紙の本
美しい礼文島に‥
2023/01/14 09:13
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投稿者:mori - この投稿者のレビュー一覧を見る
礼文島大好きの私です。その島に島独特の風土病が‥
原因は何か、どうやつて闘っていくのか。
怖い話かと思いましたが、そうではなくまじめな、そして温かい話です。
ああ、また行きたいなあ。
紙の本
美しい島の知られざる歴史
2023/05/17 10:05
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦後間もない北海道・礼文島での実話を基にした物語。得体の知れないエキノコックスとの戦いと苦悩は、コロナ禍に通じるものがありました。主人公の土橋が悩みながらも成長していく姿に心を打たれつつ、山田・大久保といった脇役陣の助演男優賞といった存在感も印象的です。学生時代(30年前)に訪れた礼文島は、花が咲き乱れる(ウニのおにぎり「ウニギリ」が美味しかった!)美しい島で、こんな歴史があることを知らずにいました。当時に想いを馳せながら読み終えました。
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北海道・礼文島を舞台に、多包性エキノコックス症という寄生虫による感染症を調査する衛生研究所の研究員の姿を描いた、実話に基づく作品。
大正期に山火事のせいで失われた森を再生しようとするも、若木を鼠に食べられてしまう。天敵である狐を放ったことで森は回復したが、狐を終宿主とするエキノコックスも持ち込まれてしまった……。
すべての生き物を愛する研究員・土橋が素晴らしい。彼と島民とのやりとりや、対策に難渋する姿に共感した。北海道でこうした感染症が起きていたことも知らず(なんとなく聞いたような気もするが)、現在のコロナ禍にも通じる怖さを感じた。
NetGalleyにて読了。
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北海道礼文島で多発した寄生虫による感染症「エキノコックス症」から島民の命、暮らしを守るための闘いを描いた作品。
エキノコックスは中間宿主であるネズミを食べたキツネや犬、猫が終宿主となりその体内で成虫が卵を産み、それが糞とともに体外に排出される。
なんらかのきっかけで人がその卵を摂取すると、肝臓肥大や肝硬変などをもたらし、死に至ることもある。
昭和29年に道立衛生研究所から礼文島へ感染経路を調べる現地調査のため派遣された土橋は、日々、野犬の剖検に没頭するが、エキノコックスの痕跡を見つけられず、衛生研究所は11名の調査団を島に送る。
そして、野生動物だけでなく、島民が飼育している犬や猫まで全て捕獲、処分してのエキノコックス終宿主根絶に乗り出す。
ただでさえ、島民との間に断絶があった土橋は、島民が可愛がっていた動物の命を断つという立場に立たされ苦悩する。
史実や調査研究に基づくドキュメンタリータッチでありながらも、土橋が島民の思いや営みに向き合いながら使命を果たしていく姿を描いた人間ドラマとして、読みごたえのある作品になっている。
島民の立場に立ちながら土橋と友情を交わす役場の職員・山田、人格者で島を愛する議員・大久保、冷徹だが洞察力のある上司・小山内など、多彩な登場人物と土橋の交流が心に響いた。
礼文島の美しい風景や風土にも触れられ、旅情がかきたてられた。
また、寄生虫、病原体が物資輸送網の発達、海外取引や戦争などの人間活動により移動範囲を広めるという現在のコロナウイルス感染をにらんだ記述も盛り込まれていた。
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うーん・・・
コロナ禍もそうだけど、ウィルスというものは改めてやっかいで、なかなか収めるのは難しいなと考えさせられる一冊でした。
エキノコックスを撲滅するため、こんなに心身を削り、頑張られた方達がいたこと、なお今も少ないけれど撲滅していないエキノコックスが、まん延しないことを祈りたいです。
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エキノコックス症という言葉を昔どこかで聞いたことがあり、北海道に行ったときはよく意味も分からずキツネに触っちゃだめよという言葉だけが先走ったまま何も知らずに過ごしてきた。
この本を読んでようやくその寄生虫の存在と、キツネに限らず犬や猫にも存在することを知る。利尻島は有名でよく聞く名前だが、礼文島はわき役でその歴史も知らなかった。この小説は礼文島を郷土愛のように書かれており懸命なエキノコックス撲滅に多くの犠牲を払い、いつしか”清浄島”という称号を手にするも、決してエキノコックスは絶えず、現在も日本の全土に存在する不治の病となっていることに驚いた。
研究員や、役所担当者、議員や島の住人達、そして次郎。人物の細かな描写や感情が読んでいて切に思った。読みやすくわかりやすくすごく丁寧に書かれている作品で人物はフィクションでありながらも実際の活動もこんな感じだったんだろうと十分に伝わった。多くの人にこの今も続けられている活動を知ってもらいたいと思う。
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史実を元にしたフィクションです。という一文にヒヤリ。現代に至ってもまだ戦いは終わっていないのか。コロナ禍だから尚更ウイルスや病原菌の話に引き込まれた。
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大正末期、増えすぎたネズミの対策で千島から天敵たるキツネを礼文島に放つ。
戦後、腹が膨れる奇病が礼文島にだけ発生。
エキノコックス症という寄生虫由来の病気。
道立衛生研究所の土橋は単身、調査に礼文島に行く。
実話がベースの小説。
寄生する宿主(動物)を絶てば根絶できるので、礼文島内の終宿主をすべて解剖し感染状況を調査することになる。
終宿主とはキツネ、ネコ、イヌ。
当然、飼いネコ、飼いイヌも含まれる。
次郎の飼いイヌ「トモ」の部分は落涙必須。
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実話?って思うほどリアル。
未知の病に対する偏見や差別など、この時代だったらこうなるだろうなと怖く感じた。
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エキノコックスとの戦い。礼文島に渡り、終宿主動物を根絶させた土橋たちの苦悩が計り知れない。頼れる仲間と、島民の涙や憎悪を乗り越えて非情になるのは島の未来を守るため。それなのに今も広がり続けるエキノコックス。種を絶やさぬように生存本能で生きる小さな虫に翻弄され続ける人間たち。面白いと言っては不謹慎だが、寄生虫というのは興味深い。また土橋や山田、大久保、次郎、沢渡…など魅力的なキャラも良かった。これからも読み続けたい作者だ。
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礼文島のエキノコックスの話。
いささか冗長に思えた。
登場人物がみな良い人過ぎた感が。
もう少しハラハラする展開ならと思う。
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キタキツネから感染するというくらいの何となくな知識しかなかったエキノコックス症。潜伏期間が非常に長く、発見された時は手遅れになっていることが多い恐ろしい病。未だに効果的な治療薬も見つかっていないという病気に、昭和中期にその防疫に人生を捧げた研究者の物語は、寄生虫とウイルスという違いはあれど、未知の感染症に対する防疫の困難さという面において、現在の新型コロナ感染症を思い出させる。
礼文島という小さな島で広がった感染症ということで取られたある方策。これはひどい。元々動物が好きで生物学者になったような研究者にはさぞかし辛い選択だったろう。
この過去の方策に対して20年後に大久保が語った「人に飼われて生きるイヌやネコを殺す人間は、条件によっては人を殺すこともいとわないのではないか」という言葉には頷ける。お上による命の「供出」という恐ろしい策がヒトに向かない保証なんかないんだと。
防疫に携わる人の努力と苦悩が胸に染みる作品は、それでも、彼らを動かす道府県や国の非情な一面を否応なしに思い起こさせ寒い思いがする読後でした。
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昭和29年北海道の離島、礼文島の出身者から相次いで発見された「エキノコックス」。
腹が膨れて死に至る感染症を撲滅すべく、北海道立衛生研究所の研究員である土橋が奮闘する。
流行拡大を防ぐためにキツネ、野犬、野猫のみならず飼育されてる犬猫までも処分という決断に至るまで。
まるで映像を見てるかのような描写だと思った。
それほどの熱量が、ガンガン伝わってくる。
生死に関わることを追求し、やるべきことを恨まれながらもやるからには覚悟が必要。
土橋とは性格が合わないのか…と思っていた役場の山田、議員の大久保、大学生の沢渡は礼文島を離れた後も交流するほどになるのは、彼らが土橋の気持ちをよくわかっていたからだろう。
決して、ひとりでは出来ないことだから。
そして、彼らは強いと感じた。
今なお、「エキノコックス」を耳にするのはまだ感染することがあるからだろう。
生きている限り、終わりではないのかもしれないが医学は進歩していると信じている。
どんな感染症であれ、日々治療薬を開発している研究者や医療従事者の方々に、心よりご尊敬の念を申し上げます。
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北海道礼文島で発生したエキノコックス症の感染対策を巡る島民と衛生省の科員との物語
今こそコロナ禍で学ぶべき点が多くあり引き込まれるように読了しました。
河﨑秋子さんの綿密な取材にも毎回感服し、
本作品も素晴らかったです。
ただ、エンターテイメント性はあまりない為、楽しく読書したいというタイミングなら当てはまらないかもしれません
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読んで楽しい話ではありません。しかし北海道に住むものとしては知らないことにはできない話でした。なかなか終焉しない感染症に見舞われている今、かつて謎の感染症と思われていた寄生虫による病との闘いの物語が世に出てきたのは自分には時代の要請だったのでは、という気がしました。
河﨑先生がこの物語をいつから構想されていたのか存じ上げませんが、よくぞこの重い話を書かれたなと尊敬の念を覚えるとともに、北海道にはまだまだ日本の他地域にはない物語の素材が未発掘のままあるのではないかとも考えました。この物語をどの時代まで描き、どのようにまとめるか、終わらせるか悩まれたのではないかなぁと勝手に想像しました。今も現実が厳しいからこそ、登場人物たちを最後はあのような形にしたのかな、とちょっとした救いのように感じました。個人的には、大の猫好きの先生が犬や猫の腹をどんどんかっさばく小説を書くのはしんどかった面もあったのではとも思いました。
有名某ドラマでキタキツネを「ルールー」と呼ぶアクションが昔放映されましたがあれを見ていた大人は当時大層懸念を示していたことを思い出しました。今でも道民はキタキツネを見ると「絶対触っちゃだめだよ」と言うし沢水は絶対口にしません。湧き水も定期検査などで安全を確認できているものでなければ飲みません。寄生虫はまん延してしまったかもしれないけどそれを予防する知識はこの物語に出てくるような先人たちのお陰で周知されたと思います。そのことに改めて感謝する読書となりました。
道民だけでなく沢山の人に知ってもらいたい物語です。