紙の本
どこか懐かしい気分になれる物語
2017/06/02 07:47
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:卯月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作「家守綺譚」に続く物語。
人とそうで無い物、自然との関わりがスッと心に入ってくる。
現代では失われつつある自然との交わりが、この物語ではごくあたりまえの事として描かれている。
百年と少し前の話であるはずだが、もしかしたら現代でも、それと知らずに出会っているのかもしれないと思わせる登場人物(性格には「人」では無いが)も居て、不思議の世界に引き込まれてしまう。
ゆったりと時間を過ごしたい時に読みたい一冊。
紙の本
絶景散歩
2017/06/14 14:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yuri - この投稿者のレビュー一覧を見る
疏水の側の家を離れて、征四郎なゴローをさがす旅に出かけます。現在ならあっというまに過ぎてしまう八風街道を滝を求めてお散歩した気分になります。ああ、これはきっと永源寺ダムのことなのだ、と。
紙の本
「幽玄」という言葉が実にぴったりと当て嵌まる作品。
2020/01/28 23:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「幽玄」という言葉が実にぴったりと当て嵌まる作品。自然(人-動物-植物)-霊とが一体化したというか、この世の存在自体がエネルギー流体の流れであり、その時々の一時的形態に過ぎないという手塚治虫の漫画「火の鳥」に通じる思想・哲学を感じさせる。一応、愛犬・ゴローを捜しに行くという筋書は有るにはあるが、実のところは紀行文と言った方が良い。そのキーワードは39もの植物名(文末に記載)を列記した小見出し。著者の植物への愛情が伝わってくる。なお、本作品の題名でもある「冬虫夏草(P-29、=サナギタケ)」は、生物がその時々で生きる形状を変えていくものだという思想・哲学の象徴として描かれている。また、地名などはいずれも実在であり、「梨木香歩図書館」というウェブに地図まで掲載されている。また同じウェブには、本書の小見出しとなっている39種+1の40種もの植物の写真も掲載されている。
この作家、初めは粘着質な哲学的・抽象的な作風のため馴染めないと感じたのだが、何故か「幽玄」な思想性に魅かれて読み進めるうちにすっかり嵌ってしまった感じ。気付いたら本作品で6冊目だった。不思議な魅力の作家です。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:狂人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
家守の続編に当たる話です。やっぱり、幻想的な不思議な空気感がいいですね。でも個人的には家守のほうが好きかなあ。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ムギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
家守綺譚ロスがあったので続きがあると知ってすぐに購入しました。あの世界にもう一度浸れる喜び。いろいろな話が少しずつつながっているところもとても好きです。
投稿元:
レビューを見る
妖の世界と現実が溶け合っている
綿貫征四郎の周りは そこに身を置くようにして
堪能したい。
できればこちらの世界に戻ってきたくなどないのだ。
だから内山節さんのあとがきには強く共感した。
読み終えたくない。心地よい。
投稿元:
レビューを見る
大好きな『家守綺譚』のその後の物語。
相変わらず心地好い世界観!
独特の摩訶不思議な懐かしい民話の世界に浸れた。
愛犬ゴローが突然姿を消したことから始まる、ゴロー探しの旅の物語。
相変わらず飄々とした綿貫が一人、ゴローの足取りを辿り山中をさ迷う。
道中で出逢う人、河童、天狗、イワナ、幽霊…。
この男の向かう先には次々に不可思議な現象が起こる。
でも全てがとてつもなく優しく温かく涙が出てくる位愛しい。
今回は綿貫のお陰で美しくも懐かしい日本の原風景を体感できた。
表題になっている「冬虫夏草」。
人も生き物も皆、その時々で生き方が変わるのは仕方のないこと。
与えられた条件で自分の生を全うしたい!
今回も梨木さんの教えが心にゆっくり染み渡る。
またこの続きを期待したい!
投稿元:
レビューを見る
一作目の『家守綺譚』と同じく、言葉のタッチや情景描写がたいへんすばらしかった。一作目に描かれたのが"あちら側"の世界(死者の世界、神の世界、妖の世界、無限の世界、見えざる世界...すなわち彼岸)であったのに対し、今作は"こちら側の世界"(生者の世界、時間世界、煩悩の世界、有限の世界、可視世界...すなわち此岸)。今作は前作に比べて此岸の人々との交流が圧倒的に多いことに気づいた。前作で、綿貫が高堂のいる湖底の世界に足を踏み入れたことで、彼が"彼岸への憧憬"にひかれていることを案じ、人々と交流しこの世の食物を口にすることで"生への執着"を意識した作者の意図なのか。
行方知れずとなった愛犬ゴローを探す旅に出かけた綿貫は、ゴローを追ううちに少しずつ彼岸の世界に足を踏み入れていく。ここでまた面白いのが、そんな綿貫を此岸へ呼び戻すのもまたゴローなわけで。ゴローとまた会えるならと彼岸の住人になることも厭わない覚悟の綿貫を此岸へ連れ戻す、つまりこの物語においてゴローは綿貫にとって彼岸と此岸の架け橋...彼岸から此岸へ主人を召還する"河桁"であるといえる。
前作で梨木ワールドにどっぷりはまった私としては、少し物寂しい気がしないでもないかなと。あと、表紙のこの絵が、物語とどう関係していたのかが興味深いです。中国故事や水墨画の題材のような絵で。
2019/05/20
表紙の絵ですが、狩野芳崖の『牧童』かな、と思いました。
投稿元:
レビューを見る
本は文庫で揃えると決めている。梨木香歩さんは、エッセイ以外なら全て手元に置いておきたいと思う、数少ない作家の一人です。
家守が大好きだったので、冬虫も出た時は、すぐ欲しかったですが、文庫になるまで、じっと待っていました。
待っていた甲斐があったというもの。
人生の節目に、読み返すたびに、違う発見がある物語こそ至高と思っていますが、梨木香歩さんはまさにそういう物語を紡ぐ人です。
人生どころか、ものが、人が、生きるとは。ということを、深く哲学的なまでに、考えさせられるのです。
家守は、主人公綿貫が、様々な『出会い』をごく自然のものと受け入れていく様が、痛快と言えました。少し前まで、こんな世界との関わり方が、本当にあったんだと、信じ込ませてくれる説得力のある物語でした。
今回は家守で特に、読者に愛されただろうゴローさんが、行方不明になるということで、愛犬家である私からすると、血の気が引くと行っても過言でない事件が起きます。
基本引きこもりに毛が生えた程度の綿貫も、ゴローさんの目撃情報を頼りに、鈴鹿くんだりまで、単身山登りに出かけます。
もちろん、山の中ですから、今まで以上に、それはもうたくさんの『出会い』があります。素朴な村人との交流も素敵でしたが、こちらの『出会い』は、なおのこと素晴らしいものがありました。
その中でゴローさんの足跡も、一つまた一つと増えていきますが、果たして二人は再会できるのでしょうか。
竜宮のシーンは…?と物足りない感じがしたのですが、家守の中にそれっぽいシーンはありましたね。なので、今回は書かなかったのかなと。
また、ゴローさんや高堂が、何のために走り回っていたのか、はっきりとは告げられていません。そこも少しは気になりました。
村が水に沈むのは、何十年後かのダム建設とかの話なのでしょうか。それとも、もっと近い時代のお話なのか。詳細は、次巻に持ち越されるのだと信じています。
投稿元:
レビューを見る
待ちに待った文庫化。単行本の造本がなんともよいのでそちらの方で買い揃えたいと思いつつ、まずは文庫で手元に。
投稿元:
レビューを見る
前作「家守奇譚」を読んだのは
もう何年前だろうか。
大体を忘れてしまっていたが、
今作を読み始めてすぐ
ああこういう暖かな作品だったと
前作の雰囲気を思い出した。
今作は姿を消してしまった愛犬の
行方を追いつつ、イワナが営む
宿を訪ねて鈴鹿の山を
征四郎が旅する話だった。
彼が出会う人々は自然と共に
素朴な生活を営んでいる。
自然の豊かさや厳しさ、
命の尊さや儚さを
優しい筆致で描いた名作。
ずっとこの世界に浸っていたくなる、
読み終えるのが勿体無いと
感じられた。
投稿元:
レビューを見る
「家守奇譚」を読んだのが、何年も前(ブクログを始めるより前)ですが、あの自然と共生している感じが好きでした。
遅ればせながら、続編の本作を読んだ次第。
今回は、犬のゴローを探しに鈴鹿の山々を探索する綿貫さん。
“遠野物語”を彷彿とさせるように、昔から営まれてきた自然と共存している世界が心地よいです。そしてそこには人外のものも含まれるわけで。何だか人間の方が“お邪魔”している感じがあります。
淡々とした文体ですが、読んでいて、生命の息吹を感じる一冊。
投稿元:
レビューを見る
大分忘れての読み返しなので、1巻と比べると、かなり彼岸に?いきかけていることに驚く。
そして「うみうそ」と同じ、失われてしまったものへの郷愁で、切なくなる。ダムなのでしょうか。こんな豊かで素敵な風俗がなくなってしまうなんて・・・、と知りもしないのに、思ってしまいます。
自分の中で、設定と地理がf植物園と混ざっている上、あの辺りにも詳しくないので、えーと琵琶湖のどっちだったけか、と混乱します。
ところで...山童の少年の名前…お母さんの呼んだ名前と、名乗りが違うのは、どういう意味なのでしょうか・・。何か名のある河童なの・・・?
最後には、そこまできて何かありそうで...もう不安でしょうがないのですが、大丈夫ですよね、ほんとに会えたんですよね。
投稿元:
レビューを見る
多分わたしはこのお話の半分もよく分かっていない。
でも『家森奇譚』もそうだけど、文章のリズムというか、お話の空気というか、それがとても好き。雨上がりの山の中の空気みたいなものを感じる。
ぼーっと、ゆっくり読むのがピッタリな一冊。
投稿元:
レビューを見る
家守綺譚の続編、といっても前作を未読でも十分楽しめる内容。人と自然と物の怪の境が殆どない世界が違和感なく描かれている不思議な話。少しだけ遠野物語のような匂いもする。