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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
占いにまつわる
ゆるやかに繋がった短編集。
どれも“よくある話”といえばそうで、
新しい見聞が得られるわけではない。
それでもひとつひとつのエピソードは染み入るし、
組み合わせでこれほどの豊かさを持つ。
占いも道具。
結局は使い方次第。
人の心というもの
2024/11/23 16:16
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投稿者:kisuke - この投稿者のレビュー一覧を見る
女性が主人公の7つの短編集。あるお話の登場人物が別のお話にも出てきたりして、人と人との繋がりを思わせます。
「占」のタイトル通り、不思議な力を持った人々が出てきますが、その人にすがる人達の姿がリアルに感じられて、人の心の複雑さ、己の真実に気づく難しさ、を考えさせられました。
悩みのある人には、何らかのヒントを与えてくれるかもしれない本です。
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時代は大正頃だろうか。いろんな占いに、未来の答えを求めてやってくる女達のストーリー。
占いって、万事がうまくいっている時は頼ろうとはあまり思わない。身近な人達に相談することを選ばず、赤の他人による”占い”という確証がないものに(一般的に言って)答えを求める女達。この小説のように、今も昔も女の思考は変わらないのだろうか。
占いとは関係ないけれど、登場する占い師で(占い師というか喰い師)唯一の男性が言った言葉、『他社の理念というのは、それがどれほど尊敬に値するものであっても、容易になぞれるものではありません。他者の考えを糧とすることは大切ですが、よほど腑に落ちない限りは、そのまま受け継げばいらぬ苦しみを生みます。やはり自分の内から純粋に湧いた気持ちでなければ』というのが心に響いた。
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連続短編集ともいえる、好きなジャンル。
そして、占いに翻弄される人々の引き摺られていく姿がじわじわと描き出されるのが、自分とも重ね合う時があってぞくりとする。
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最近、占いに興味があり、占いを題材にした小説ということで手に取りました。こちらの作家さんの作品は初めて。時代は大正でやや戸惑いましたがすぐ慣れました。
精神的ホラー小説?の趣きで気楽に読める短編集で気分転換にピッタリ。主人公が全て女性で描写もドロドロしているので男性作家さんではなく、ちょい年代上の女性作家さんが書いたのではと思ったのですが、著者プロフィールを改めて調べてみたら女性の方で驚きました。名前から勝手に男性作家さんかと思い込んでいました。
男性が主人公のバージョンがあっても良い気がするのですが、どうしてないのか不思議。歴史的に高名な占術師は男性も多くいるのですが、顧客は女性主体のマーケットなのでしょうか。
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人間の業の深さを突きつけられる1冊。
執着する気持ちも占いにすがりたくなる気持ちもよくわかる。わかるだけにそんな自分をごく客観的に見えてゾッとする。何かに頼りたくなったら縋りつきたくなった時に読み返したい。きっと冷静になれるはず。
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『かたばみ』が良かったので、木内さん二作目。このお話も良かった。
占い師に頼るようになった女性や、自分が占い師になった女性が出てきます。
少し前の時代のお話だからというのもありますが、話し言葉や表現が丁寧で美しいです。読んでいると、こちらの心も綺麗になりそう。
色々と思い悩みながらも、何かがふっとわかって、そこから自分の心に向き合えて、賢明な判断をして前に進みだす女性の姿が描かれています。そんな風にできたらなぁと憧れます。
「北聖町の読心術」に出てくる、心を読む“都”という女性の占い方は特に印象に残りました。こんな方が実際になったらぜひ占ってもらいたい。
心に残ったところ
「屑待祠の喰い師」より
○人に教えるってのは、自分が苦労して技をものにするからできるんです。あそこでこうしとかないとしくじるぞ、ここで一手間加えるとうまくいく、ってね。
○職人がうまくできなかったり、しくじったものは、父が黙ってやり直した。それを見た職人たちは走り、恐縮し、懸命に技を磨いた。
職人たちは、研鑽しなければいづらくなることを肌で感じていた。
口ではなく、己の態度で人の仕事を正すというのが、最も尊いことなのだ。
○もちろん結果としてしくじることもあるでしょう。けれど、そうなった時、決して開き直ってもごまかしてもならないんです。ごまかす事は何も生みません。それどころか、自分まで見失ってしまう。
「北聖町の読心術」より
○女性というのは、自分で勝手に不安を作り出しては、突然相手に全てをぶつけて、仲を壊してしまう、ということをよくなさいます。ですから、ご相談にお見えになる方には、常々、不幸上手にならないように、と申し上げているんですよ。
○なぜ他者との関係でそこまで不安になるのか。それを克服しない限り、誰と交際しても同じことの繰り返しになるでしょう。
○人の心はどうにもならなくて、そのどうにもならなさには、様々なことが絡んでいます。生い立ちや、性格、今まで出てきた体験や。ですからときには、不可解をやり過ごす、ということがあって良いように思うのです。
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占いに関する七つの短編。
読んでいて何となく時代が古風なのでもしかして時代劇を読んでるのかと思ったのですが、日露戦争後という記述がありました。
しかし、女学校を出てから製薬会社に研究員として働いている女性が登場します。この時代に会社勤めの、しかも研究者の女性はいたのでしょうか?
それはともかく、収録された七つの短編の舞台や時代は近接しているようで、一度登場した人物が他の作品にゲスト出演しています。なかなか面白い趣向です。
【時追町の卜い家】
表札に「卜」と墨字でしたためられた一軒家。
この館には部屋が八つあって、交代で八卦見が控えているという。
恋に迷った翻訳家の桐子はここに通い詰めるが、なぜか次々と新たな八卦見が現れて一向に途切れない。
【山伏村の千里眼】
大叔母の家に下宿して喫茶店で働き始めた杣子には生まれつき特殊な能力があった。
愚痴聞きをしていた大叔母に代わりを命じられたことをきっかけにその能力が開花。村の人の相談事に乗っているうちに「山伏村の千里眼」として評判となり、多くの人が押し掛けることになる……。
【頓田町の聞奇館】
口寄せ・聞奇館。かつて看板を出して活躍していたお婆さんは今では息子の家に居候し二階でひっそりと口寄せをしているのであった。
英語の先生のおじいさんの遺影が気になった和枝が訪れた。そこで和枝は驚くべき現象を目撃するのであった!!
【深山町の双六堂】
自分の家庭と他の家庭のランク付けが気になり始めた政子は各家庭のランキングを付け始める。そのランキングが隠れた話題となり、遠くの町から色々な人が訪ねて来る。やがてそれは近所の人の知るところとなり……。
【宵待祠の喰い師】
宵町祠の裏に佇む朽ちかけた平屋には「喰い師」が住んでいた。
彼に悩みや愚痴を話すと彼が引き受けて昇華してくれ、胸がスッとするという……。
【鷺行町の朝生屋】
鷺行町には遺影を描く画家がいた。写真以上にその人の生きた姿を映すと評判である。それだけではなく、あの世に行かずに魂が戻って来るとまで言われていたのである!!
【北聖町の読心術】
都と名乗る読心術師。ある雑誌の読心術の名鑑定士特集に載っていた。佐代が手紙を出すと喫茶店での待ち合わせを指定された。
【頓田町の聞奇館】に登場する口寄せのお婆さんは本当の能力者のようです。見事に夫婦の霊を呼び出します。話は整合性が取れています。そしてそれは理想的な夫婦関係です。
ここに登場する本草学者の先生は牧野富太郎先生がモデルなのでしょうか?それとも、南方熊楠先生?
【深山町の双六堂】は、厳密には占い師の話ではありません。単なるうわさ好きの主婦の話です。
何だか落語みたいな展開になっていきます。おもしろうて、やがて悲しくなるお話であります。
落語のようにオチを付けて終わりにする結末もあり得たのでしょうが、本短編集はエンタメ寄りではなく純文学寄りなので最後に考えさせる結末で終わります。
【宵待祠の喰い師���では、この方に悩みを話すと悩みが軽くなります。一体どんな仕組みなのでしょうか。ちょっと非現実的な設定です。しかし物語は現実的に終わります。
【鷺行町の朝生屋】これは、いい話です。書き方によっては感動的ないい話になったはずです。しかしホラー的な怖い話に仕上がっています。
【北聖町の読心術】これは最後にあの方が再登場して感動的に終わります。本作品が最後に置かれていて救われた気がします。
OLDIES 三丁目のブログ
占い師が多い地域の七つの物語【占】木内昇
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2024/01/28/173633
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「新潮文庫の100冊」に入れて欲しいと思うくらい良かったです。たまに100冊を超えている年があるので、中の人がコッソリ追加してくれても良いのでは…などと思ってみたり。
内容は、“占い”にハマってしまった女性たちを描く全7話の短編集。とはいえ、以下にあらすじを書いておきますが、占いだけにあらず。人が何かにハマって行く過程の恐ろしさや、他人と比較して一喜一憂することの無益さがとてもよく描かれていて感心しました。
各短篇は一話完結ですが、別の話しに登場した人が再登場する話しもあります。以下が参考になれば幸いです。
1話.時追町の卜い家
家の修繕をきっかけに、翻訳家で独身の桐子が年下の伊助と半同棲生活を送ることに。しかし、彼は行方不明の義理の妹がいて、仕事の合間に探し歩く日々。彼女は、彼が妹を愛していて、いつか自分のもとを去ってしまうのではと不安になります。ある時、彼の気持ちを知りたい一心から何度も占いを頼るうち、次第に自分を見失って行きます…。
2話.山伏村の千里眼
山奥から大叔母の家に出された16歳の杣子。
ある時、彼女は大叔母を訪ねてきた女性の相手を頼まれ、適当に助言をして帰しました。一月後、助言が当たったとの報告に伴い、次第に千里眼との噂が広まって、見知らぬ女たちが相談に来るようになりました。そんなある日、良い結果しか受け入れられない女性が現れ、何度も占いにやってくるようになります…。
3話.頓田町の奇聞館
知枝は、学業不振から翻訳家の桐子家(1話の女性宅)に英語を教わりに通っていました。彼女は、なぜか仏壇に飾られた(亡くなった)男性に一目惚れして、お見合いに6回も失敗してしまいます。ある日、彼女は亡くなった人と会話ができるお婆さんに、遺影の男性を呼び出してほしいと頼みます。そこで出てきた男性は、驚くべき性格の持ち主で…。
4話.深山町の双六堂
平穏で普通の家庭が一番と思っていた主婦の政子が、悪童で名高い近所の息子の進学校合格を耳にします。別の日には、夫の同僚の妻が画家として活躍している話を聞き、自身は平穏ではなく平凡だと気付きます。そこで、近所の家庭を評した考課表を作り、自身の立ち位置を調べるうちに、人生双六まで作成してしまいます。果して双六の上がりは如何に…。
5話.宵町祠の喰い師
女学校を主席で卒業し、薬剤師として働いていた綾子(2話に客として登場)が、大工頭の父が亡くなったことを期に家業を継ぐことに。男性優位な肩身の狭い会社勤めから逃げられましたが、どうにも素行が悪い職人がいて頭を悩ませる日々。そこで、他人の悩み事を、ただ聞き入ってくれる喰い師という存在を知り、彼女はそこを訪れて得た結論は…。
6話. 鷺行町の朝生屋
恵子(2話に客として登場)は、子宝に恵まれない事を、親戚や子持ちの友人たちに無遠慮に聞かれることに辟易していました(2話と5話に登場した級友の綾子は別です)。ある日、庭で猫を追いかける4歳のゆうたくんと出会い、その時の楽しい思い出が忘れられません。そんな折、ある新聞記事を見たことから、朝生屋という写真そっくりに絵を描くお店に出かけます…。
7話.北聖町の読心���
佐代は著名な画家(4話の政子の夫の同僚の奥さん)の絵画教室家に通っていました。彼女は容姿に自信がありませんでしたか、そこに出入りしている画材屋の武史郎に誘われて交際することに。ある時、彼には以前婚約者がいたとの噂を耳にします。容姿に自信がない彼女は、彼が気休めに自分と会っているだけなのではと疑心暗鬼になります。そこで読心術に長けた女性に、彼の心の内を見てもらうことに…。
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翻訳家の桐子は大工の伊助と深い仲。だが、彼は生き別れた妹が命よりも大事だという。
ならば、私の存在はいったい何なのか。桐子は憤り、偶然行き着いた卜い屋で彼の本心を訪ねる(『時追町の卜い屋』)。
占いと女性をテーマに書かれた短編集です。
ある女性は恋しい相手の心を知るため手当たり次第に占い屋を訪ね歩き、ある女性は些細なきっかけから占い師として様々な人の相談を受けることになる。
ある短編に出ていた登場人物が、別の短編にも出ていたりしていて、それぞれ独立した話ではありますが、連作短編集のような雰囲気もあります。
自分や他人の気持ちに思い悩み、苦しみ、占いに縋る女性たち。時に間違い回り道をしても、最後には自分の進むべき方向へ正しく踏み出し、一回り成長したようで、こちらの気持ちもすっと軽くなるような素敵な一冊でした。
心を軽くし、心の闇を晴らし、ある時は人を救うきっかけにもなる「占い」。
私は店舗でもテレビや雑誌でも、占いはほぼ見たことなかったのですが、適切な付き合い方をすればそう悪いものでもないんだなあと、何だか占いに対する偏見が取り払われた気分です。
一番気に入った作品は、『宵待祠の喰い師』。棟梁であった父から継いだ組と職人の対応に苦慮する女性の話。こちらはちょっと個人的に身につまされる話でもあり、彼女のような強さが私も欲しいなあと羨むところでもあり。
また、『山伏村の千里眼』は、もう本当に切実に! ここまでの洞察力が欲しくて仕方ない。
なお、占星術師の鏡リュウジさんと作者さんの対談が巻末に載っています。
個人的に、16歳頃から少女誌で占星術コーナーの連載を持っていたという鏡リュウジさんの経歴に驚きました。そんな年齢でも雑誌連載って持てるんだ……!?
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連作短編形式の作品であるところが好みだったのと占いの持つ「不思議さ」のようなものを具体化してあるような作品で面白かった。千里眼の杣子さんと鷺行町の朝生屋の話が特に面白かった!
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早く読み終えたいというようなねばねばと嫌な気持ちを描写している話があったり、
なんだかすこし戒めや心の成長のようなはなしもあったり
面白かったな
特に喰い師の話が好き
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占いをテーマに大正時代を舞台にした女性特有の悩みや苦しみ、欲求を描いた7編。
女性心理の描写がうますぎて読みながら色んな感情が巡りました。たまにそれぞれのお話が繋がったりもしていてとても面白い。どのお話も重暗すぎる悩みのお話では無いところが個人的には良かったです。
・時追町のトい家
自立した女性が恋に悩み占いにハマる話。
占いにハマっていくさまがリアル。占ってもらった結果をまとめて統計しようとしてるところが桐子さんの人柄が出てて面白い。ただ、そんな男早く切ってしまえばいいのにと何度も思ってしまうくらい、桐子さんが惹かれて、縁を切れなくなった男性に一切魅力を感じなかった…
・山伏村の千里眼
ひょんなことから占いをする側になった女性の話。
杣子さんの心の声が冷静で共感できた。
欲しい言葉はこれだろうなと分かってしまう事は、女性同士の恋の悩み話なんかでは誰しも思った事があるのでは無いだろうか。
ただ、最後まで自分の想いにしがみつき、頑なだった相談者のその後の姿は少し後味悪かったな…
・頓田町の聞奇館
もう亡くなってる人の写真に一目惚れした女性が、本気になりすぎて口寄せしてもらう話。
死人の声が聞こえる聞奇さんのキャラも良かったが、知枝さんが可愛いらしい。アイドルなんかでもそうだが、理想としていた人が思ってたのと違ってたなんて事は良くある。個人的には轍さんがすごく素敵な女性で好きだった。桐子さんが大好きなお婆ちゃんだったと言っていたのも頷ける。
・深山町の双六堂
平凡な生活に不安を感じ、自分の家庭と他者の家庭を比べ、甲乙つける家庭番付表を作ってしまった女性。それがバレて同じ悩みの女性達が集うようになった話。他人と比べるのは誰でもよくある話だが、ここまで他者と比べてどうこう言い合い考えてる人達を、はたからみるとだいぶ悪趣味で嫌悪感がわくく。こうはなりたく無い…。
・宵待祠の喰い師
仕事に邁進する女性が部下の事で悩み、喰い師に愚痴聞き(単なる愚痴聞きとは違うが)してもらう話。
1番好きなお話。まず綾子さんに好感がもてた。
他者との関係での悩みは、他者に原因があるのではなく自分の内で培っているこだわりや観念によって生じている。の言葉、私も大事にしていきたいと思った。
・鷺行町の朝生屋
ある画家が遺影を描くと死人の魂を宿す。長らく子供が出来なかった女性が、朝生屋の遺影によって蘇った子供の魂に執着してしまう話。他人の子に執着を見せる恵子さんを怖く感じた。亡くなった子の家庭事情も悲しく、母一人子一人の暮らしで身売りのような事までして子を育てていただけに、子供の居場所が作ってあげられず、あげく事故で子を亡くして、死後は我が子に他の人の家に産まれたら良かったと思われていると言う何ともやるせない気持ちになるものだった。恵子さんは何がしたかったのだろう。
・北聖町の読心術
自分の容姿に自信が無いため、初めて付き合った彼の事も信じられずに読心術にのめり込む女性の話。
占いする時こう言う心境の人って多いんじゃないんだろうか。都さんの気持ちも���かる部分がある。
あなたの不安はあなたが作り出したもの。不幸上手にならないように。恋の悩み以外でも言える事がある話だが、悩んでる時は忘れがち…気をつけたいと思った。