライマックスへ。前人未踏の太平洋戦史トリロジー、遂に完結――。第一部、第二部に続き、5年の執筆期間を費やして描き切られた、太平洋戦争最後の1年...
太平洋の試練 レイテから終戦まで 上
太平洋の試練 レイテから終戦まで 上
商品説明
史上最大の海の戦いは悲劇のクライマックスへ。
前人未踏の太平洋戦史トリロジー、遂に完結――。
第一部、第二部に続き、5年の執筆期間を費やして描き切られた、太平洋戦争最後の1年間。あまりに巨大かつ濃密なドラマが、かつてなかった戦史の掉尾を飾る。
太平洋戦争はその最終盤においては、初期よりもはるかに大規模に、そしてはるかに政治的になっていた。真珠湾、ミッドウェイ、ガダルカナルといったそれぞれの海戦戦記だけでは決してわからない、終戦に向かう巨大なうねりを可視化するには、本書が描き出す無数の人々の群像劇が必要不可欠だった。
それを象徴するエピソードが、本書上巻冒頭で描かれる、1944年7月のホノルル戦略会議である。この会議は、これまでの歴史書や伝記ではなおざりにされてきた。
しかし著者は新資料に基づいてこの会議の内実を余すところなく描写する。フィリピン解放を主張する陸軍・マッカーサー、台湾攻撃を支持する海軍・キング。そして前例のない4期目をめざす大統領選出馬を表明したばかりのローズヴェルト。
海軍と陸軍の縄張り争い、国内政治の綱引き、アジアの新勢力図をにらんだ国際政治――日本をどうやって降伏させるかは、単なる軍事的な問題を超えて、微妙な思惑が交錯する政治イシューになっていた。
ともあれ、多くの人々の運命を飲み込む決断は下された。そして動き出した奔流のなかで、ニミッツ提督はミンダナオ島を迂回してレイテを攻撃するという劇的な大転換を決意。それに対し、超戦艦武蔵と大和を擁する栗田提督は、レイテ侵攻に全力で対抗する動きを見せる。
太平洋戦争最後の艦隊決戦の幕が上がろうとしていた――。
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紙の本
”太平洋の試練”シリーズで描く、太平洋戦争の終盤
2024/02/14 18:22
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
太平洋戦争の経緯をアメリカ側の視点から描く「太平洋の試練」シリーズ全3部作の最終部の上巻です。本書が描くのはレイテ島を巡る戦いがメインです。シリーズ共通の特徴ですが、戦場でのミクロな描写だけではなく、アメリカ側から見た戦略がいかに定められていったのかというマクロな視点がふんだんに描かれているのが特徴です。
本書が描くレイテ島を巡る数々の会戦では、すでに日本軍は負け続けています。日本側から見ると、アメリカ軍は圧倒的な物量と、新兵器を駆使して鉄壁のような隙の無い戦いを継続していたような印象を受けます。しかし、アメリカ軍内部でも多くの主張がぶつかり合い、時には大きな判断ミスも発生している事が描かれています。
反抗の主眼をフィリピンにするのか台湾にするのかで紛糾したときは、当時の大統領ルーズベルト、ミニッツ、マッカーサーといった陸海軍の首脳部による会議があり、歴史にIFは禁物とは言え、もしもこのときアメリカが台湾を主眼に置いて戦いを進めていたら、現在の台湾、中国を巡る状況はどうなっていただろうと考えさせられます。
アメリカ海軍の指揮官として有名なハルゼーは(日本側から見れば)勝ち続けていたような印象を受けますが、実は結構大きな戦略ミスも犯しており、指揮下の艦隊を台風の直撃にさらし、戦わずして大きな被害を出していたりもしています。当時のアメリカ軍首脳は、退役した後で政界に進出する例も多く(ヨーロッパで指揮を執ったアイゼンハワーは後に大統領に就任しています)、そのあたりの事も視野に入れて行動している様子なども描かれており、合理的に見えるアメリカ軍も、実は個人の野心や人間関係がそれなりのウェイトを占めていたことが印象的でした。
戦場描写は戦いの経緯が非常に詳細に描かれています(特にレイテ沖海戦は日米の複数の艦隊が複雑に交錯し、日本艦隊司令官栗田の”謎の反転”やアメリカ艦隊司令官のハルゼーの”囮に釣られた北上”などの背景が詳細に)。個々の決断は全ての状況を知った現代から振り返れば、「あの決断は誤りだった」と後付けで評価できますが、戦場にあって限定的な情報をもとに決断を下さざるを得ない司令官が、いかにそのような判断に至ったのかが詳しく述べられています。
かなり詳細に地名を挙げて会戦の経緯を描いているので、それ相応に詳細な地図が含まれていれば、より理解が深まったような気がします。ハードカバーで600ページもある大著で、読破するにはちょっと根気が必要かもしれません。