チェリーブラッサム みんなのレビュー
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紙の本チェリーブラッサム
2002/03/05 22:22
『実乃は、いつも悔し涙だな』
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投稿者:にこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
意地っ張りで、素直に泣くことができない。いつも泣くのは違う場所。ひがむのは「私も好きになってほしい」の裏返しで、それを素直にいえないのは見栄っ張りだから。
そんな少女実乃が主人公の話。軽い話でさくさく読めるのだけれど、私は実乃の素直になれくなくて、空回りしていく感情にとても心惹かれた。もし、この実乃が子供じゃなくて、泣く場所がない子だったらもっともっと暗闇のある話になっていたかもしれない。だけれど実乃はお母さんというクッションはなくなったけど、永春さんに、全員素直じゃないけれど血の繋がった家族がいた。そんな優しい環境に、読みながらどこかほっとした。
私は、「私も好きになってよ」と言って泣けるだろうか。泣いたことがあるだろうか。今こそ、もう泣けないかもしれないが、この本を読んでいる間は実乃と一緒にちょっと泣きたい気分になった。私もきっと素直じゃないから。
紙の本チェリーブラッサム
2003/08/04 22:22
いくつもの淡い恋が瞬いている。
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投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
父親と花乃と実乃。母を亡くしてようやく立ち直ったと思えば、突然父親が会社を辞めて、便利屋になるという。なんて突拍子もない父親なのだろう…と最初は思ったが、読んでいくうちにそんな思いは吹き飛んだ。
実乃はよく、お寺に行く。永春さんに会いに。袈裟で原付に跨る住職。思い浮かべると結構ミスマッチかもしれない。私はこのお寺を、母の実家の近所にあるお寺で想像して読んだ。「駆け込み寺」という言葉通りだろう。実乃の安息の場。
ハズムの家の盲導犬、ラブリー(可愛い名前!)探しを要に物語は巡る。あちらこちらに恋の欠片が散っているのが微笑ましい。ラブリーの行方については、想像困難を極めていた。誰もが疑わしく思えた。ページが進むのが速かったのはそのせいだろうか。
豹助の慌しくて純粋で家族想いの性格も良いが、個人的には音比古のキャラも捨て難いと思う。花乃を恋慕し、その挙句実乃とハズムに利用される。生意気でぶっきらぼうだが、その点を考慮すれば憎めない。密かに応援したりなんかして…。
総合的に言えば、気楽に読める一冊だろう。花乃と実乃の姉妹ならではの摩擦。軽快さの中にちょこんと存在する心情模様。いくつも点在する淡い恋。結末は思ったよりさらりと軽かった。文緒さんの小説には大概、ピンポン玉大くらいの哀しみが在る。重た過ぎず軽過ぎず、適度な悲愴を感じる事が多いが本書は全体的に明るく、構える事なく気持ち良く読了できるだろう。
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