冬と瓦礫
著者 砂原浩太朗
1995年1月17日未明、阪神・淡路大震災が発生した。神戸市内の高校から都内の大学に進学し、東京で働いていた青年は、早朝の電話に愕然とする。かけてきたのは高校時代の友人で...
冬と瓦礫
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商品説明
1995年1月17日未明、阪神・淡路大震災が発生した。
神戸市内の高校から都内の大学に進学し、東京で働いていた青年は、早朝の電話に愕然とする。
かけてきたのは高校時代の友人で、故郷が巨大地震に見舞われたという。
慌ててテレビをつけると、画面には信じられない光景が映し出されていた。
被災地となった地元には、高齢の祖父母を含む家族や友人が住んでいる。
彼は、故郷・神戸に向かうことを決意した。
鉄道は途中までしか通じておらず、最後は水や食料を背負って十数キロを歩くことになる。
山本周五郎賞を受賞した作家が自らの体験をもとに、震災から30年を経て発表する初の現代小説。
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あの日を忘れない
2025/01/17 07:09
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この『冬と瓦礫』は、1995年1月17日朝5時46分に起こり、犠牲者6000人を超えた阪神淡路大地震のさなかの人と街を描いた小説である。
書いたのは、2021年『高瀬庄左衛門御留書』で数々の賞を受賞し、多くの読者を得た時代小説家、砂原浩太朗さん。
砂原さんがこれまで書いてきた作品とこの作品とはまるで違うが、砂原さんがこれを書き、作品として出版するに至るには、深い意味がある。
砂原さんは1969年生まれ。神戸市出身である。
阪神淡路大震災が起こった時は26歳。東京で暮らす若者だった。
この作品が「東京で暮らしていた主人公が帰郷し、家族を親戚のところに避難させるという大筋」は自身の体験に基づいているという。
物語は、あの日の朝、神戸で暮らす友人からの一本の電話からはじまる。
つけたテレビに映し出された高速道路は、倒れていた。
神戸には主人公の母と祖父母が暮らしている。主人公は会社に休みを得て、神戸に向かう。この時、東京の会社の同僚たちのやりとりもまた、あの時の被災地から遠く離れていた人々の空気感をよく描いている。
この物語はこうして被災地神戸に向かった主人公が1週間でみた、被災地とそこにいた人々の様子を描き出す。
主人公は崩れた家、倒れた家具、足許の瓦礫、それらの風景に立ち、こう思う。
「すべては、ほんのわずかの差でしかなかった。」と。
生きていること、犠牲になってしまうこと、そのこと自体が「ほんのわずかの差」であることを、おそらく主人公は、そして作家砂原浩太朗さんは実感したのだろう。
この小説の原型は、砂原さんが作家デビューする前、震災から15年後に書いたという。それを、震災から30年たって、本とする。
そこに作家としてのまなじりの強さを感じる。