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投稿者:みみりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
額田女王といえば、万葉集が想起される。
「茜指す紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」額田王
「紫の匂へる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我恋ひめやも」大海人皇子
の歌のやり取りにより、大海人皇子(天武天皇)と中大兄皇子(天智天皇)との三角関係が想定され、男性たちに寵愛されつつも時代に翻弄される彼女の人生が描かれる。
ただ彼女は単なる恋多き乙女ではなく、知的で自立した魅力的な女性として描かれている。
紙の本
額田女王
2023/03/05 19:46
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
近代的な文学者とは違い、額田女王は神の声を聞き、一体となってその声を伝えるような巫女的な存在だったのだろう。解説によると、額田女王が巫女的だというのは折口信夫の説だという。
万葉集などに収録されている和歌などから物語を構成しているようで、しかもそれが論理的になっており、面白かった。
紙の本
二人の男に揺らぐ一人の女の数奇な人生
2020/03/29 10:19
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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
約600ページに及ぶ歴史巨編ですが、読み始めるとついつい引き込まれてしまいます。著者の筆致のなせる技だと思います。
大化の改新後から白村江の戦いを経て壬申の乱までの時代の中で中大兄皇子(後の天智天皇)と大海人皇子(後の天武天皇)との中で関わる額田女王が描かれています。参謀役としての中臣鎌足も非常に良い味を出しています。作中の至る所で歌詠みがあり、本書の花添えになっていて叙情感が横溢しています。
各キャラクターの推し量られる心理描写、更には自然描写の美しさとが縫合された歴史小説として読後余韻を大きく感じられるお薦めの一書です。
紙の本
激動の時代を生き抜いた知性ある女性像
2015/12/31 03:36
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投稿者:ところ点 - この投稿者のレビュー一覧を見る
周囲を惑わす絶世の美女というようなイメージもある額田王だが、この小説にあるように、二人の皇子に寵愛されながらも、神に仕える女官であることを第一義とした知性ある女性だったのであろう。百済出兵や近江遷都、壬申の乱など、激動の時代状況も詳しく書かれており、日本史の勉強にもなった。
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額田女王の物語。多分に史実とは違うのだろうが、ドラマティックな展開が楽しめる。オープニングの、暗闇の中ゆったりとした足取りで歩いてくる中大兄皇子が印象的。実際の中大兄皇子は、鎌足の傀儡だったんだろうなと思いつつ、小説内の中大兄皇子は格好よく、ついついミーハー心を刺激されたりして。
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私の今までの額田のイメージは、天智・天武両天皇に愛された恋多き女性。しかし著者が書く少し神がかった神秘的な彼女はとても魅力的だった。。また、額田が天智天皇に行為を寄せていた設定からか、今まで私が感じていた天智天皇の冷徹なイメージが払拭され、とても素敵な印象が残った。却ってやさしく男らしいイメージだった天武天皇のほうが粗野で考えなしな印象を持つほどにwwこの時代は大化の改新、遷都、朝鮮半島出兵、壬申の乱など、様々なことが行なわれた動乱の時代だった。そのため、とても歴史の勉強にもなったし、また1400年近くも前の人々の考え、様子などを知るよいきっかけになった♪
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古典といえば中古文学しか興味なかったわたしが、上代文学好きになるきっかけとなったのがこの井上靖の本。マンガ「天上の虹」からコッチに来る人は多いけど、私の場合は逆でした。
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万葉の時代、宮廷歌人として燦然ときらめく女性がいた。名を額田女王という。史実はあまりない。それゆえ、その和歌から幾篇もの物語が想像されてきた。和歌を材として得るということ。そこには、どんな物語がどんな声が潜んでいるんだろう。こういう素朴な気持ちに応えるには、科学的な歴史の方法でなく、小説や物語の方法がきっと似合うだろう。本著は、その意味で、現代に描かれた歌物語といえる。額田女王の姿が、神に仕える身として、また、中大兄と大海人ふたりの皇子のあいだに置かれた境涯として、一縷の歌が折り重なりながら、浮かび上がってくる。
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額田女王の愛と歌人としての成長を中心に、激動する世の中を描きます。白雉元年の祝典に始まり、新しいことが始まる活気と不安、それをリードする中大兄皇子と大海人皇子の2人に愛される額田女王は巫女としての生き方を貫き、どちらの後宮にも入りません。今や古典的とも言える著作〜改行が少ないので若い子には読みにくいかも?これ以前には古代を描いてこんなにまとまった内容でリアリティのある小説ってあったのでしょうか?
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額田女王を中心として物語があるためか、壬申の乱の部分がものすごく忙しく流れていく記述は少々がっかりではある。
が、基本的に、大化改新で煌びやかなイメージだった、中大兄皇子や中臣鎌足が、かなり苦労して新政をしているのは、意外な部分であった。
古代ロマン、読んでいておもしろかった。
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茜さす紫野行きしめ野行き野守は見ずや君が袖振る
紫のにほえる妹を憎くあらば人妻ゆゑに吾恋ひめやも
(どちらも本文より…というか有名すぎる歌ですね)
これは…久しぶりに文句なしに面白かった。さすがだなぁ…
虚構はたくさん入ってると思うけど、天智と天武と有間皇子とか大友皇子とか、誰が誰だか良くわかっていい。
そして額田が2人の男に愛された単なる女じゃないところが良かった。
結局、どちらの男も彼女を本当の意味で手に入れることは出来なかったのだ。
高市(たけち)皇子と十市皇女は虚構の話かと思ったけれど、きちんと歌が残っているのにはびっくりした。
単なる姉弟愛かもしれないけれど。異母だから十分結婚できただろうしなぁ。
(2009年現在は2人の立場ついて知っているが、当時は知らなかったのでこう思った)
やはり、歴史小説が好きだ。作者は事実を想像で彩るのだもの。
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私が手にとった飛鳥時代もの歴史小説第一号。
伝説の宮廷歌人:額田王の生涯を描いた、壮大な物語です。
私は、額田王の出生地と言われている土地で幼少期を過ごしました。
ちなみに今の実家は天智帝御陵の目と鼻の先。
当時はあまり意識していませんでしたが、飛鳥やそれ以前の遺跡に囲まれ、親しみ、そんな丘や山で遊びました。
年に一度の祭りでも、額田王や大海人皇子等のコスプレ…ならぬ時代行列が町を闊歩します。
そんな土地柄だったせいか、長じてから歴史、ことに飛鳥時代に深く興味をいだき始め、この本も、大好きな井上靖氏の著作と言う事もあり自然と手に取りました。
………が。
どうもしっくりこない。
それが正直な感想でした。
この本の額田王と、私の中の額田王のイメージとがかけ離れていた、と言いましょうか…。
この本に登場する額田王は、かなり神秘的です。スピリチュアルです。
この世の生身の女性と言うよりは、触ってはならない美しい幻のような印象をうけます。
巫女と言う設定なので仕方がないのかもしれませんが。
私は人間臭い、艶のある歌を読む情熱的な一人の女人:額田王が好きなのかも知れません。
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額田王は最も人気のある万葉集の歌人であると、最近、どこかで聞いたので、一度、しっかりと、「あかねさす・・・」の物語を読んでみようと思ったのだが、私の場合、この小説は、すごくわかりやすい歴史の本になった。古代史に入門できたような気がした。
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古代日本の為政者たちが、自らの名声を犠牲にしてまで日本という新しい国家を作ろうとしていたことに感動を覚えた。そこにあるのは権力欲などではなく、新しい国に対する純粋で熱い思い。
額田の中大兄皇子に対する気持ちが切ない。特に、後半の関係と、有名な狩りでの歌にこめられた中大兄皇子に対する本当の想い、そして挽歌がせつなかった。
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額田は人の女ではなく神の女である。
額田が『女』になるまいと自分を律し、それを周囲に気取られまいと凛々しく振る舞う姿は、何よりも『女性』らしい。額田女王が生きた時代は古代史の最大の盛り上がり所と言っても良い「白村江の戦い」と「壬申の乱」で、登場人物たちも錚々たる顔ぶれです。彼らの駆け引きや、決意や苦悩が、一つの主人公でもあります。天智天皇と天武天皇はいがみ合う兄弟で、後に後継者争いで壬申の乱が起きる、なんて数行の中にこんなにもドラマが!なんというロマンチックな!
これから古代史をかじってみる、という方にはキャラクター性の強い、素晴らしく美しいお話ですので、とてもおすすめします。
額田は華のような女性だった。艶やかに咲き、しおれるように、ゆっくりと。