- 販売開始日: 2023/10/18
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-355241-3
吉村昭と津村節子―波瀾万丈おしどり夫婦―
著者 谷口桂子
「結婚したら小説が書けなくなる」。プロポーズをいなす津村を吉村は何度もかき口説いた。「書けなくなるかどうか、試しにしてみてはどうか」。そして始まった二人の人生は、予想外の...
吉村昭と津村節子―波瀾万丈おしどり夫婦―
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商品説明
「結婚したら小説が書けなくなる」。プロポーズをいなす津村を吉村は何度もかき口説いた。「書けなくなるかどうか、試しにしてみてはどうか」。そして始まった二人の人生は、予想外の行路を辿っていく。生活のための行商旅。茶碗が飛ぶ食卓。それでも妥協せず日々を積み重ねる二人に、やがて脚光が……。互いを信じ抜いた夫婦の物語。
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まるで浪花節のような夫婦の物語
2023/11/22 16:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「波瀾万丈おしどり夫婦」と副題のついた
谷口桂子さんの『吉村昭と津村節子』という本を紹介しましょう。
吉村昭さんは1927年東京に生れ、何度も芥川賞の候補になるが受賞に至らなかったが、
『星への旅』で太宰治賞を受賞、その後『戦艦武蔵』などの記録文学を確立し、
多くの読者を持つ作家。2006年に79歳で逝去
津村節子さんは1928年福井に生れ、学生時代から創作活動に熱心で
吉村との結婚の際には執筆の継続を条件にしたほど。
1965年に『玩具』で芥川賞を受賞。その後も旺盛に作品を発表し続け、
吉村の死後は彼とも思い出をいくつかの文章として発表している。
「夫婦で小説を書くのは地獄」とまで言われた小説家夫婦の、
これはとてもユニークな夫婦評伝である。
「ここで死にましょうか」、なんとも衝撃的な書き出しで始まるこの評伝は、
二人が結婚して間もなく、冬の北海道で行商をしている姿を描きだす。
きちんとした仕事につかず、書くこともままならない吉村はこの時27歳、
そんな吉村の熱烈な求婚に押し切られた津村は26歳。
この夫婦の始まりは、とても厳しい。
書けないことでイラつく夫は妻を罵倒し、時に手もあげたという。
のちに、「おしどり夫婦」と称賛されることになる夫婦の意外な一面である。
何故吉村はそこまでして書くことに拘ったのか。
もちろん、書きたいという作家魂があったが、書くことで妻や家族を養っていくのだという
男の矜持が強かったようだ。
ただ、谷口さんはこの二人の夫婦ケンカについて、こうも綴っている。
「気持ちをごまかさずにぶつかり合ったからこそ、真のおしどり夫婦になれたのかも」と。
吉村昭にしろ津村節子にしろその作品もまた、気持ちをごまかさない、そんな作品だといえる。