「青磁のひと」再び
2024/10/28 07:38
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小田部雄次の「李方子」で「荒唐無稽なフィクションともいえない迫力がある」と101ページに丸々1ページ引用されている赤瀬川隼の「青磁のひと」の二番煎じ。結局、方子女王の人生を小説化しようとすると張赫宙の「秘苑の花」紛いな作品になってしまうようだ。ところで張赫宙は作者が忌み嫌うはずの「親日派」作家ではないのか?おまけに「青磁のひと」が刊行された昭和末と違って「秘苑の花」は新本で買えるので読者は容易に確認出来る。梶山季之の「李朝残影」や「族譜」のように何かに絞って「日帝の朝鮮植民地支配」を批判すればまだいいのだが何もかも書こうとするので詰め込み過ぎかつ駆け足。「李王垠と皇族服」の件は「朝鮮王朝最後の皇太子妃」の著者の本田節子が参照した加瀬英明の「天皇家の戦い」に遡る?のは「朝鮮王朝最後の皇太子妃」の参考文献目録に「天皇家の戦い」があるのでほぼ確実。本田節子は分からなかったにしても高松宮に近かったはずの加瀬英明は「昭和天皇実録」の刊行に合わせて「天皇家の戦い」を「昭和天皇の戦い」として再版した時に何故か「高松宮日記」を参照しなかったらしい。「高松宮日記」は正反対な事を記しているので加瀬英明の創作だろうに作者は「高松宮日記」を読まなかったのか?フジテレビの「虹をかける王妃」じゃあるまいに権藤四郎介の「李王宮秘史」の最初の版にあるように大正末に李王家を辞した高義敬伯爵は昭和9年に故人となっているのに昭和20年まで李王家東京邸に勤務している事にしている。作者のイデオロギー的な立場らしく?「祖国解放戦争」は朝鮮人民軍の南侵だと書けずに曖昧にしている。疑問に思うところは多々あるが林真理子の「李王家の縁談」の方がまだマシだ。
全てに心を打たれました!
2023/08/08 12:48
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本史の裏側とも言うべき物語。主人公・李正子の一途さやどんな状況でも気高さを失わない姿、そして難しい結婚だったからこそ徐々に強さが備わってくる展開…全てに心を打たれました。登場人物たちの没年を調べると比較的最近のことで、彼・彼女たちの後半生と、戦争が遺す永い影響に思いを巡らせています。
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今時古臭い「方子女王は英王李垠とは「政略で嫁いだ」」とか徳恵翁主と宗武志伯爵の描写とかは批判しない。一般的な「北朝鮮」ではなく正式名称の「朝鮮民主主義人民共和国」を使い、「祖国解放戦争」はどちらかが始めたかは曖昧にしている点も同じ。
出て来る描写が種本未消化なのか、どの種本を使ったのかが透けて見えてくる。ここは「英親王李垠伝」だ、「流れのままに」だ、「歳月よ王朝よ」だ、「朝鮮王朝最後の皇太子妃」だ、「朝鮮王公族」だ、という具合に。切り貼り細工のパッチワークを「小説」です、と言われても困る。参考文献目録に出て来ない林真理子の「李王家の縁談」には不満はあるが、ここまで未消化ではない。
問題はハーグで朝鮮人が篠田治策と押し問答したシーン。確かに「歳月よ王朝よ」に出てくるが、ここは張赫宙の「秘苑の花」が元ネタではないか。「秘苑の花」では「ポーランドの田舎」に住んでいる朝鮮人漢方医とあるが、本文から見て張赫宙が趙重九から借りた4冊の本の1冊か彼が持っていたかのどちらからしい可能性が高い篠田治策の「欧州御巡遊随行日記」にはポーランド在住7年にあるので3・1直後に移住したが、明らかにワルシャワの日本大使館に住所を届けていたので篠田が通訳として?金應善大佐を同行して樋口季一郎陸軍武官邸から午後から出かけて行ける範囲なので訪ねた劉という漢方医が出て来る。この人物をモデルにしたらしい朝鮮人の漢方医が薬箱の奥底に入れた建白書は「蟷螂の斧に似たその書が日本側に発見されなかったのは」と「秘苑の花」にあるから、張赫宙の創作である可能性は高い。おそらく張赫宙の創作だと作者は気がついているらしく、建白書の紹介は朝鮮人漢方医個人が書いたものではなく、もう1人のヒロインが出て来る地下組織?らしい他の個所に引っ越している。張赫宙の方が無理がないと思うが。
終戦で朝鮮に帰った「高事務官」について、「天皇の韓国併合」339頁の「表7-2 朝鮮貴族の襲爵状況」を見れば検討がつくはずだが、「高事務官」は昭和9年に故人となって息子が伯爵位を襲爵している。ぺりかん社が復刻した第4刷には原本から収録されていないが、大正15年の純宗薨去に合わせて刊行された権藤四郎介の「李王宮秘史」の手持の第2刷には「高羲敬伯罷む」という短文があるように、昭和2年の英王夫妻の渡欧には関わりようがない。「秘苑の花」で「高事務官」が該当個所には出て来ないのは作者は知っているはずだが、「秘苑の花」とは違うようにとつけ加えたのかも知れないにしろ、薮蛇。フジテレビの「虹をかける王妃」で故人の「高事務官」が戦時中のシーンで出て来たが、また出て来るとは思わなかった。
総花的に日帝の朝鮮支配の罪状と責任を書こうとしているが、駆け足。頁をめくれば年単位で時間が進む。梶山季之の「李朝残影」のように何か特定のテーマに絞って取り上げたら、よかったのでは?
参考文献目録にある「青磁のひと」なる直木賞作家の作品は「秘苑の花」と「動乱の中の王妃」(「流れのままに」)を元にした二次創作物を下敷きにした三次創作物であり、このテーマでは「秘苑の花」を越えるような作品は書けないと思っているが、考えを変える事はなさそうだ。
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「時代が」とは言え、それでは済まされない事実がある。
「そう言う時代だった」かも知れないが、「日本だけじゃあ無い」かも知れないが、それでも赦せない事実が、許してはいけない事実がある。そして、忘れてはいけない事実でもある。
隣国の朝鮮人に、中国人に、他のアジア人に行った「差別、迫害、暴行、惨殺」。
それだけでなく、同じ日本人に対しても「社会主義者」や「共産主義者」そして「自由主義者」にさえも「アカ」と言うレッテルを張って行った「拷問」とそれに伴う「殺害」。
第2次世界大戦が終結して、もうすぐ80年となり、日本ではこれ等の事実が歴史の一部として近代史、現代史の中に埋もれている。
しかし、今でも世界には先進国でさえ「人種差別」があり、紛争地域では「民族差別、迫害、暴行、そして惨殺」が日常的に行われている。
この小説のように戦前、戦中の歴史が書かれている本を読む時、改めてそう言う事実があったことを思い返してみようと思う。今、多くの日本人の生まれる前の出来事とは言え、僅か120~130年くらい前から第2次世界大戦終戦までの、長い人間の歴史から見れば、比較的新しく短い間の出来事なのだから。
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梨本宮方子(なしのもとのみやまさこ)は後の昭和天皇のお妃候補と言われながら、朝鮮李王朝最後の後継者、李垠(イ・ウン)のもとに政略で嫁ぐことになった。
折しも時代は、戦前、戦中、戦後と大激動の中、日朝関係、皇室や朝鮮王朝の在り方の変化の中、自身も跡継ぎの男子を亡くしたり、時代が時代であり、日本と朝鮮と国籍の違いからくる微妙な関係の皇太子を側で支えるという苦悩の毎日である。
最後には、王位もはく奪され何もかも無くしても、力強く、逞しく生きていく。
この話どこかで読んだような・・・?
林真理子の「李王家の縁談」でした。
史実に基づいているので同じ話になるのですが、本編の方は「まさ」というもう一人の女性が出てきて、そちらからも語られるのですが、このまさは、皇太子妃の腹違いの姉妹という設定です。このあたりの事実はわかりませんが、もうひとつ別の展開が繰り広げられます。
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本作品は、時代背景として元号では大正時代、西暦では1910年に朝鮮併合を行ったあとの日本と朝鮮の歴史について世界史を俯瞰しつつ2人の女性の生涯を丁寧に描く。一人の女性は、朝鮮王朝に嫁いだ日本の皇族の方子。日朝融和の象徴としての政略結婚に五里霧中する気持ちの揺れ、何とか夫である李垠を支え、子孫繁栄と家族の安寧を願う生活を丁寧に描写する。一方、もう一人に生活困窮した日本人の少女マサは、基督教信者で朝鮮独立運動を続け、厳しい拷問にも耐えながらも祖国の独立運動に身を投じる男性に恋心を寄せ、夫婦になる。世情や日常生活を丁寧に描きつつ、忍び寄る軍靴、そして帝国日本の敗戦による占領政策により、日本国内で没落していく垠と方子は一子の成長に一縷の望みを託し、生きがいを見いだそうとする。一方のマサは、日本人であることをひた隠しにしながら朝鮮で生き続ける決意を固め、帰らぬ夫を待ち続ける。2人の女性の全く異なる境遇が、最後に一つの線、そして縁としてつながる様は、さすがに著者の真骨頂と言えるだろう。
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梨本宮方子(まさこ)は新聞に載った李王朝の世子である李垠(이은)との婚約の記事を見てその場に座り込んでしまった。何も知らせられずに報道で自分の婚約のことを知るとは。政府は日朝融和のために方子に白羽の矢を立てたのだった。周りから決められ、父母でさえもうそれを拒絶することもできないような立場に立たされてしまっていた。李朝の世子である李垠は十歳から日本に連れてこられ、学習院に入学し、その後陸軍幼年学校、士官学校と職業軍人の道を歩んだ。李垠の父の高宗が亡くなって、二人の結婚式は延期となった。朝鮮側は伝統の三年の喪を要求したが、政府は一年の喪しか認めなかった。そして李垠と結婚した方子は、名実ともに李朝王妃としての立場になった。日本と朝鮮・韓国の間で苦しいこともたくさんあっただろうし…。戦争が終わってからは、日本政府からは掌を返したように支援がなくなり、土地や宝石を売って生活費に充てたという。韓国は当時は李承晩の時代で、李朝の元王を韓国に帰国させることは許されなかった。二つの国の間でどちらにも帰属できない立場に追いやられ、韓国からようやく帰国が認められ、元李王として金銭的支援もされたのは朴正熙の時であったという。そして方子は李垠が亡くなっても日本に帰らず、韓国で孤児や障碍者のための施設を営む事業に邁進したという。この本では、方子の話とは別にマサという名前の日本人の女性が出てくる。マサは方子と同世代で、朝鮮解放運動に従事していた男性を好きになり、朝鮮に渡って苦労をした。方子とマサの二人の女性で当時の日本と朝鮮での出来事を描くことでお話が重層的になった。
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韓国併合の証として李王朝の后となった日本人女性、方子。日本では「朝鮮人に嫁ぐなんて」と陰口を言われ、朝鮮では息子を殺されてしまう。戦争が終わっても祖国に帰ることを許されない夫を常に支え続けた実在の人物の物語。市井の女性「マサ」との代わる代わるの章によって、当時の生活が生き生きと描かれる。
関東大震災の混乱に乗じて朝鮮人殺しが横行していた事実を未だに「嘘だ」と言っている人たちに読んでもらいたいよ。
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張赫宙の「秘苑の花」を引き写したような読後感に加えて色々な本を種本にしているのが透けて見えるような本。方子女王のお墨付きで「流れのままに」を賜った上で伝記小説を描こうとしたが史料不足?故にか、金一勉の「李王垠殿下の生涯」なるものを下敷きにした赤瀬川隼の「青磁のひと」という「先例」があるが、こういうのを「小説」というらしい。たまたま松井玲奈のエッセイの連載が始まった雑誌で最終回が掲載されていたので知ったけれど、王公族を題材にした「小説」でないと本を買わないのだが。作品としては林真理子の「李王家の縁談」の方がマシだ。林真理子は新城道彦から伊都子妃を主人公にしたら?と勧められたそうなのが当たったのかもしれない。
おそらくイデオロギー的に対極にあるはずのフジテレビで放送された「虹をかける王妃」みたいに昭和9年に故人になった高義敬伯爵がゾンビのように生きていて昭和20年に解放された朝鮮に帰ったのは呆れた。
作者には不愉快だろうが「親日派作家」の張赫宙の「秘苑の花」以上の作品は誰にも書けないんじゃないか。結局は「秘苑の花」で書かれた内容が流布された「逸話」の元だと思えるくらいだ。
「流れのままに」にある方子女王がソウルで出会った人物を元にしたらしい「梨本宮家に仕えていたが朝鮮人と結婚したマサ」の視点で「日帝による朝鮮支配の実像」や作者のイデオロギー故に?人民軍の南侵を曖昧にした朝鮮戦争を描こうとしているようだが、頁をめくる度に年が飛びような駆け足で全て網羅する必要があるのか?張赫宙が「秘苑の花」を書いた時に創作したのがほぼ確実な「薬箱の下に隠した建白書」の逸話を仰々しくユーラシア規模の「独立運動家の組織」の企てに風呂敷を広げているので却って「それだけ?」な感じがする。ちなみに赤瀬川隼の「青磁のひと」は同じ個所を「秘苑の花」を元に金一勉が創作した「李王垠殿下の生涯」の描写を引き写して「日帝に屈服した臆病な親日派」と英王李垠を描いて?いたので、実際には「秘苑の花」を読んでいないのだろうか?梶山季之の「李朝残影」のように何か一つに絞って題材にしたらまだマシだったかもしれない。
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戦前・戦中・戦後の日本と朝鮮半島を舞台に、皇族から李王家に政略で嫁いだ「王朝最後の皇太子妃」李方子と朝鮮半島から来た独立運動家と恋に落ちた「根なし草」の女・マサの2人の女性の生涯を描く長編小説。
まさに大河小説という感じで、主人公2人の愛を貫いた壮絶な人生に思いをいたし、読み終えた後の余韻がすごかった。
これはあくまで小説であり、史実そのものではないが、戦前・戦中・戦後の日本と朝鮮半島を巡る歴史のリアルをかなり忠実に映し出しているように感じた。
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二人の人物を描いたことで、面白みが増した。庶民の暮らし、辛い…
最後、韓国で夫婦二人で幸せになってたかと思ってたけど、ほぼ意識のないまま帰国したんだね。方子さまは、自分で幸せの道をひらいた人なんだ。
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最後の朝鮮王の妻の方子の物語。
林真理子の「李王家の縁談」がタイトルとは違い、方子の母の伊都子視点の物語だったのに対して、本作は方子視点であるところはよかったものの、民間視点の物語として「マサ」の話を交互に挟み込んだため、どっちつかずの物語になってしまった感じでもったいなかった。
方子とマサの話は無理に一つの小説にせず、別々の物語若しくは方子の方を正編、マサの方を民間視点での補完続編みたいにしておけばもっとまとまりがよかったと思いました。
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フィクションだとしても史実を元に描かれているのだから、こんな人がいたのだととても立体的に心に刻まれた。
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出版社(朝日新聞出版)のページ
https://publications.asahi.com/product/24137.html
内容紹介、立ち読み
<著者は語る>歴史に隠れた哀歓 『李(すもも)の花は散っても』 作家・深沢潮さん(56) (「東京新聞」20230604)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/254354
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"自分で道を選べない"の重さが桁違いだった方々…
皇族という、国を背負う一員だったはずが、数々の戦争によってかわってしまう。
ただ最後は自分の道をしっかりと掴まれた。
史実が元のお話故に、救いがない箇所も多いが、だからこそ没入して読んでしまった。
フィクション部分も上手く絡んで、よりいろんな立場の人から見たその時代を感じられた。
この間パレスチナ問題について学んだばかりで、韓国との関係は余計に考えてしまった。
島根県出身の自分としては竹島問題が気になるところではあるが、過去に韓国にした仕打ちはなかなか…
正直日本を嫌う人の事も否定できないなと思ってしまう。
戦争で得たものは脆いし、今まで大事にしていたものを急に奪うなど、人々の気持ちに寄り添わないなんて、それはうまくいかないだろうなとも思ってしまう。
戦後皇族ではなくなった方について思いを馳せたことはなかったが、考えるきっかけになった。