紙の本
日本語の発音の変遷の話が、大変面白かったです。
2023/05/15 17:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本語学の博士の著者が、これまで築き上げてきた日本語の発音の変遷についての研究成果を、当書でふんだんに披露した形の1冊です。
正直、私は日本語の発音の変遷について深く考えたことがなかったので、当書でその学問の真髄に触れられたのが良かったです。大変勉強になりました。
さすがは日本語を研究されている著者からか、文章も大変読みやすかったです。飽きることなく読み進められました。
紙の本
奈良時代には母音が8つあった
2023/04/03 16:45
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
奈良時代には母音が8つあったとか、室町時代のなぞなぞ「母とは二度会ったが父とは一度のあわないもの」(答え・唇)から「ハハ」は「ファファ」と発音されていたことがわかるとか、もちろん、録音されていない古代、中世の発音がわかるというのが部外者には不思議
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奈良時代には母音が8つあった?「じ」と「ぢ」はなぜ同じ音なのか?漢字の音読みが幾通りもあるのはなぜ?千三百年に及ぶ変遷を解説
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「発音の変遷」というよりも「音と文字の不一致がどのようにして生まれてきたか」という観点でとてもおもしろく読めた。
文字(漢字)が伝わる前にも日本語は存在していたが、漢字が伝わったことで音に相当する漢字を割り当てるようになった。それが万葉仮名としてある程度整理される。その段階では、同じ「い」の音でも排他的に2グループの漢字群が割り当てられていて、「い」の発音にも2種類あったことが分かる。そんな漢字で当時の母音は8種類あったことが分かった。
しかし音声は変わっていく。音節の少ない原始的な日本語が、より複雑な節や語を含む言語に発展していくにつれて、微妙な音の違いで意味を区別する必要が薄れていく。すると発音は手を抜く方向に変化していき、母音は今と同じ5つに集約されていく。pで発音された「は」行もより楽なΦ(歯は使わず、唇を合わせるだけのfのような音)に変わっていく。
鎌倉時代にはすでに平安時代の和歌がまともに読めなくなっていて、藤原定家がそれを体系的に整理して読めるようにした。これが今に伝わるいわゆる古典の原型になっている。
漢語は外国語としてそのまま日本語に吸収される。現代において英語がカタカナで日本語に吸収されるのとまさに同じように。漢語が伝わった年代によって、中国の政治的中心が異なるため、同じ漢字でも発音が異なる。だから漢字の音読みは複数あることが多い。また中国語の発音そのままでなく、日本語が持つ音体系の中から発音が割り当てられる。これも現代そのまま。
さらに契沖、本居宣長らが現代の五十音を整理する。
実は書いてある内容はかなり専門的であり、正しく理解できている自信がない箇所が結構ある。なので上記はかなり雑なまとめであり、間違いもあるかもしれない。
でもとにかく日本語という言語が1000年以上も前に成り立っていて、それが大きく形を変えることなく綿々と伝わってきているということがとても実感できた。
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平安時代以前、日本語の母音は"あいうえお"の5音の他、"ゐゑを"の3音を加えた8音があり、「い (i)」と「ゐ (wi)」、 「え (e)」と「ゑ(we)」、「お」と「を (wo)」の発音は区別され、「いし(石)」は「イシ (isi)」でも、「ゐなか(田舎)」は「ウィナカ (winaka)」だった等の導入から既に面白い。
他にも「京(kyau)」と「今日(kefu)」とか、「はひふへの」の発音は奈良時代は「パピプペポ」で「母」は「パパ(papa)」。
録音機もない古代の発音がどうして分かるのかという疑問から始まる奈良時代から江戸時代までの日本語音声の変遷を辿る旅。
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発音や発声のメカニカルなところは今ひとつ理解できなかったけど、日本語をどう表記するのが理解しやすく読みやすいのか、上代から連綿と工夫してきたんだね。
「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」。この4音もかつては使い分けていたし、聞き取ることができていた。母音だってかつて日本語は8音だったという。円を「yen」と表記するのは、外国の方にはそう聞こえるから。失われた日本語の母音の一つだね。
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「国語」学の教科書のような新書。
良い意味で、とても懐かしい一冊だった。
今の大学生は、こういう手堅い入門書を楽しく読めるのだろうか。
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筆者の研究に対して「録音機も無い時代の発音がなぜわかるのか?」と言われるそうだが、そんな素朴な疑問から入る日本語音声学の本。奈良時代に八つあった母音が語の長大化にともなって不要になり五つになったとか、なにげなく使っている「は」、「へ」、「を」という「変な」仮名の用法は、文節の境界を示すことで文理解の速度をあげる、とか納得する記述も多い。純粋な知的探求を楽しめる。
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高校生時代、日本語の発音が現代と異なる事だけは授業で聴いたが、それきりだった。p→f→hというハ行発音の変化や、五十音表にない『ゐ』『ゑ』が消えた経緯を知れて良かった。本居宣長の仕事が発音記号もなかった江戸時代に於いて刮目する偉業であると改めて認識できた。
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「てふてふ」、「ふじ」と「ふぢ」など。仮名遣いと発音の関連性。羽柴秀吉はファシバフィデヨシと発音していた等日本語の発音の変遷を辿る。
万葉集の漢字の使い方であったり宣教師の辞書のポルトガル語表記の日本語などから当時の発音や母音子音の変遷を探る。音声を聞けなくても復元していく試みは凄い。近年に限った研究ではなく江戸時代に本居宣長なども研究している。
また方言に過去の発音が残っている例も面白い。
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なんとなく言語学と呼ばれるだろう分野に興味があったが、これはその興味のど真ん中ドンピシャにささる本だった。少々難解な箇所はあったが、それを上回る知的興奮を覚え、一気に読み終えた。
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とても楽しく読めた。以下の例文だけでも惹かれる。
銀行員の行雄は修行のため諸国行脚を行った。
こう、ゆき、ぎょう、あん、おこな、こんな複雑なことをする言語は他にあるのだろうか?中国の時の王朝の文化的な影響を強く受けながら、自国文化も築き上げてきた日本の独自性はとても興味深い。
しかも藤原定家と本居宣長の貢献がとても大きい。2人は天才的な素養はもちろんあったのだろうが、前者は和歌の詠み方を、後者は古代の音声を取り戻そうという執念が伝わってくる。
日本語は大切にしたい、と同時に変えていくことにも寛容でありたいと感じた一冊。
おまけ。奈良時代の「はひふへほ」は「ぱぴぷぺぽ」とのこと。むかし西川のりおと桂文珍がCMで話していた、「ちゃっぷいちゃっぷい、どんとぽっち」が昔の正しい日本語だなんて、目から鱗。
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古代音の再現と現代音までの変遷がテーマ。冒頭の奈良時代の音声の再現に惹かれて買ったが、冒頭だけだった。真ん中はほぼ漢字の音読みの話。日本語といえば日本語に違いはないが、想像したのとちょっと違う。漢字の話と並んで仮名遣いの話も続くが、だんだんと逸れていった気もする。
作者が結局言いたかったのは、藤原定家とか契沖とか本居宣長とか、もっとくだって橋本進吉とか有坂秀世とか、そういう人たちがいかに古代音を再現しようと苦心したか、という「再現の過程」であって、再現そのものではなかったのではないかと。もう少し本の題名を考えてほしかった。まあ、これはこれで面白いが。
ただ、この本の内容のほとんどが別の本でも読めてしまう。作者はこの主題に絞った通考本はないというし、なるほどそれはそうかも知らんが、ではその分詳しいかというと別にそうでもなく、新しい発見もあまりなく、前に別の本で読んだ内容の復習でしかなかった。
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疑問
p.14「一音節のstrikeを取り入れた日本語のストライクは、……仮名表記すると[ai]で「あい」二字分取って「すとらいく」と五拍……となる。」
p.15「はながさいた……は、五音節として……分析される。「さい」が一音節であるのは[ai]で聞こえのひとかたまりを成しているからである。」
↓
ストライクも一拍では………。
疑問
p.22「……中国文化の影響をどの時代より受けたことによる。」
↓
「この時代」の誤植か?
疑問
p.24「さらにサ行子音はs音ではなくts音つまり「ツァ・ツィ・ツ・ツェ・ツォ」であった……。」
p.27「さtsa しsi す せ……現代語と変わらない発音については……表示しない。」
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え………?ツァツィツツェツォではないのか……しかも江戸まではセではなくシェと発音されたって聞いたことあるが、結局最後まで読んでもでてこなかった。漢字の話もう少しけずってそうゆうところ話してほしかったな。
疑問
p.46「イ列音は、同一語根内にオ列甲乙音とも共存する。」
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イ列音にも甲乙の別ありって説明してたのに、なんでここにきてイ列音で一括り?
疑問
p.80「十世紀当時、仮名遣いの修得という面倒な稽古などなく、……」
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変体仮名のオンパレードの時代にあってそれほど容易に修得できたか否か。
疑問
p.128「上代語の母音体系が崩れた際……、ヤ行「延」とア行「衣」の区別が消失した際にも仮名遣いの問題を引き起こさなかった。……一音多字の万葉仮名では、綴り方の成立はない。……語の綴りに安定的な字順が存在するという認識は、一音に対して一字に種類が絞られた平仮名によって成り立つのである。」
↓
万葉仮名にもルールあるてゆうてましたやん……。そのルールが崩れてない理由を解かな無意味やん。
疑問
p.173「如是我聞 (にょぜがもん) 一時仏在 (いちじぶつざい) 舎衛国 (しゃえいこく) 〜という呉音読みに慣れきった耳には、(じょしがぶん いっしふっさい しゃえけき) 〜という漢音読みの読経音��は違和感が伴う。」
↓
舎衛国 (しゃえけき)、読みは正しいらしいが、ケキは漢音なのかという疑問。ここで紹介すると混乱しかうまない。まして、辞書にも登録されていないような音。
疑問
p.176「……三内入声音について古代において漢字音を習いたての日本人は、日本語に存在しない子音終わりの音節を忠実に発音しようとした。その痕跡が各地の地名表記にのこっている。」
↓
佐伯 (さへき)、葛飾 (かつしか)、甲賀 (かふか) とか挙げてるけど、あたかもこれらの地名が漢語由来かのように読めてしまう。少なくとも甲賀 (こうが) は鹿深 (かふか) という語源が忘れ去られ、ハ行転呼がおこり、カウカを経てコウカ、コウガになったときいたことがある。佐伯 (さへき) は障ふ (さ-ふ) の連用形に城 (き) でサヘキ。葛飾は知らんが、辞書には、昔はカヅシカと読んだとある。どれも入声とは関係ない。
まあ、そのあとに「充当した」って書いてあるからわかるでしょってことかも知らんが。
疑問
p.184「日本人の英語下手の原因に発音のまずさが挙げられる。……私の経験では韓国人や中国人は発音が上手である。」
↓
そんなことないですよー。それはたまたま接した中韓人が教養あったか、語学に向上心もっていただけで、地方にいけば中国訛り、韓国訛りの強い人などいくらでもいますよー。もっといえばインドも訛りあるし、さらにヨーロッパ人でも訛りはありますよー。案外ステレオタイプな筆者の思想が垣間みれた。
ただ蛇足ながら、日本人の英語下手は能力とか言語習慣ではなく周りの目を気にしてわざとカタカナ読みするからではないかと思う。そうでなければみな一様に英語下手でないとおかしいが、現実はそうではない。
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著者のユーモアのセンスに助けられた一冊。信書にするには少し内容が濃すぎると思った。
言語学の知見がないと読み進めるのは困難かと思われる。
改めて、中国語及び中国文化の影響の大きさに驚かされた。
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新書にしては歯ごたえがありましたが、学びが多くたいへん面白く読みました。学術的な記述が多く寝落ちに持ってこい(笑)なのですが、時々顔を出すぷっと吹き出すような言い回しとのキャップがよかったです。
副題にある「てふてふ」から「ちょうちょう」へ、というのは「てふてふ」と書いて「ちょうちょう」と読むものだと思っていたのですが、昔はそのまま「てふてふ」と発音していた、というのを初めて知りました。では、どうして「てふてふ」が「ちょうちょう」になったのか。この本を読めばわかります。
私たちが日本人として当たり前に使っている平仮名・片仮名、漢字の音読み、訓読み、あいうえおの「五十音」などなど、知らなかったことだらけで、驚きの連続でした。人に話したくなるけど、うーん、難しい!日本人として日本語を大切にしたくなる内容でした。日本語がもっと好きになりました。