家康、江戸を建てる みんなのレビュー
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紙の本家康、江戸を建てる
2016/05/25 21:15
歴史小説に創見は許されるか?
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:碑文谷 次郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「第五話 天守を起こす」には、史実との乖離があって、小説だからと看過し難い誤りがある。慶長の天守の建設予定地が「本丸御殿のさらに奥。・・・北桔橋門のすぐ内側」というのは、著者の創見であって、実際は白書院と黒書院の中間地点であったらしい。現在のように「北桔橋門のすぐ内側」に移設したのは秀忠であり、元和9年にその天守は完成したのである。従い、家康が慶長天守に登って、「手前に視線を寄せれば、北桔橋門のまわりの石段がだいぶん積みあがっている」光景を見ることはなかったのである。だから第五話全体が、嘘くさい下手なフィクションに堕している。
さらに、秀忠が「天守は不要」という見解を抱いていたことも初耳であった。もしそうなら、なぜ彼は天和天守を築いたのか・・・?この単純な疑問が残るが、この小説にはその説明を求めるのは、ないものねだりというものだろう。
歴史小説の醸し出す大きな構築なり幻想なりドラマのリアリティは、著者の独りよがりの空想とかアヤフヤな考証などではなく、些細な史実によってのみ支えられているという初歩的原則を忘れてはなるまい。
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