先進諸国の身からでた錆
2025/01/01 17:11
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投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、お馴染みのNHKのOB池上彰(I)と外務省OBの佐藤優(S)の対談で構成されている。グローバルサウスとは、アフリカ、中東、アジア、ラテンアメリカの中で新興国や発展途上国と呼ばれてきた国の総称で、国力をつけて存在感を高めてきたため、大いに注目されている。グローバルサウス諸国は、欧米の植民地となっていた過去をもつ国が多いので、いまさら欧米的な価値観(民主主義)を押し付けられたくないという意識が強い。その途上国が独裁的指導者によって成長を始めると、北半球の国々が余計な口出しをする。例えば、「民主主義的であれ」、「自由な言論活動を保障せよ」等々。これが、北と南を分断する背景。急激に発展してきた国々にとって、大事なことは自国の発展。国際連帯という美辞麗句よりは自国第一主義。こうした動きのモデルになっているのが、アメリカのトランプ前大統領の「アメリカ・ファースト」を主張し、国際協調を見向きもしない姿勢。こうした、世界情勢の動向(中東情勢、アジア情勢、ロシアと結びつくアフリカ、アメリカ大統領選)について、取材体験や外交経験を踏まえての二人の識者の対談は、いつもながら興味深い内容満載である。
ただし、イスラエルとハマスの紛争について、Iはガザの悲惨な生活状況を取材で目撃しハマス寄り。対してSは、次のようにイスラエルに同情的。ハマスの攻撃はユダヤ人絶滅を意図している。「我々は全世界に同情されながら死に絶えるよりも、全世界を敵に回してでも戦い生き残る」が、イスラエル国民の総意である。対談で、すべて同意見となる必要はなく、意見が異なる場合、Iが選挙特番で見せるような、もう少し突っ込んだやり取りがあってもよいのではないかと思った。
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【激動する国際情勢を?最強コンビ?が徹底解説】南半球の新興国がGDPの合計で米中を抜き、世界秩序の中心となる日が訪れる。日本はどう備えるか? 米大統領選前に必読の一冊。
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グローバルサウスの現状を知りたく、この本を手に取った。
グローバルサウスは、G7などのグローバルノースへの反抗心はありつつも、自国の利益を優先して、一枚岩になれない(本書にも書いてあるが、グローバルサウスというより、インターナショナルサウスといったところ)と感じた。第三勢力の動きや心理が手にとるように書いてあり、参考になった。
イスラム教について詳しく知らなかったが、戦争のためなら女子供の犠牲は厭わないという教えを知り、怖い宗教だなと感じた。
グローバルサウスのことを頭の片隅に入れず、ずっとアメリカに追従していたら、そのうち台頭するグローバルサウスに国力を突き放されて、国際社会で遅れをとってしまうと感じた。
日本のニュースでは、G7をはじめとした北側諸国寄りの報道しか流れてこないと感じ、日本のメディアの偏向報道に嫌気が差した。自らBRICsなどの情報を知ることが重要だと感じた。
自分ができることは多くはないが、今後できると思ったことは以下の2つ。
•アルジャジーラなど、海外のメディアでニュースを知る
•日本の外遊先を知る(外相がどの国と仲良くしているか)
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池上さん、佐藤さんの対談本は出版されるたびに読んでいます。
タイトルは「グローバルサウス」ですが、基本的にはこのシリーズは世界の「今」起きていることの背景の解説となっており、知的好奇心を刺激されるものとなっています。
いわゆるニュース解説型なので、早めに読むことをお勧めします。
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p37 パナマ運河 船を浮かべたプールごと上げ下げするエレベータ エレベータに入れる水は海水でなく、ガトゥン湖から淡水を引いている。2023年は干ばつで水が足りなくなり通航制限
p54 報道で事実と認識と評価を区別して伝えるのが大切
最も厄介なのは何が真実かの確定です。戦争の最初の犠牲者は真実であるという言葉もあります。
p60 ハマスと一般のパレスチナ人を区別する必要がある
ハマスの幹部の多くが、ガザでなく、安全なカタールで裕福なセレブ生活をしているようです。
p73 ハマスのテロはなぜおきたか?ネタニヤフ政権がパレスチナを追い込みすぎたから
p77 最悪のシナリオ
激怒しているビスボラを、全面戦争を避けたいイランがおそらく背後で止めているはずですが、止められなくなったら、大変です。
最も懸念巣べきは、ビスボラとイスラエル軍との先頭が本格化して、紛争がレバノンにも飛び火すること
核使用のおそれがある
p83 歴史的にみれば、ガザ地区ができたのは、第一次中東戦争でエジプトが占領したから
p110 中国の経済力が半分に落ちたとしても、中国が強国であることには変わりがない。それにバブルが弾ければ、実体経済に近いところで産業の再編が行われるでしょう。不動産業界で働いていた優秀な人材が、軍産複合体やIT分野へ転じることも起こり得る。バブルの崩壊がむしろ中国の強靭化につながる可能性がある
p113 朝鮮戦争が再開されれば、日本はただちにこの7基地を国連軍に提供しなければなりません。
キャンプ座間、横須賀海軍施設、佐世保海軍施設、横田飛行場、嘉手納飛行場、普天間飛行場、ホワイト・ビーチ地区
すると北朝鮮がこの7つの基地を攻撃するのは合法です
p121 日本の外務省の課題はインドネシア語のキャリア職員をつくること
インドネシア語は、オランダから独立市た雄時につくられた人工的な言語
p152 中国の支援は借款。インフラが整っても借金がのこる
ロシアは現物取引で、アフリカは資源を提供して、それに対して建物を作る。インフラ整備にしても借金をさせないことが、ロシアの売り
p198 ドルが基軸通貨でなくなったら、金本位制にもどるしかない
佐渡金山を掘り返す
今鹿児島 、伊佐市の菱刈鉱山 1983から開発がはじまる
p218 ヘーゲル 法の哲学の序説 ミネルバのフクロウは夕暮れをまって飛び立つ。・フクロウは知恵の象徴。ある時代の全体像は、その時代の終焉期になってようやくみえてくるという現実をヘーゲルはこのように表現した。
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手嶋龍一氏ほどではないが、池上彰氏と知の巨人・佐藤氏との対談もいつも示唆に富んだものだ。本対談はグローバルサウスを語る過程で、全世界を俯瞰するように過去・現在・未来を語ったもので深みは薄いが、全体把握には丁度良い。
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グローバルサウスとは西洋民主主義に対する対抗概念。冷戦後世界に広まった西洋的民主主義と自由主義の概念は急速に力を失いつつある。
今世界は大きく変化しており、今までの常識で測ると情勢を読み誤る。
・グローバルサウスの特徴として、国際的協調より自国第一主義、民主主義より権威主義でも強力なリーダーシップ。
・G7のGDP比率1986年68%が2022年には42%に低下。グローバルサウスの存在感が高まっている。
・ウクライナに対して明らかに侵略行為を行ったロシアへの非難決議に中国、インドを初めアジア、アフリカ、南米の多くの国が棄権した。
アメリカ、ヨーロッパ先進国に対して明らかに距離を取る動き。
・古代ギリシャでも国の統治について、初めは王様が国を治めるが堕落していく、すると次にモラルの高い貴族が政治を握る。やがて貴族も腐敗して寡頭政治になる。次は民衆の力がそれを倒して民主制が出来るが、いずれ衆愚政治となる。そして優れた王様が出てくる。
・人類は進歩しているという思い込みは浅はかだと思い知らされる。
・トランプが勝ってもバイデンが勝ってもこの流れは止められない。今後も世界で今まででは考えられなかった事は起こり続けると思った方が良い。
日本は、そして自分はどうすべきか真剣に考えたい。
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東京に長いこと暮らしている実感として、周囲には資本主義に包摂されアメリカ的フィルターを通した物の見方に染まった人が大多数だ。対して、保守・復古的価値観に意義を持つ人も散見するし、やれ風の時代だ、直観が大事だ、大いなる力だ、闇の権力者だとスピリチュアルや陰謀論に染まる人もやたらと多い。こちらはいずれも反知性主義的傾向が強く、ナイーブすぎる。
認知バイアスがある以上、情報をバランスよく、現実的に受け取ることは難しい。それでも真摯に、丁寧に情報を集め、主体的・柔軟に思考を積み上げることで強くしなやかなビューを持つことができると私は信じている。
世の中には南:北、リベラル:保守、先進国:途上国、民主主義国:社会主義・独裁専制国といったような様々な二項対立軸があって、その枠組みで世の中の構造を我々は紐解いてきた。本書では今あげたような二項対立軸を再編して、グローバルノース:グローバルサウス(インターナショナルサウス)という視点で現代の世界的社会的課題を読み解いていく。
日本の強みは「和」だ。
対立するでもなく、孤立するでも、従属するでもない。主義主張の強い国々が周囲で争っているのならば、それぞれの主張を傾聴し、和ませ、濁らせながら現実路線で行けばいい。そして彼らのいいところを吸収して学び、貢献できる点で貢献し、じっくり着実に成長していけばいい。
一矢報いようだとか、華々しく返り咲こうだとか考えるのは発奮するには良いかもしれないが、正見を備えない張りぼての自信は空回りしてしまうだろうし、下手すれば玉砕の道に突き進むリスクもある。
かといってボヤっとしていたら大波に流される。
自由と民主主義は素晴らしい。それの恩恵を得て、私は今幸せに暮らせている。しかしそれが100%正しい概念というわけでも、100%我々に馴染んでいる概念であるわけでもない。綻びもあれば、馴染まない人もいる。
グローバルサウスの面々は我々日本人以上にそう思っているわけで、彼らの理解なくして共生はできない。
日本の歴史を顧みれば、和を尊ぶとはいえ、排外精神と争いの多さがよく目につく。
不安定を嫌い異分子を敵視する性があったとしても、徐々にでも他者を理解すれば壁は薄く出来る。
米大統領がトランプでもバイデンでも、遠からずアメリカの権力は弱くなる。そしてその空白はグローバルサウスの増大によって埋まる。
メガテック企業は依然として存在するし、画期的なアイデア、プロダクト、サービスは今後もその大きな競争社会から生み出されてくるだろう。ピークは過ぎるかもしれないが、経済的な強さは今後も続くに違いない。
ただしもはや一強ではないのだから、例え相いれない価値観であろうとも、日本は今後のグローバルサウス側の面々とも関係性をしっかり築いていかねばならない。そしてそれは決して不可能じゃない。
歴史はいつだって一筋縄な予想通りにはいかない。
甘い見通しをすると上回ってくるのに、最悪の場合を想定してもその通りにもならない。
カオスな世の中に起きる大きな事件はいつだってブラックスワンであるようだ。
それでも、準備��くして事変には対応できないため、常に未来を予測・分析することには重要な意味がある。
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グローバルサウスの国々を軸としながら、ガザ地区イスラエル問題や、アメリカ大統領選挙、ロシアウクライナ戦争など様々な世界情勢を池上さん、佐藤さんの目線で語ってる作品。
特にロシアのアフリカにおける投資戦略は全然知らなかったので、勉強になりました!
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世界情勢が気になり、読んだ。
自国主義のグローバルサウスの台頭、アメリカの内向き、ロシア・中国の支配拡大などの繋がりや背景をざっくり理解できた。長い歴史のサイクルを見ると、民主主義と独裁が交互に続いており、今はその民主主義・資本主義による格差拡大と停滞感に嫌気が差し、独裁(自国主義)へ向かおうとしているような局面らしい。今までの平和ボケした前提で世界を見るのは正しくないのかも
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この本を読むと、日本の報道がいかに足りないか? を感じて心が痛みます。
世界の価値観が多様化して、世界の中心が明らかに動きつつある現在、日本は過去の成功体験に自惚れて、もはや崖っぷちどころか奈落に落ちてしまっているのに、それを未だ認識できていなようなズレを感じます。
もっとグローバル化された報道の必要性を痛く感じます。
池上さんは最近イスラム世界が今後に及ぼす影響の大きさに言及される事が多く感じます。
その根拠もこの本である程度理解できますし、地上波や新聞等では知りえない情報を知ることができると思います。
この本から自分は、日本において世界の動きは自分から取りにいかないと得られない、、と感じます。
「日本の報道は足りない、核心部分の議論や検証が足りていない」
これからの自分の姿勢に影響を与えてくれるジャーナリストのお二人に感謝です。
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夢の中へ、僕と踊りませんか。って感じの世界になるのか。
ミネルヴァの梟は、夕暮れに飛び立つ、ね。二百年、五百年、二千年のレンジの大転換の予兆だね。
ベイトソン、ダブルバインド。人類学的な知見が、役立つか。プレモダンですら無いのだから、そうだわね。
原初の能動性が、是が非でも、必要なんだね。
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佐藤 日本の報道で問題なのは、「ハマス」と「パレスチナ」を区別せず、「ガザ紛争」と「ウクライナ戦争」を同列に扱っている点です。今回の紛争は、イスラエルに居住するユダヤ人とユダヤ人国家の「生存権」を認めずにテロ行為に走ったハマスの行為に端を発するもので、「イスラエルとパレスチナの関係一般」に還元できる話ではありません。また、ウクライナ戦争が「ロシアによる侵攻」を契機とする「国家間戦争」であるのに対し、今回の紛争は「イスラエルとパレスチナの戦争」ではなく、「ハマスというテロ組織に対するイスラエルの掃討作戦」です。ハマスの宣伝戦における勝利は、ハマス対イスラエルの戦いにせず、パレスチナ対イスラエルの戦いだと偽装することに成功した点です。それにつられて、バイデン大統領が初動でボタンを掛け違えてしまった。
今更、ハマスとパレスチナを同列に扱っているという事もないと思うが、では、ハマスとパレスチナの重なる部分を分離できるのかというと、ガザの中を外部から見抜くのは難しい気がする。佐藤優がいう事は尤もだが、メディア報道を受けた人間が正しく理解できる事は困難だ。そして上記の指摘は、そもそもそのメディアが混乱しているという点で、状況の危うさを感じる。
本書は、グローバルサウスについて書かれた本だが、基本的な内容は世界情勢について、という事で、取り扱われるのは、紛争状態や過去、将来の予測についての話。中東に限らず、北朝鮮の話も参考になる。
池上 現実になると尼介なのは、台湾有事より朝鮮半島有事でしょう。
佐藤 一九五三年七月に朝鮮戦争の休戦協定が結ばれると、東京にあった朝鮮国連軍司令部がソウルへ移されました。キャンプ座間に置かれた朝鮮国連軍後方司令部は、二〇〇七年から横田飛行場へ移っています。さらに、朝鮮国連軍は国連軍地位協定に基づき、我が国内7か所の在日米軍施設・区域(キャンプ座間、横須賀海軍施設、佐世保海軍施設、横田飛行場、嘉手納飛行場、普天間飛行場、ホワイトビーチ地区)を使用することができると定められています。これは事前協議の条文がありません。
池上 日本の外務省のホームページに明記されていますね。
佐藤 ということは北朝鮮も、自国はこの七つの基地から攻撃されると、すでに知っているわけです。朝鮮戦争が再開されれば、日本はただちにこの七基地を国連軍に提供しなければなりません。すると、北朝鮮がこの七つの基地を攻撃するのは国際法上、合法です。一九九三年に、核拡散防止条約(NPT)脱退を宣言して核開発を進める北朝鮮に対して、クリントン政権が「サージカル・アタック(外科手術的攻撃)」を検討しましたね。
池上 寧辺の核施設への空爆で、核開発を阻止しようとしたんです。
グローバルノースの安定化は、サウスからの収奪に頼って成立した部分もあり、今や、このグローバルサウスの機嫌次第でいつでも危うい状況に置かれかねない、という事だ。他方で過度な強化を抑止しながら、他方でこちらに牙を向かぬように操作しなければならない。そこに無理が来ている、と思う。
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やはり、佐藤さんはロシアに詳しい。
ロシアがアフリカに近寄っていることは認識していなかったので学びになった。
中国の一帯一路の安くインフラを作ってやるが、金を返せないなら何かをよこせ、というようなやり方ではなく、上手く投資の形でアフリカに恩を売っている。
アフリカはこれから確実にでてくるグローバルサウスの地域だから、注視していきたい。
イスラエルとハマスの関係についても、新しい視点が得られた。どうも、ニュースやSNSではイスラエルが悪者らしいということしか分からなかったのだけど、そもそも、ハマスがどういう組織なのかを再認識した。(国や自治政府ではなく、あくまでもテロ組織という認識。野戦ネットワークのテロ組織なので、上を叩けば終わりとならず、掃討しなければ繰り返される。ガザ地区の自治政府にもハマスの非戦闘人員が入っているため区別がつけづらい。しかし、非戦闘人員がだとしても、ナチスのシステムと同じで、積極的に行動をしていなくてもシステムの一員としてハマスを支えている、という論理。アーレントのエルサレムのアイヒマンを引用して説明。)
しかしながら、上記の論理を当てはめてみても、システムからの「中立化」をしたいと、南部に逃げろといいつつ、その後結局かなり広範を攻撃しているのは何故か…疑問が残る。
最後はアメリカ大統領について、結局トランプ氏になったけど、この二人からしても、トランプ氏が大統領になったらどうなるかは不明確ということらしい。ただビジネスマンのトランプ氏は平和な方が儲かるから戦争を好まないだろうということで希望を持った。親イスラエルであることがどう影響するか、また、ウクライナからは手を引くということで停戦に及ぶのか…プーチンとの関係は?動向が気になることがたくさんある。
最後に完全に余談だと思うけど、トランプ氏が大統領選に出馬する理由となった一つに「年次記者晩餐会」のオバマ大統領のジョークで恥をかかされたことがあるようだ、というので、就任時期の活動の動機が見えて面白かった。