疾患と、病状解明の歴史
2024/03/10 19:47
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あんず - この投稿者のレビュー一覧を見る
時代は第二次世界大戦最中。夫婦は12人の年子を持つ。
しかし、このうちの6人は思春期を過ぎたあたりで、精神障害を発症してしまう。
薬物治療をされるが効果は微妙で、疾患を患った子供達は入退院を繰り返す。
そんな家族の様子を背景に、統合失調症の研究が展開される。
この書籍は、精神疾患を抱えた家族の話でもあるが、
それよりも「病状はなぜ発症(遺伝か環境か)するのか?」
また、「それに見合った薬剤を開発するには」といった、研究者側のドキュメンタリー色が強い。
事例が知れてよかった
2022/11/14 21:48
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:恵恵恵 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドパミン仮説というのが言われているが、遺伝の影響も示唆されていて原因はまだわかっていない病気と先生が言ってた時が思い浮かんだりした。
薬は沢山あるのに原因は不明てと思っていたが、こうやって研究するのかとなんか納得した。
ピリオドが細かくあるので少しづつ読み進めやすかった。
年齢じゃなくて年代で書いてあるので発症時期がどんな時期かあんまり想像できなかった。
綺麗な家に住んで姉妹だったら雫みたいな感じでもいいけど、子どもたちひとりひとりにプライベートルームがあるようにした方がいいなと思った。
自己判断で中止してはいけない重要性をあまり感じていなかったが、ピーターのところを読んでうわと思った。
“スタチンは、心疾患を発症する危険のある厖大な数の人のコレステロール値を下げる薬だ”
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ひとつの家族の中に、この世のあらゆる災難が詰め込まれていて地獄。ドラッグとか性的虐待とか無理心中とか。ノンフィクションというにはあまりにも出来過ぎていると思う、それくらい壮大な家族の物語。最後はめちゃくちゃきれいな終わり方で涙腺にきてしまった。読み物として面白い。自分も気になっていた「生まれか育ちか」という疑問についてなんとなく知れてよかった。
後半でマーガレットがリンジーから非難されていたけど、自分だったらマーガレットと同じことをすると思うので擁護したい。リンジーは自分から家族のことを引き受けたのだから文句を言うべきではないと思う。
お金持ちでない限り、子供をポンポン作るもんじゃないなという教訓を得た。
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ノンフィクションの中でも圧倒的だった。
なぜ、わたしがこの本を読みたいと思ったのか...統合失調症では無いが精神疾患に苦しみ友人を見てきたから。それが''一族''って...読み始めてからもしばらくこれはほんとにノンフィクションなのか?疑う部分も多かった。
まず普通にほぼ毎年のように子どもを孕んで産むという行為がわたしには考えられない。いくらベビーブームでも!!夫が辞めようと言わない限り、ってそんなの信じられない。
そして次第に兄弟のうち長男から次々と精神に異常を見せ始める。間に女の子が居なかったのも、精神に以上を来す一因だったんじゃないか、なんてわたしが語るべきじゃないけど少し感じた。
色々な、本当にただそこに産まれて生きていくことが大変な中でそれぞれが追い詰められ、逃げ場を欲して異常な精神状態になってしまったのを最終的には妹や科学の力でどうにか解決の糸口にでもなって欲しいと願わずにはいられなかった。
メアリー(リンジー)はこの本のみでしか知ることができないが、凄い人だ。
わたしなんて日々自分1人生きるのに必死になってるのに、その生死さえ危ぶんだ兄たちのかけがえのない支えに自らなっているのだから。
実際に自分以外の人生を経験することは絶対できないし、知ったかぶりなんて絶対にしてはいけないと思っている。だから、こうしてノンフィクションで体験することの無いような人生を追体験した時、何ものにも変えれない思いをする。
痛い、苦しい、しんどい辛い、もう嫌だ...楽しい、面白い、嬉しい...哀しいとか、どの感情も間違っていないような間違っているような、変な感覚に陥る。それでも大抵読んで、知ることができて良かったと思う。
今回のこのギャルヴィン一家の中を知ることが出来てやはり良かった。
精神疾患自体に更に興味を持つきっかけにもなった。色々知って行ければ、と思う。
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小説と思って読み始めましたが、ある家族の記録(ノンフィクション)でした。本の分厚さに慄きましたが、内容は重いもののの比較的読みやすかったです。(と言いつつ、途中小説で箸休めしましたが。)
改めて統合失調症の歴史の浅いことに驚いた。フロイトとユングもさほど昔の人ではない。心理学、精神医学の歴史の浅さには驚きである。
統合失調症の薬の遷移や治療の歴史わかりやすかった。
国家試験に向けて精神医学を勉強してる学生の気分転換の読書に良いのではと思いました。精神疾患別に専門用語を並べて説明されてもイマイチわからない学生が多いはずですが、こうやってお話仕立てになっているとわかりやすいですね。
生まれか育ちか…
12人兄弟の家庭でも、四つ子姉妹の家庭でも、まさに日々サバイバル。兄弟からの暴力、虐待から守ってくれるような親はいない…安心とは程遠い環境。壮絶だった。まさに生き抜いたという表現が適切だ。
家族というものは閉鎖的で、異常な状態でも渦中の本人たちにはわかりづらい。それでいて、家族の問題ほど苦しいものはないと私は思う。
統合失調症に罹患した子と罹患しなかった子、どちらが幸いだったんだろう…などと思ってしまった。
読んで良かった。
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母親も大変だが、メアリーは性的にも被害を受け、今も兄たちの病院を訪ねたりと面倒を見ており、大変な一家に生まれたものだなと。
話自体は面白いのだが、この兄が〜という罪を犯しただの、今でも言われている精神病は母親のせいだとか環境のせいだとかの話、周りは富裕層が多く私はそれどころじゃない〜等、何回も繰り返し語られたり、テンポが悪く無駄に長文になっていて読みずらかった。
一番目立つ症例で根は優しいものの奇行に走ることもあるカトリック崇拝のドナルド(長男)、
一匹狼でドナルドと激しく争いつつ弱い者(特に妹たち)を虐めるジム(二男)、
一家のアイドル(一番ハンサム)でたった一度の暴力の爆発を起こすブライアン(四男)、
物腰柔らかく自意識が強く異なる時や場所の声をはっきり聞くジョセフ(七男)、
陶芸家で自分はポール・マッカートニーあるいは自分の気分が天気を決めていると信じるマシュー(八男)、
躁病で乱暴な一家の叛逆児のピーター(末弟)
ジョン(三男)、マイケル(五男)、リチャード(六男)、マーク(九男)、マーガレット(長女)、メアリー(次女)
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ノンフィクション。一家の歴史や記憶、精神病研究の過程を最初から書き連ねる手法はかなり冗長。
精神病に関連する歴史の一側面として、特異な一家族に注目した内容自体は重要だが、周辺の基礎情報を知った上で、具体的な話を読みたいという流れなら良かったか。これ単体で読む感じではないかも。
精神病の治療や対策も未だ解決はしていないが、研究における課題と、希望の光が見えた面も。
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統合失調症の兄がいます。娘がいつか遺伝発症しないか頭の片隅に不安を抱えています。著書では男子の発症率が高いことを知りました。環境誘発をしないよう親なりに整えながら、発症しないよう見守ろうと思っています。
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統合失調症に代表される精神疾患は現在では脳内の神経ネットワークの機能不全が主原因であり、それをもたらす要因として遺伝的要因・環境的要因の両者が関係しているとされている。これは統合失調症の研究が長年に渡って蓄積されてきた結果として徐々にわかっていったことであるが、この疾病の歴史を振り返ると、遺伝的要因もしくは環境的要因(特に母親の子供に対する育成)のどちらかのみが原因であるとする議論が長く繰り広げられていた。
この議論を決着させるためには、同一の環境下で育てられ統合失調症になった人間、ならなかった人間をそれぞれ抱える家族を研究するのが最も理想的である。とはいえ、そのような都合の良い家族が本当にいるものなのか?、という当たり前の疑問に対して、本書が提示するのは12名の子供のち6名が統合失調症を発症し、残りの6名は発症しなかったという極めて稀有な一族の物語である。
第二次世界大戦後、アメリカはコロラドで暮らすギャルヴィン一家がその一族であり、父親ドンと母親ミミの元には連続して10人の男の子、ラストに2人の女の子が生まれる。そして、長男を筆頭に次男など10人の男の子の中から6名が統合失調症を発症する。繰り返される入退院への対応、統合失調症が原因と見られる自殺、統合失調症を発症した次男から2人への姉妹に対する性的虐待など、12名の家族はほぼ離散状態となっていく。
本書では生存した一族へのインタビューに基づく一族の歴史、そして統合失調症の原因を突き詰めようとする研究者たちの活動と彼らがこの一族と出会い研究が大きくブレイクスルーを遂げる様子の両輪を描くノンフィクション作品である。
徐々に高齢化し、病気で亡くなる一族が多くなる中、ドンとミミの孫が統合失調症の研究者になるシーンで本書は幕を閉じる。稀有な一族の末裔として、この研究テーマを選ぶ姿は感動的である。
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12人の子供のうち6人が統合失調症を発症した家族の物語
サイエンスノンフィクションとしても秀逸だが、家族とは何かというテーマを突きつけ、この物語を詳らかにした一家の勇気や希望を感じた
答えはないが、とてもとても重い一冊
訳者あとがきが素晴らしい
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統合失調症と、幼児性愛虐待の問題が重なっている。そのため、悲惨さが一層増している。
家族に多くの精神疾患患者が生まれ、混乱と恐怖の中で生き抜くことの困難さは想像を絶する。
このような家族から研究が進み、未来の世代を救うかも知れないことは希望を感じさせる。それでも、既に病んでしまっている患者にはなんら救いにはならないし、失われてしまった人生は何一つ戻ってこない。苦しんで死んでいった患者や、これまでの見当はずれの治療でただ苦しんだ患者のことを思うと、見つかった希望はまだ微かすぎる。
信念に基づいて医者が行う治療は、実際には当てにならないのだと思うと悲しい。
深い喪失感と悲しみと、微かな希望が入り混じる読後感。
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統合失調症の一族
1944年に結婚したドン&ミミのギャルビン夫妻は十男二女に恵まれたが、子どもたちは次々と統合失調症に罹患し、最終的に男子6名が診断を受けることになる。アメリカの文化もあってか、薬物乱用や銃による無理心中、妹への性的虐待など、陰惨な事件が続き、家族は疲弊すると共に、次はいつ、誰が発症するのだろうという不安を抱えながら生きることになる。
精神医学の発展も、家族の疾病観に大いに影響する。すなわち、学界も一番最初は統合失調症に生物学的な要因を探し求めようとしたが、優生学運動が隆盛したことにより、脆弱な遺伝子を持つ者が一掃されてしまう可能性が出てきたため、その反動として心理学的な要因が熱心に探求されることとなった。精神分析の流れを組むフロム=ライヒマンが「デボラの世界」で統合失調症は心理学的な要因で起こるのであり、それは完璧すぎる母親の養育態度(統合失調症誘発性の母親)によるものだとすると、これが支持されて優生学的な懸念は後退したが、実際に患者を子どもに持つ親は非常なストレスを感じるようになり、患者を医療機関につなげることを躊躇させることになった
続いてやってきた薬物療法の時代にあってもギャルビン家の兄弟は治療効果が出にくく、副作用ばかりが目立った。比較的若くして心臓疾患で亡くなった二人について、薬物療法を選択したことは正しかったのか、残された家族は悩む。
本書のもうひとつの軸は、家族研究によって遺伝の役割を明らかにしようとしたフリードマン、デリシ(よく見る名前だが、女性だというのを初めて知った、、、)の奮闘である。統合失調症が多因子遺伝であるからこそ、その遺伝因子を究明するためには家族内発生率の高い家系を調べるべきだと考えたデリシらによって、SHANK2やニコチンα7受容体などの以上が明らかにされる。これらの異常は今の所まだ実際の創薬には結びついていないが、ギャルビン兄弟の末妹の子が研究者を志向し、2017年にフリードマンの研究室に入るところで終わる。途中はやや救いがない感じで陰鬱なトーンだが最後のこのシーンで救われた感じ。読後感は良かった。
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12人兄妹のうち、6人が統合失調症を発症。主に二人の妹たちに焦点を当てているようだった。兄に襲われ、両親に気にかけてもらえない。逃げて関わりたくない気持ちも十分分かるが、末の妹の献身さに心を打たれた。研究が進み、原因が判明しより良い薬が開発されることを願う。
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ギャルヴィン一家の苦悩と奮闘を一人ひとりの人生に焦点を当てながらまとめきったすごいノンフィクション。あとがきで創作された部分はひとつもないと言い切られており驚いた。ノンフィクションなのだから当たり前なのだけれど、あまりにギャルヴィン家での出来事が壮絶すぎて、どこかで作り話であって欲しいと思う自分がいた。
統合失調症は環境によるものなのか、遺伝によるものなのか。その謎をさまざまな分野の科学者が仮説・検証・分析を繰り返し、少しずつ紐解いていく様が何よりも印象に残った。これは以前読んだ「フェルマーの方程式」でも思ったことだが、科学者が自身の専門分野でその才能を発揮し、研究結果を別の科学者に繋いでいく、協力ではなく共闘のように近い形でひとつの謎を解いていく様子は胸に迫るものがある。
ただ、一家を救ったのは科学者だけではない。統合失調症という病から一家を救い出そうとした、末娘のリンジーの行動がなければ、きっと地獄は再生産されていただろう。病気になる兄たちを見ていた彼女は、自身も統合失調症になり得るであろうという不安を抱えていた。それを払拭するため自らが予防策を講じ、なんとか生き延びてきた。聡明で、とても勇敢な女性。彼女がいなければ、彼女が病気に真正面から立ち向かおうとしていなければ、一家は壮絶な終わりを迎えていたはずだ。
この本が世に送り出されたのも彼女の協力あってのことだ。しかし、あとがきにもあるようにノンフィクションを書くにあたって、全ての家族が取材に応じてくれたというのだから、統合失調症や他の病を抱えながらも、病と向き合い、家族と向き合おうと覚悟を決め話をしてくれたリンジー以外の家族に対しても、その心の強さに感服せざるを得ない。とてつもなくすごい一家だ。
この本は読むのに根気がいる。分量もそうだが一つひとつのエピソードに重みがある。それに、次々と悪いことが起こるので、最悪を想像してしまい読み進める気が起きなくなる。それでも、多くの人に読んで欲しいと思う。統合失調症への理解を深めることはもちろんのこと、治療への道を切り拓いた一家がいたことを後世に語り継ぐためにも。
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裕福な家庭で生まれ、当たり前の幸せを望み結婚出産するが、愛する子供らが次々に発症し何もかも思い通りには行かず、それでも自分の存在意義を確固し、自分の思い描く理想に近づけるため、感情を押し殺し理性的な母を取り繕い、自らつくったストーリーのなかで生きるミミ。そうでなければ、生きられないほど辛すぎる。完全にキャパオーバーなのに、世間からも健康な我が子からも、悪の根源のように扱われる、こんなシンドイ人生ある?もとより12人も産んだこと自体、すでにストーリーがおかしいけど。
「統合失調症が、疾患名ではなく脳が疲れた時に出るただの症状だとしたら…。」早期発見、適切な介入の効果から考えると妥当だと思う。