文読む月日(下)
1日を1章とし、1年366日、古今東西の聖賢の名言を、日々の心の糧となるよう、結集・結晶させた、一大「アンソロジー」。最晩年のトルストイが、序文だけでも100回以上の推敲...
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商品説明
1日を1章とし、1年366日、古今東西の聖賢の名言を、日々の心の糧となるよう、結集・結晶させた、一大「アンソロジー」。最晩年のトルストイが、序文だけでも100回以上の推敲を重ね、6年の歳月を費やし、心血を注いで完成させた。総勢170名にものぼる聖賢の名言の数々は、まさに「壮観」。トルストイ自身、「自分の著述は忘れ去られても、この書物だけは、きっと人びとの記憶に残るに違いない」と語り、臨終の数日前にも、娘タチヤーナに10月28日の章を読ませて、「みんないい、みんな簡潔でいい……、そうだ、そうだ……」と呟いたという。トルストイを敬愛してやまない訳者の「心訳」による、わが国初の完全訳。下巻は10月から12月までを収録。
目次
- 十月/十一月/十二月/訳者あとがき/トルストイ略年譜/「一週間の読み物」総目次/主な人名の紹介/典拠(人名・書名)索引
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下巻の略年譜には訳者の思い入れがみえる
2006/06/08 10:29
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
トルストイが晩年にまとめた名言集である本書は、ちくま文庫版では上・中・下の三巻に分かれている。下巻には一年365日の日付を付された本文の10月から12月分のほか、年譜や索引などがついている。少々宗教色が濃いが味わい深い文章や、コーランや中国の古典までも取り入れた著者の造詣の深さなどは上・中・下どの巻にも共通であるが、下巻の付属資料、特に年譜について書いておきたくなったので一筆啓上。
訳者あとがきは、訳者自身の著書(「ある徴兵拒否者の歩み」など)に書かれたトルストイへの思い入れの深さからすれば、淡白にすぎると感じられるほどに短い。その分、というのも変かもしれないが、略年譜はところどころに長めの幾つかのエピソードが加えられていて、ちょっとした読み物になっている。「戦争と平和」の出版当初の評判、「イワン・イリイッチの死」へのロマン・ローランやモーパッサンの評。晩年は農作にいそしんでいたトルストイも、小作を持つほどの地主であることに心を痛めていたことや、最後に家出をしたときの手紙も引用されていて、トルストイの人柄をしのばせる。トルストイの略伝のつもりでここだけでも読んでみても面白い。訳者のトルストイへの関心がどんなところにあったのか、がよく現れている略年譜である。
毎日の名言の区切りにある「一週間の読み物」のタイトル、出典をまとめた総目次は意外に後から読み返すのに役に立った。どんな作品が使われたのかを眺め、トルストイの読書範囲の広さを、改めてやはりすごいと感じる。
主な人名の紹介・典拠の索引は、もともとトルストイがあやふやにしか記していないものなのでどうしてもこの程度になってしまうのだろう。それでもあまり有名でない作家については人名紹介があるのはありがたい。それにしても人名の表記は難しい。複数の言語の間で訳されてしまうと結構わからなくなるものかもしれない。中巻の275頁にでてくる「オウィディ」と書かれた、ロシア人らしい訳者名がついている詩人はやっぱりオヴィディウスではないだろうか。ちょっと調べていただきたかった気ももするが、どのようにして出版するのがよいのか、この後の研究者、翻訳者、出版社の方々にはこういうところはまだまだご検討をお願いしたいところである。