紙の本
まちがえる ゆえに脳って 素晴らしい
2024/04/08 21:52
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投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
脳はコンピュータではないし、一般に流通している説より複雑に動いている。本書では、2023年4月の刊行時点において、脳についてわかっていることを説明した本である(タイトルから想起されるような、「脳は間違える」という内容だけではない)。
2.評価
(1)脳について興味のある人であれば面白く読める本である。人間の脳は機械のように正確ではないが、それゆえに機械にはないメリットがあるという内容に励まされた。以前新井紀子が「シンギュラリティは起こらない」という趣旨のことを言っていた時は、(何言っているのだろう)と思ったが、本書を読むと、脳とAIは別物だと理解できるので、新井の見解は一理あると考え直した。
(2)ただ、以下の2点で1点減点して4点とする。
ア.たぶん、第1章は退屈するだろう(筆者のみの経験であってほしいが)。そこは我慢が必要か。
イ.本書においては、ゲーム脳(p.188)については否定的だが、スマホ脳(p.161の内容)については肯定的である。しかし、本書だけではよく分からないし、「ゲーム脳」のゲームもスマートフォンもモニターを通してやるものだから、本当に違いがあるのかがよく分からない(研究方法は違ったかもしれないが、本書で言及はなかった)。
紙の本
未知の部分が多い脳
2024/01/07 05:57
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投稿者:ME - この投稿者のレビュー一覧を見る
脳は未知の部分が多く、すばらしい器官ということが分かりやすく書かれていた。AIとも異なり、まちがえるから進歩があるというメッセージが印象深かった。
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ほんのちょっとの違いで購入するかどうかの行動が変わる。最初に書店で手にして、興味は持ったが、まあいいか、と手を離した。1ヶ月経って、ほかの著者の脳科学の本を購入しようと思った。そして、それならば、こちらも読もうと思った次第である。これもまた脳の働き。誠におもしろい。まあ、近々、保護者会があり、しゃべるネタが欲しかったということもある。教育に関わるネタという意味では、本筋ではないのだが、著者が京大で講義していたときには、質問などほとんどなかったが、おそらく同志社での講義のあとはいろいろと質問や意見を言いに来る学生がいたという件。受験勉強一辺倒で来た学生ではないからだろうとの見解。内部進学の学生には大いにありうることだ。まあひょっとすると、その中でも特に、同志社国際の学生だったかもしれない。自由奔放なわけだ。最近はどうもみな丸くなってしまったという話も聞くが。さて、本筋にもどると、最終章、最後に出て来る文章が全てを語っているように思う。「脳の機能は、多様な部位、多様なニューロン、多様な神経伝達物質、そして多様な遺伝子が相互作用しながら働くアンサンブルによって実現されている。」したがって安易に分類したり、安易に特定の部位、特定の化学物質の働きを決めてしまったりはできないということ。脳に関わる病気や障害の治療や予防には役立てればよいが、神経経済学なんて言って、それで金儲けしようなんていう輩には要注意ということだろう。しかし、水頭症の脳の写真を見ると、よくまたこれで普通の生活が送れるものだと、あらためて脳の可塑性というのか、すごさを味わった気がする。さらにプラセボ効果の話とかもメチャクチャおもしろい。脳は本当に分からないことだらけで、だからこそおもしろい。それと、連立方程式の問題、僕もふと間違ってしまった。みかん1個5円は安すぎる! 10円でも十分安いけれど。
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脳の最新の知見を平易に解説する本書。専門用語もあり読むのは少し我慢が要りますが!脳の神秘に触れられます。脳の情報伝達が確率的であり、間違いながら働くことでさまざまな可能性が担保されていること、AIとは根本的に違うことを解説。今でもなお脳はわからないことだらけであり、脳に関する迷信をことごとく喝破する様は小気味良さを覚えました。脳の持つ可能性に期待しつつ、読書を続けますかね。
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脳内の情報伝達はニューロンからニューロンへシナプスを通してするが、それが確率的でまちがいも多く発生することから「創造性」につながるのでは、ということから始めて、脳の不思議さを解説している。終章では、脳には誤解や迷信が多く「右脳・左脳」「男脳・女脳」についても未解明という。研究者についての批判もあり、よくいわれる「近い将来AIが意識をもつ」という意見とは逆の姿勢で、学者間の意見の相違を知ることができた。
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いつも利用している図書館の新着本リストで目についた本です。
“脳科学”関係の本は久しぶりです。従来の脳科学の成果に対し冷静な評価を加えた論考のようで、興味をもって手に取ってみました。
本書を読み通しての感想ですが、もちろん私はこういった分野は全くのど素人なので、著者が語る脳科学の現実の姿は、期待どおり興味深い気づきのオンパレードでとても刺激的でした。
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AI持ち上げの批判がすごくわかりやすかった。結構わかっていないのに比喩で何とかするのは認識法としてわかりやすいからであろう。もうちょっと丁寧にやってね、というところか。実用化できそうなところが結構危うい・怪しいという話は読みごたえがある。
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最後の迷信を超えて、というのが最も面白い。今まで説明される脳の局在説が間違いというのが多くの実例とともに説明されている。水頭症や強度の転換で脳を切除されたか脳が委縮した状態でも正常に生活ができているというものも説明されている。また最も説得力が大きいものは、運動や何かをしているときには脳の一部部が強く働いているが、逆に脳のある部分が血流が多く流れいるかといって何をしているかはわからない、ということである。
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やや専門的すぎ、一般人には理解しにくい箇所があったが、脳がいかにまだ分からないところが多いか、また次のように巷で言われていることが真実でないか、と言うことが知り得た。
具体的で本質的な疑問
・自ら発火できないニューロンがつながりつくられている脳が、どうして自発的に活動できるのか?
・ニューロンは集団が同期発火することで信号を伝えているが、同期させているものは何か?
・脳内の情報はどのような活動や状態で存在しているのか?
・脳の信号伝達に基づく情報処理とは、具体的にどのような活動で行われているか?
など。
認識を新たにしたこと
・'16年の米国の死因第3位は年間25万人の医療ミス(人間は間違える。システムに原因と対策を求めることが必要)
・カフェインは夜間の覚醒度が上がり、作業しているときの注意力と集中力が向上し、作業ミスが減少し、記憶課題の成績が上がり、スポーツなどの有酸素運動の能力も向上する。これらの作用に必要なカフェインの量は50〜150mg(コーヒー1杯か2杯分)程度であり、それ以上増やしてもさらなる効果は期待できない。
また、脳が使えるエネルギー源はブドウ糖であるため、糖類とカフェインの同時摂取が一番効率が良い。
口から摂取され血中に入ったカフェインは脳内に運ばれ、ニューロン間の信号伝達を抑制する物質の作用を遮断し、促進する物質の量を増やすことで、脳の広い範囲を興奮させる。しかしこの興奮作用は、覚醒剤や麻薬ほど強力ではないが、耐性や依存性を生じさせることもある。また大量のカフェイン摂取は、不安、過敏、イライラなどの精神的な緊張を高めることもわかっており、摂取を止めた後の離脱症状として、眠気、意欲減退、注意・集中力の低下、頭痛などが現れることもある。
さらに、一気に大量を摂取すると、急激な血圧上昇や不整脈などが生じ、最悪の場合、死亡することもあるという。欧州食品安全機関(EFSA)によると、無難なカフェイン摂取量は1日当たり400mg未満(コーヒー5杯分ほど)、1回当たり200ミリグラム未満。(個人差あり)
・人間の脳はコンピューターに比べると、その処理能力の観点ではかなり劣る。しかも間違える。ただ間違えることで創造か生まれる。また、一つ一つの能力はコンピューターに劣るとしても、総合力に長ける。
・宇宙に長期滞在した飛行士の脳は、数ヶ月間寝たきりになった時と同じ程度の、脳に萎縮が見られる。ただリハビリにより回復する。
・脳の活動が心を生んでいる。
・偽薬の効果は、パーキンソン病の薬や外科的手術、更に高山病にかかった時の酸素に見せたただの空気でも確認出来ている例がある。
・AIに誤認もあるが、膨大なデータを膨大な計算で処理されている結果の産物であるため、人が追えるものではない。
・特に成長期の子どもは眼球運動がまだ不安定な時期でもあるため、現実の物理法則に反する動きをVRで何度も体験すると、眼球を制御する神経回路に支障をきたす可能性がある。さらに、VRを長時間にわたり経験すると、衝動性を抑える抑制機能が低下し、!Rで見た光景や経験を現実であったかのように混同することも起こるという。
・左脳は言語���論理に関わり、右脳は感性や視空間認識に関わると言われ、各脳を鍛えるビジネスまであるが、そんな単純なものではない。
・前頭葉―高次機能、頭頂葉―空間認知、扁桃体―情動制御というように、特定の脳部位と特定の機能を一対一で対応させることは、単純すぎて信頼性に欠ける。
またどの脳部位に性差があるかについては、研究によって異なっている。
・脳は10%(ものによっては5%とか20%)しか使われていないと言うのも迷信。
・聴覚野や視覚野などの感覚野は、互換性を持つ等、どの部位も様々な機能を持つ多能性を備えている。
・脳のどの部分が活発に働いているか、脳を取り出して明るくハイライトさせるイメージ写真や図があるが、これは加工したもので、実際血流が増えたことが明確に分かるような差違はない。
なるほど。
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脳はいいかげん?AIが発達すると人間の脳のようになるという神話がある。今のAIは、脳の神経回路を模したニューロネットワークを基盤にしているからと。この本を読むと、脳はデジタル回路でできたニューロネットワークのようではなく、もっともっと複雑で、また解明されていない仕組みでできているという。ニューロンがシナプス結合で信号を次のニューロンにつないでいるが、デジタル回路のように’1’がきたらそれが次に伝わるわけではない。ニューロンが発火するのは確率的だ。それも何も信号が来ていない時でも勝手に発火してるし、信号が来ても発火しないときもある。確実に発火するのはたくさんのニューロンが一斉に発火している同時発火のときだそうだ。だから人間が間違えるのも当たり前だという。コンピュータじゃないんだから。
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最近、人工知能についての本を読んでいる。
ニューラル・ネットワークなど、人間の脳がモデルになっているとの説明も見かける。
そこで、人間の脳はどうなのか、気になって併せて読んでみた。
著者はニューロンの働きを調査してきた人とのこと。
40年にわたる研究の成果を、他の研究者の成果も交えながら解説していく。
驚いたのは、人間の脳についての研究は進んだとはいえ、わかっていないことがまだ多いということだ。
同じ刺激を与えても、同じニューロンが反応し、同じ経路をたどって伝わっていくとは限らない。
ニューロン間の伝達は「確率的」なものなのだそうだ。
ニューロンは集団で発火し、リズミカルなゆらぎとして現れる。
そのようにして複雑につながりながら、機能を果たしているということのようだ。
だから、脳の一部分に障害がある人も、回復することがあるし、一方では局所化できないからアルツハイマーや精神病の薬を治療する薬の開発が難しい。
アルツハイマーの治療薬がアメリカで認可されたとかニュースで聞いた気がするが、まだまだそう簡単にはいかないらしい。
面白く思ったのは、脳を研究するほどに、「心」の存在がクローズアップされること。
プラセボ効果は、人間の意志などの「心」が介在することで、脳の働きもそのように制御されて実現する。
本書を読んでいると、人工知能は体を持たず、感覚がないわけだが、心もないということなので、発達するにしても人間の脳とは異なる形になっていくことが思われた。
脳の研究の難しさは、実際の活動に即してデータが取れないことにある。
たしかに生きているヒトの頭蓋骨を開いて測定するわけにはいかない。
研究者は様々な工夫を重ねて現在に至るのだが、一方でさまざまな単純化や迷信も生まれやすい。
本書の最後の方は、世間の脳への「迷信」が取り上げられ、反論されていく。
取り上げられるものに、こんなものがあった。
・右脳と左脳で働きが異なる
・脳に性差がある(男性脳、女性脳)
・脳は10%くらいしか働いていない
・ゲーム脳
・特定の栄養素(カルシウムなど)が不足すると暴力的になる
ああ、どれも聞いたなあ、という内容。
筆者は専門家が知見を単純化して世に広げることの責任を厳しく指摘する。
私たち一般の読者も、リテラシーを高めなくては。
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脳についての最新の研究をわかりやすく述べている。人は間違えるものであるが、間違えるからこそ新たなアイデアが生まれるのだ。
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脳は、非常にアナログな動作をする器官である。人の脳には1000億のニューロンがあるといわれている。しかもひとつのニューロンに数千のシナプスがあり、そこでは非常に不安定で確率的な信号伝達が行われている。電気信号を受け取る樹状突起上では信号の逆方向転換が生じ、軸索を覆うミエリンの変化による信号伝達速度の調整が行われている。更にはシナプスを介さない細胞外スペースにおける神経修飾物質なども脳の動作に影響を与えている。
また、脳の機能は部位ごとに局在しているわけではない。同じ行動、記憶、感覚などが常に同じニューロンの発火から生じるわけではなく、同じニューロンが発火しても常に同じ行動、記憶、感覚が生じるわけでもない。こうした仕組みを持つ脳は、AIなどのニューラルネットワークとは根本的に作りが異なる。このような要素を持つ脳はよく間違え、ミスをする。一方、可塑性という大きな特徴を持っており、部分的な損傷を受けても影響を受けなかったり、大きな損傷を受けても回復したりする。
このようなことを知ることができると、安心する。日常生活で私は間違えていることばかりだが、私がポンコツなのではなく、そもそも脳がそのような性質を持っているのだと言い聞かせることができる。また、出来が悪いなりにも努力することにより何とかなるものだとも思えるようになる。生成系AIの時代が到来したが、慌てずに腰を落ち着けてその時代に対応しようという気持ちが湧いてくる。一読してよかったと思える本。
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錯視のような身近な「まちがえ」の話かと思ったが骨太な内容。
脳機能の再現をAIがなし得るかという積年の議論は、西垣通氏のような情報学者からの反駁も興味を惹かれたが
神経科学者からの、そもそも脳機能の未知性からの論拠もなるほどと思わせられる。
実地的な検証の必要性と難解さ。それを解き明かすための科学的検証のあり方多様であり、一筋縄ではいかない生物の深淵を覗く道程がやはりまだはるか先まで続くことを示唆しているのだろう。
一方で機械的な生物理解からは考えにくい実例も面白い。
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脳は、コンピュータと比べると、不完全で不確かな計算装置であると同時に、極めて複雑で多様な作用を持っている。だから、間違うとともに創造的な閃きを生むし、脳の一部が損傷したり全体が萎縮したりしても機能を代替して通常と同じように機能する柔軟さを持っている。
こうした極めて複雑で多様で可塑性の高い脳について、単独の部位や神経伝達物質や遺伝子が何らかの機能に対応したり何らかの問題の原因として単独犯になるという、わかりやすいが誤った説明が用いられやすいが、複雑な相互作用や柔軟性の仕組みを解き明かした時、初めて脳を解明できたと言えるのであろう。そして、そう言える日はまだまだ遠い。