- 販売開始日: 2023/08/01
- 出版社: 大阪大学出版会
- ISBN:978-4-87259-756-1
市民のための歴史学
著者 桃木 至朗(著)
「歴史」は、”動かない過去”を暗記するだけの、役に立たない科目なのか?歴史学は、”稼げない”学問なのか?歴史とは何か。歴史を学ぶにはどうしたらよいのか。歴史を学ぶ意味は何...
市民のための歴史学
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商品説明
「歴史」は、”動かない過去”を暗記するだけの、役に立たない科目なのか?歴史学は、”稼げない”学問なのか?
歴史とは何か。歴史を学ぶにはどうしたらよいのか。歴史を学ぶ意味は何なのか。こうした問いに応えられる大人は、どれくらいいるだろうか。大阪大学史学系は、シルクロード史、東南アジア・海域アジア史、近現代グローバルヒストリーなど、定説や教科書記述に囚われず、地域の生活感覚に根ざした視点で歴史研究を推進し、高校教員と連携した「日本史を含んだ世界史」など歴史教育の刷新にも取り組むことで、国内外から注目を浴びてきた。本書では、こうした先進的な研究・教育を踏まえて、高校・大学の新しい教科書の背景にあるような歴史学の考え方や動向を理解し、歴史学の意味を再考する。そして、現代の諸課題につながるテーマに向き合い、眼前の世界や常識に縛られない批判的精神をめざすための素養を身に着ける。大好評『市民のための世界史』に次ぐ、今を生きるための歴史学入門。
●本書の特色
・「課題」と「資料」
古い知識・考え方の問題点や、新しい歴史学の要点・面白さに関わる「課題」や「資料」を足がかりにして、ヨーロッパ中心史観、国民国家史観、男性中心史観といった従来の歴史学・歴史教育を超えた歴史学を示す。「歴史を学ぶこと」に関心を持つ読者に新たな視点をもたらすだろう。例えば、「鎌倉幕府はいつできたのか?」。教科書で覚えた「いい国(1192)つくる」だけでなく、1183、1185年などの説もある。実はこれは、「何をもって幕府の成立と考えるか」という定義の問題であり、5W1Hを再考する問いなのである。
・「歴史の公式」
歴史の基本概念のリストや、歴史学の基礎的な対象・考え方、実際の歴史に広くみられるパターンを「歴史の公式」としてまとめる。歴史学の基本的な性格を押さえたうえで、新しい方法や世界史像を学び、汎用的な歴史的思考力を身に着けることができる。例えば、「内政がうまくいかない為政者は、外交や対外戦争でポイントを稼ごうとする」「戦争は勝った方が一方的に得をするとは限らない」など、歴史学の概念・論理から歴史の展開まで、まさに今を生きる我々が歴史を学ぶことの意義を実感できるだろう。
目次
- 序章 現代世界の中の歴史学
- 1. 現代世界の激動と歴史をめぐる戸惑い
- 2. 歴史学入門(史学概論)の内容と役割
- 第1章 歴史学はなにをどう問題にしてきたか、こなかったか
- 1. 歴史学の基本視角と対象
- 2. 日本の歴史学の位置と課題
- 第2章 史料(資料・史資料)とはなにか
- 1. 史料(資料・史資料)とその種類
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歴史を学ぶ意味とは、歴史を学ぶには。歴史学の考え方を理解し、現代の諸課題に対する批判的思考力を身に着ける。今を生きるための歴史学入門。
2023/04/26 17:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「歴史学は役に立たない学問なのか?」著者はこの問いに対して、「歴史学はおもしろい」と全力で反論する。高校や大学で未来の国家主権の担い手である生徒・学生を「市民」として育成することはむしろ社会の役に立つ、と主張する。本書では、学生と教員に対し歴史学とは何か、歴史学が扱う領域や分野にはどのようなものがあるのかを可能な限りまとめている。1 人の研究者がここまで扱うことができるのか、と思うほど広い分野を取り上げ、これまでのすぐれた研究成果だけではなく、最新の研究動向までも11のジャンルに渡ってまとめている。
本書の大きな特徴は、109個にも及ぶ「歴史の公式」と章ごとに「課題」が掲載されている点である。著者は複雑で難解な現代社会を理解し、その課題を解決するための1 つの手段として歴史学は役に立つことを一つひとつの分野について説明していく。各章の始まりに「公式」を配置し、歴史学の基礎概念や基本的な考え方を学び、汎用的な歴史的思考力を身につける訓練を繰り返すことを求める。その訓練が章のなかに挿入された「課題」や「資料」である。著者はこれらに取り組むために、歴史学の論点だけではなく、論点を深めるための指針や新しい切り口も提供する。読者は「公式」を理解し、「課題」に取り組むことを通じて著者と対話し、著者からの問いかけに対して答えを考え、さらに問いに対する自分自身の考えを深める自問自答を繰り返すようになる。こうして読者は著者との絶え間ない対話を通して、歴史学のおもしろさと重要性を理解することが可能となる。著者からの問いかけは決して上から目線などではなく、むしろ読者へのエールであり、「公式」や「課題」に取り組む読者にどこまでも優しく、そして希望に満ちあふれている。
最後に、著者がめざす「市民」には、多数派の悪意のない無神経が少数派を苦しめないことが求められている。肝に銘ずべき指摘である。多元的民主主義を実現していくために何が必要なのかを改めて認識させてくれる良書である。