電子書籍
インドカレー屋の話は前フリにすぎない
2024/04/25 09:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:温泉春巻ロールスロイス - この投稿者のレビュー一覧を見る
インドカレー屋の話は前フリにすぎない。日本の食文化史にだけ興味がある人は後半は期待はずれかもしれないが、本書の価値は後半の「カレー屋の子どもたち」についてのルポのほうにある。
紙の本
「インネパ移民」の実態をルポした1冊です。
2024/05/12 22:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
今、国内のどこでも見掛ける「インド人、ネパール人が経営するカレー店」。当書は日本でカレー店を展開する「インネパ移民(インドもしくはネパールから来日した移民」をクローズアップし、著者が実際にお店に足を運んで実態を探ったルポ記です。
様々な視点からインネパ移民を調べ上げて行きます。飄々とした感じの軽めの文面が特徴の、今売れている新書の1つになります。こういう書籍がヒットするのか、と思いながら読み進めました。面白かったです。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
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<目次>
第1章 ネパール人はなぜ日本でカレー屋を開くのか
第2章 「インネパ」の原型をつくったインド人たち
第3章 インドカレー店が急増したワケ
第4章 日本を制覇するカレー移民
第5章 稼げる店のヒミツ
第6章 カレービジネスのダークサイド
第7章 搾取されるネパール人コック
第8章 カレー屋の妻と子どもたち
第9章 カレー移民の里、バグルンを旅する
<内容>
『エスニック街道国道354号線』の著者の、アジア系の日本移民を描く第2弾(なのか?)。確かに、ここ数年(もうちょっと前から)日本のあちこちにカレー屋が増えた。勤務先にも1軒。自宅近くの1軒はすぐ潰れた。また知り合いのインド料理店のオーナー(日本人)が、増えたのはブローカーが斡旋するからだと喝破していた。自分はそのブローカーは日本人だと思っていたが、この本を読むと、ネパール人らしい。
カレー=インドなのだが、こうした雨後の筍のような店は、ほとんどネパール人の経営なので、著者は「インネパ」と呼ぶ。どんどん奥を極めていくと、哀しい現実が次々と浮かび上がる。ただ前著よりは、上滑りな感も…。
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学生時代(今から20数年前)にインド料理店でバイトをし、その後海外に出て30台半ばで帰国した私にはずっとなんとなく抱えていた違和感があった。いつの間にか、インド料理屋はみんなネパールの人がやってるし、メニュー構成が同じ。標準的にはおいしいけど、以前のような発見や意外性が消えておもしろくない。新宿三越脇の地下にあった店も、三越裏の2階にあった店も、消えてしまった。インド料理店のランチタイムといえばビュッフェだったのに、セットメニューだけの店ばかり。安いのはありがたいけど、つまらない…。
その違和感にズバリ答えてくれる本だった。一気に読んだ。
私がかつてハマっていたインド料理はムグライ料理で、つまりインドの人々にとっての外食の味だったこと。三越裏の2階にあった店には確かに「宮廷料理」と書いてあって、ディナータイムは学生がおいそれと入れる料金帯ではなかった。バイト先もこの類だった、ということを認識できた。そこはオーナーがパキスタン人(別に中古車輸出業もやっていたらしい)で、同僚のホール担当君と、広い厨房を1人で回していたコックはインド人だった。ホール担当君は独身だったが、コックさんは国に家族を残して来ている出稼ぎ者だった。ラッシーやチャイの作り方を教わったし、初めてビリヤニという料理を食べたのもバイト先でだった。店のメニューにないその料理は、「お祭りとかお祝い事の時の特別な料理」だと言っていた。今日はインドでは大きなお祭りかなにかなの?と聞いたら、「君がバイトで来る日だからだよ」と言われてものすごく嬉しかった。初めて食べたビリヤニの感動は忘れられない。最近はずいぶんいろんなところで食べられるようになったけど、今でもあの時のビリヤニが一番おいしかったと断言できる。
その後ネパール人コックの流入があって、出稼ぎ大国のネパールからどんどん人がやってきて、独立して増え…。なるほどなるほど、となんどもぶんぶんうなずいた。以前岡山で入ったインド料理店は典型的なインネパで、グリーンカレーやパッタイも出すという「エスニックひとくくり」みたいなタイプ(最近じわっとタイ料理やベトナム料理を出すインネパ店、これまた増えてきていると感じる)だったのだが、これがまあびっくりするほどおいしくなかったのだ。マズいというか味がない。マトンカレーかなにかを食べたと思うのだが、とにかくおいしくなくて驚いた。インネパってまあ標準的なものを出すというイメージだったから。
でも、後半の章を読んで納得した。
筆者は冷静に、客観的に起きていることを観察しているが、その視線には彼らへの純粋な興味と温かさがある。陽があれば闇もある。どこからの移民でも2世は苦労するものだけれど、今まさにその問題にぶつかっているのが大量のネパール人2世なのだと初めて知った。
最近はダルバートが静かにブームだし、スリランカカレーという新勢力もいる。インドで修行した日本人が作る、パレットのように色鮮やかで美しいミールスを出す店や、インドの各地方料理に特化した店も増えてきた。私にとっては嬉しい変化だが、インネパど真ん中のコック、経営者にとっては厳しい流れなのかもしれない。でも、より本流へと移行していくのは当たり前のことのようにも思う。どんどん細分化され、本格化していく。
インネパはやがて、ごくごく一部を除いて淘汰されていくのだろう。それが自然な流れのように思う。少なくとも今のような、どこの駅にも必ず一軒はインネパがある、ような状況はなくなっていく。
その時、適切な教育を受けられなかった2世はどこへ行くのだろう。
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バターチキンカレーにバカでかいナン、オレンジ色のドレッシングがかかったサラダとラッシーで、ランチで1000円切るくらいの価格帯のカレー店。メニューも似てれば、看板や内装も似ている。あれっ?あそこにあったカレー屋が移転してきたのかな、と思ったら、もとのお店もちゃんとある。二号店? にしては店の名前が違う。
こんな現象があちこちで起きている。その謎に迫った本。
似たようなカレー店が増えたのは2000年頃からで、規制緩和でビザがとりやすくなり、ネパール人が出稼ぎ先として日本を目指しはじめた。ネパールの平均月収は1万円。失業率も高く国内にいても仕事はない。キツくても儲かる海外に行こうとする若者が多い。そんなときに渡りに船だったのが、日本でカレー店を営むネパール人たち。日本にある上記のような形態のカレー店のほとんどがネパール人が経営、運営している。理由としてはネパール料理とか言っても日本人に馴染みがないから。カレー店なら日本人にもすぐわかかる。あとは、料理経験のない人でも簡単に作れる(とネパール人は思っている)から。
バブル期に起こったエスニック料理ブームで老舗のカレー店で修行したネパール人たちが、この頃は独立して自分の店を持っていた。そして、そのネパール人たちが、今度は自分の家族や親戚を日本に呼びはじめた。そしてチェーン展開など店舗拡大に伴い人手が足りなくなると、もっとネパールから人を呼び、そのうちブローカー業を商いにするネパール人も出てくる。あとはネズミ算式。あっという間に似たようなカレー店が日本に増えた。なぜ似たような店ばかりなのかというと、失敗したくないから、の一語に尽きるらしい。もはや大手牛丼屋やハンバーガーチェーン並の価格で日本人好みカレーがランチで食えるのだから、それはそれでいいのかもしれない。本格的なカレー店は良い迷惑だろうが、カレー好きな人からすればもはや別物だろうから、そんな影響は受けていないんじゃないかと自分は思う。
インド人ではなくなぜネパール人なのかというと、インド人はカースト制の中で生活してきているので、調理や接客、掃除までするワンオペカレー店では働かないから、ということらしい。料理なら料理しかやらない。掃除は使用人がするもの、という感覚。そもそも日本にくるインド人は教育レベルが違うらしい。ネパール人は国が貧しいので教育に力を入れていない。だから出稼ぎでくるネパール人はキツくても、ブローカーに金をピンハネされても、ネパールにいるよりは良いと、カレー店で働き続けるらしい。
それでも働けるだけ良かったが、入管も、なんだかネパール人たちが、コックの経験も資格もないのに、証書を偽造して店を開いているらしいぞ、と気づきはじめ、近年は入国も在留資格の更新も厳しくしなったらしい。
煽りを受けるのは大人よりこどものほうで、経済的理由で日本語がわからないのに公立校に入ったり、いつ滞在資格が無くなるかもわからないしで不安だらけ。というか不安しかない。
日本のコミュニティに根付こうと努力しているお店はどこも繁盛しているらしい。入国した動機は抜きにして、そういう人たちの家族が日本で暮らしやすいようにする義務は、日本にあるんじゃないかと思う。
個人的な希望として、第2弾で「なぜ横浜中華街に同じような立て看板の食べ放題の店が増えたのか」を取材して欲しい。この著者ならいい記事をかけると思う。
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私のようなアジア・エスニック料理好きからすると実に興味深い本だった。思いがけず土地勘のある名古屋のインネパが深掘りされ、行ったことのある店がバンバン出てくるのでニヤけながら読んだ。
友人や家族とインネパあるあるを言い合ったりして楽しむことはあったが、「それはなぜ?」を本書はとことん追求しており疑問を解決しまくる。執念の取材力だ。
ネパール人の国民性、世界情勢の変遷からインネパが生まれた理由を知ることができ、教育の問題、ネパールの空洞化といった新たな社会問題まで提起されている。
非常に面白いが、読んでると腹が減ってくるのが問題。笑
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https://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO80137000Z10C24A4MY5000
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最近読んだ新書のなかでダントツに面白かった。
読後に改めて自分の住む街を見晴らしてみると、たしかにある、インドネパール系のカレー屋さん。飛び抜けて美味しいカレーお店もあれば、どこかで食べた味と同じだなと感じることもあり、その違和感というか類似性の謎が解けた一冊でした。
この本のすごいところは、インドネパール系のカレー屋さんのルーツから、そこで働く人が日本にやってきた背景や社会情勢、それからカレー移民第二世代の現在の生活までも綿密に書き込んでいて、カレーのように味わい深い、と同時に課題がたくさん煮込まれた書籍になっていること。まさか現地にまで取材に行くとは。タイに暮らしていた経験がある作者さんらしく、グローバルなフットワークの軽さには驚きました。超濃密。
おいしいなぁと思って食べていたカレーが、移民とその市民を迎え入れる日本の問題点も炙り出していて、読後に後をひく“辛さ”。それでいて、読む対象を選ばないバターチキンカレーみたいな親しみやすい文体で、読んで良かったと思えました。
多分、読んでいるほうからして、かなり身近に感じることができる異文化理解のサポート本だと思う。あと単純に、明日はカレーにしよう、と思ってお腹が空いてくるので、ダイエット中の方はご注意を!笑
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稚内、中標津、奄美大島、石垣島などを旅したとき、日本の隅々まで店舗を構えているインドカレー屋さんに驚いた。大都市や地方の県庁所在地なら理解できるが、なんでわざわざ日本に来てこの場所に?と首を傾げた記憶がある。本屋でこの本を発見したとき、その記憶が蘇り、気がついたらレジに向かっていた。
まず「インネパ」と呼ばれているように、経営がネパール人が多いことに驚いた。それすら知らなかった。インネパの縦の歴史、横の広がり、光とダークサイドについて入念な取材に基づいて書かれていて、めちゃくちゃ面白かった。
同じようなメニューの店ばかりがコピペのように増えている理由、「今、〇〇の入管は技能ビザの審査、緩いらしいよ」とか情報交換していること、ネパールには日本で成功したカレー屋の経営者が建てたカレー御殿やホテルが並んでいること、新宿中村屋での出来事などなど、面白い話ばかり。楽しく読めました。
なぜここにインドカレー屋が!?の疑問が解消するだけでなく、来日したネパール人家族が抱える問題にまでアプローチしていて、最終的にはネパールのバグルンに足を運んで取材を重ねている姿勢に脱帽です。
とりあえず近々、新宿「アショカ」六本木「モティ」で老舗の味わいを楽しんできます。
———紹介(公式より)———
【どこにでもある「インドカレー店」からみる移民社会】
いまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。
そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?
どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?
「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか……その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。
おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。
【目次】
はじめに 「ナン、おかわりどうですか?」
第一章 ネパール人はなぜ日本でカレー屋を開くのか
第二章 「インネパ」の原型をつくったインド人たち
第三章 インドカレー店が急増したワケ
第四章 日本を制覇するカレー移民
第五章 稼げる店のヒミツ
第六章 カレービジネスのダークサイド
第七章 搾取されるネパール人コック
第八章 カレー屋の妻と子供たち
第九章 カレー移民の里、バグルンを旅する
おわりに カレー移民はどこへ行くのか
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近所によく行くカレー屋さんがあった。最近、経営者が変わったみたいで、急激に味が悪くなった。その背景を探るヒントを知りたくて手に取った。思っていた以上に深い闇がそこにはあった。
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何でインドカリーのお店のランチはどこも似たようなメニューで、ゴマドレッシングのサラダなのだろうと思っていたが、その疑問に真正面から答えてくれる。
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これが書けるのはこの人ならでは。EISJから入った私からは見えなかった風景がたくさんあった。バルクン、行ってみたいリストに入れよう。
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でかいナンやタンドリーチキンにバターチキンカレーって、何処料理なのか前から気になっていたのだ。出稼ぎネパール人の失敗できない、何としても稼ぐ、という必死さがインドの宮廷料理をファミレス化・ファストフード化させたのだね。スッキリ。
池袋勤務時代、中国人に騙されたり搾取されたりする中国人(主に内モンゴル出身)をよく見たけど、ネパール人同士でもあるんだな…と居た堪れない気分になった。
そしてカレー屋の子供問題については、行政がきっちり状況を把握して制度を整えてほしい。子供が学校などで行き場を失ってしまうのは子供自身のせいじゃないし、このままでは子供だけでなく日本の社会にも悪影響が出てしまう。
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大体どんな街にもあるインネパ系のカレー屋さんにまつわるあれこれの謎に迫るノンフィクション。もともと大学に入るために上京してきてからインドカレーにめちゃくちゃはまって(当時は故郷にはインドカレー店は存在しなかった)、そこからエスニックに傾倒していった過去があったので面白く読めた。
同じようなメニューのお店が日本中に量産されていく仕組み、それを支え利益をすするブローカーや紹介屋の商売はなるほどたくましいと唸らされたが、それに伴うコックたちの借金漬けブラック労働、故郷ネパールの田舎の過疎化、居場所のない子供たちの危機的状況などはあまりに悲惨でカレー店のネパール店員を見る目が変わってしまう。あののんびりした彼らがそんな覚悟と不安の中戦っているなんて、なんにも知らなかった。考えてみれば、故郷と何もかも違う異国の地で身一つで商売に乗り出しているのだから、相当なハングリー精神を持っているのは当たり前のことなのだが。
最近はもっぱら南インド系のさらさらしたカレーばかり食べに行っていたけど、この本を読んでいると久々にこってりしたカレーとチーズナンが食べたくて仕方なくなってしまった。今日のお昼はインネパ系のお店にする。
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バターチキンカレー、ナン、タンドリーチキン、マンゴーラッシー、そしてオレンジ色のドレッシングがかかったサラダ。判で押したように同じメニューを同じ価格帯でランチ提供。一説では日本に4000店舗あるというネパール人がやってるインドカレー屋(俗称インネパ)がなぜこんなにも増えたのかを取材したノンフィクション。言われてみれば自分がよく行くインドカレー屋もこのメニューだし、街中で見る他のインドカレー屋もそっくりだ。前半はその歴史を追っていくミステリーとして楽しめる。歴史の出発点や日本にまだいるレジェンドを訪ねていく過程は読み応え抜群。しかし、後半はブローカーや搾取といった言葉が並んで負の側面を掘り下げていくことに。次からインドカレー屋に行ったときは少し複雑な気持ちになりそう。無知なまま美味しいカレーをただ食ってれば幸せだったのか、やはり現実は知っておくべきなのか。そんなことを考えてしまった。こういう日常的な疑問から意外な地点に着地する跳躍力のある本はやっぱり読んでいて面白い。