0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
占いにまつわる
ゆるやかに繋がった短編集。
どれも“よくある話”といえばそうで、
新しい見聞が得られるわけではない。
それでもひとつひとつのエピソードは染み入るし、
組み合わせでこれほどの豊かさを持つ。
占いも道具。
結局は使い方次第。
投稿元:
レビューを見る
連続短編集ともいえる、好きなジャンル。
そして、占いに翻弄される人々の引き摺られていく姿がじわじわと描き出されるのが、自分とも重ね合う時があってぞくりとする。
投稿元:
レビューを見る
最近、占いに興味があり、占いを題材にした小説ということで手に取りました。こちらの作家さんの作品は初めて。時代は大正でやや戸惑いましたがすぐ慣れました。
精神的ホラー小説?の趣きで気楽に読める短編集で気分転換にピッタリ。主人公が全て女性で描写もドロドロしているので男性作家さんではなく、ちょい年代上の女性作家さんが書いたのではと思ったのですが、著者プロフィールを改めて調べてみたら女性の方で驚きました。名前から勝手に男性作家さんかと思い込んでいました。
男性が主人公のバージョンがあっても良い気がするのですが、どうしてないのか不思議。歴史的に高名な占術師は男性も多くいるのですが、顧客は女性主体のマーケットなのでしょうか。
投稿元:
レビューを見る
人間の業の深さを突きつけられる1冊。
執着する気持ちも占いにすがりたくなる気持ちもよくわかる。わかるだけにそんな自分をごく客観的に見えてゾッとする。何かに頼りたくなったら縋りつきたくなった時に読み返したい。きっと冷静になれるはず。
投稿元:
レビューを見る
『かたばみ』が良かったので、木内さん二作目。このお話も良かった。
占い師に頼るようになった女性や、自分が占い師になった女性が出てきます。
少し前の時代のお話だからというのもありますが、話し言葉や表現が丁寧で美しいです。読んでいると、こちらの心も綺麗になりそう。
色々と思い悩みながらも、何かがふっとわかって、そこから自分の心に向き合えて、賢明な判断をして前に進みだす女性の姿が描かれています。そんな風にできたらなぁと憧れます。
「北聖町の読心術」に出てくる、心を読む“都”という女性の占い方は特に印象に残りました。こんな方が実際になったらぜひ占ってもらいたい。
心に残ったところ
「屑待祠の喰い師」より
○人に教えるってのは、自分が苦労して技をものにするからできるんです。あそこでこうしとかないとしくじるぞ、ここで一手間加えるとうまくいく、ってね。
○職人がうまくできなかったり、しくじったものは、父が黙ってやり直した。それを見た職人たちは走り、恐縮し、懸命に技を磨いた。
職人たちは、研鑽しなければいづらくなることを肌で感じていた。
口ではなく、己の態度で人の仕事を正すというのが、最も尊いことなのだ。
○もちろん結果としてしくじることもあるでしょう。けれど、そうなった時、決して開き直ってもごまかしてもならないんです。ごまかす事は何も生みません。それどころか、自分まで見失ってしまう。
「北聖町の読心術」より
○女性というのは、自分で勝手に不安を作り出しては、突然相手に全てをぶつけて、仲を壊してしまう、ということをよくなさいます。ですから、ご相談にお見えになる方には、常々、不幸上手にならないように、と申し上げているんですよ。
○なぜ他者との関係でそこまで不安になるのか。それを克服しない限り、誰と交際しても同じことの繰り返しになるでしょう。
○人の心はどうにもならなくて、そのどうにもならなさには、様々なことが絡んでいます。生い立ちや、性格、今まで出てきた体験や。ですからときには、不可解をやり過ごす、ということがあって良いように思うのです。
投稿元:
レビューを見る
占いに関する七つの短編。
読んでいて何となく時代が古風なのでもしかして時代劇を読んでるのかと思ったのですが、日露戦争後という記述がありました。
しかし、女学校を出てから製薬会社に研究員として働いている女性が登場します。この時代に会社勤めの、しかも研究者の女性はいたのでしょうか?
それはともかく、収録された七つの短編の舞台や時代は近接しているようで、一度登場した人物が他の作品にゲスト出演しています。なかなか面白い趣向です。
【時追町の卜い家】
表札に「卜」と墨字でしたためられた一軒家。
この館には部屋が八つあって、交代で八卦見が控えているという。
恋に迷った翻訳家の桐子はここに通い詰めるが、なぜか次々と新たな八卦見が現れて一向に途切れない。
【山伏村の千里眼】
大叔母の家に下宿して喫茶店で働き始めた杣子には生まれつき特殊な能力があった。
愚痴聞きをしていた大叔母に代わりを命じられたことをきっかけにその能力が開花。村の人の相談事に乗っているうちに「山伏村の千里眼」として評判となり、多くの人が押し掛けることになる……。
【頓田町の聞奇館】
口寄せ・聞奇館。かつて看板を出して活躍していたお婆さんは今では息子の家に居候し二階でひっそりと口寄せをしているのであった。
英語の先生のおじいさんの遺影が気になった和枝が訪れた。そこで和枝は驚くべき現象を目撃するのであった!!
【深山町の双六堂】
自分の家庭と他の家庭のランク付けが気になり始めた政子は各家庭のランキングを付け始める。そのランキングが隠れた話題となり、遠くの町から色々な人が訪ねて来る。やがてそれは近所の人の知るところとなり……。
【宵待祠の喰い師】
宵町祠の裏に佇む朽ちかけた平屋には「喰い師」が住んでいた。
彼に悩みや愚痴を話すと彼が引き受けて昇華してくれ、胸がスッとするという……。
【鷺行町の朝生屋】
鷺行町には遺影を描く画家がいた。写真以上にその人の生きた姿を映すと評判である。それだけではなく、あの世に行かずに魂が戻って来るとまで言われていたのである!!
【北聖町の読心術】
都と名乗る読心術師。ある雑誌の読心術の名鑑定士特集に載っていた。佐代が手紙を出すと喫茶店での待ち合わせを指定された。
【頓田町の聞奇館】に登場する口寄せのお婆さんは本当の能力者のようです。見事に夫婦の霊を呼び出します。話は整合性が取れています。そしてそれは理想的な夫婦関係です。
ここに登場する本草学者の先生は牧野富太郎先生がモデルなのでしょうか?それとも、南方熊楠先生?
【深山町の双六堂】は、厳密には占い師の話ではありません。単なるうわさ好きの主婦の話です。
何だか落語みたいな展開になっていきます。おもしろうて、やがて悲しくなるお話であります。
落語のようにオチを付けて終わりにする結末もあり得たのでしょうが、本短編集はエンタメ寄りではなく純文学寄りなので最後に考えさせる結末で終わります。
【宵待祠の喰い���】では、この方に悩みを話すと悩みが軽くなります。一体どんな仕組みなのでしょうか。ちょっと非現実的な設定です。しかし物語は現実的に終わります。
【鷺行町の朝生屋】これは、いい話です。書き方によっては感動的ないい話になったはずです。しかしホラー的な怖い話に仕上がっています。
【北聖町の読心術】これは最後にあの方が再登場して感動的に終わります。本作品が最後に置かれていて救われた気がします。
OLDIES 三丁目のブログ
占い師が多い地域の七つの物語【占】木内昇
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2024/01/28/173633