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アナーキズム ――名著でたどる日本思想入門 みんなのレビュー

  • 浅羽通明 (著)
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みんなのレビュー3件

みんなの評価4.2

評価内訳

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3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本アナーキズム

2005/01/02 18:21

政治性を脱色された、ロマンとしての「アナーキズム」

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る

「ナショナリズム」共々、浅羽通明をはじめて読んだ。読み物としては一定の面白さがある。読書ガイドとしてもいろいろなものへの参照がなされていて興味深い。
が、それだけだ。「浅羽通明」の本を読みたいというなら止めはしないが、「アナーキズム」の本としては読めたものではない。

「ナショナリズム」での、日本人のロマン、情緒の側面に注目したアプローチは、草の根的なナショナリティの分析として興味深くもあったが、「アナーキズム」でも同じアプローチになっているのには疑問がある。

おそらくこの両著は、日本人のメンタリティを正反対に見える(だけの)「ナショナリズム」と「アナーキズム」という二面から描き出すことが主眼で、革命家からナショナリストになった人間たちにも注目していることから、両者の思想を奉ずる人間それぞれのメンタリティには同一性があるということを指摘しているのだと思う。
ロマンチストたちのメンタリティ、そのメビウスの帯の両面として、「アナーキズム」と「ナショナリズム」は書かれている。日本近代人の「心情史」を描き出そうという試みといえる。

だから、この本で描かれるアナーキズムは、まずもってユートピアを夢想するロマンに他ならないということになる。

ここが最大の問題で、アナーキズムの政治思想としての本質を、ロマンチシズムに集約させてしまっている。私はアナーキズムについてほぼ素人だが、たとえばアナーキズムの思想とは何か、を入門的見地から知るには、アナキストによる「アナーキー・イン・ニッポン」というサイトの、アナキズムFAQを読んだ方が遙かにいい。
(http://www.ne.jp/asahi/anarchy/anarchy/index.html)
(「ヒエラルキーには、政治的関係だけではなく、権力的な経済関係や社会関係、特に私有財産と賃労働で構成される関係も含まれるのだ」とあり、このヒエラルキーの否定がアナキズムの柱であることがわかる。資本の否定もここから導き出される。資本主義がアナキズムとは相容れないのはこのためだろう)

エキサイトブックスでのインタビューで著者がいっているのだが、これはアナーキズムという思想の破産宣告でもあるらしい(「アナ−キズムは実質上、淘汰された思想」)。そしてそれは「思想青年OBやアカデミズム予備軍へ」の「挑発」なのだとも。

しかし、私には著者のアナーキズム理解が“退屈なだけ”にしか見えない。本書で展開されているアナーキズムの要約はなんだか極端だし、思想として単純すぎる上、根本的なところが抜け落ちている。自主独立を貫き、完全なる自由を夢想する。そんな人間像がアナーキズムのすべてか?

そんなものはヒーローに憧れるメンタリティと大差ない。ネオリベラリズムを極端に推進した形態でしかない笠井潔のアナルコ・キャピタリズムなる構想も似たようなもの。資本を肯定するアナーキズムなどほとんど語義矛盾だ。そんなロマンに破産宣告するのならいくらでもやってもらいたい。が、それですべてであるわけはない。

この本はあくまでも、アナーキズムにまつわるロマンを語っているだけであって、「アナーキズム」の「政治思想入門」ではなく、「物語 日本のアナーキストたち」とでも呼ぶべきで、思想への批評や分析は手薄い。政治、思想、運動としてのアナーキズムではなく、アナーキズムを奉じた人間の心情にスポットがあてられていて、「政治思想」の入門にはなり得ない本だ。

これなら、アナキズム運動を描いたエンツェンスベルガーによる卓抜なノンフィクション「スペインの短い夏」であるとか、アナキストの暴力論を現代的抵抗の戦略として活用しようという酒井隆史「暴力の哲学」などにこそアナキズムの可能性を見てとれる。

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「壁の中」から

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紙の本アナーキズム

2004/05/18 03:15

共感をこめた容赦なきツッコミ

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:梶谷懐 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 該博な知識に裏付けられた同時代への鋭い批評的言説を繰り出す、あの浅羽通明が完全復活した! 姉妹作『ナショナリズム』と共に、思わずそう盛り上がってしまいたくなる力作だ。特に本書で扱われている「アナーキズム」は、そういった浅羽さんの批評的精神を発揮する対象として、またとない素材ではなかっただろうか。

 とは言うものの、本書において「アナーキズム」の名でくくられる思想家達の相貌は実に多様である。日本アナーキズムの「定番」大杉栄はもとより、彼に共鳴するデラシネ・テロリスト、党派の論理に縛られた旧左翼を批判した文学者埴谷雄高、農本ファシズムに限りなく近づく権藤成卿などのコミュニタリアン、ベルグソン的な「生の拡充(『無痛文明論』の森岡正博さんなら「生命の喜び」と呼ぶことだろう)」を称える生命主義者、アナルコキャピタリズムの笠井潔、果てはキャプテン・ハーロックに真田十勇士などの孤独でダーティーなヒーロー。まさにごちゃ混ぜ状態で、ちょっと考えると統一性がないように思えるが、彼らは全て「組織に属さない」「個人の自由に最高の価値を置く」「潔癖で理想主義的である」「そのくせ融通無碍なリアリズムも持つ」といった共通点を持った魅力的な存在として紹介されている。
 そのように指摘されてみると、確かに体制側はもとより制度化された左翼からも遠い存在ではあったけれど、日本の思想史において確固たる位置を占め、ひいては日本の近代の可能性と限界とを体現した一つの骨太な思想の流れが説得力を持ってたち現れてくるような気がする。このへんの記述は、西洋の借り物の理論を振り回すことを徹底的に拒否する浅羽さんによる自前の「語り」の力の面目躍如と言うほかはない。

 浅羽さんはまた、そういったアナーキスト達の思想をかなりの共感をこめて描きながら、最後には容赦なきツッコミを入れるのを忘れない。いわく、埴谷雄高は結局生活から遊離した芸術家の立場でしか政治を考えられない元祖「おたく」だったし、農本的コミュニタリアンは「五人組」的な相互監視のメカニズムを民衆の自生的な共存システムとして賞賛する勘違いを犯してきたし、また「生の哲学」を賞賛する生命主義者は、自らの願望を投影する存在としてファシズムさえ選択しかねない危うさを抱えていた。さらに、文筆家としての自らの立場を「商人」として位置づける笠井潔は、結局のところその立場に「独立した個人」という武士的価値観を込める誘惑から逃れられなかった、といった具合だ。
 また、当初アナーキスト的傾向を強くもちながらその限界性にぶち当たり『戦争論』のナショナリストへと転向を遂げた存在としてさりげなく小林よしのりのことにも触れているのも興味深い。

 こういう何にでもツッコミを入れてしまう立場は、ともすれば「どっちつかず」「高みに立っている」という批判を受けがちだ。実際一時期の浅羽さんはそういう批判を気にしていた節もある。しかし、『教養論ノート』で、思想を「生きにくい人々への対処療法」としてとらえる立場を打ち出してからの彼は、もはやそんな迷いは吹っ切ったように思われる。本書でも、あくまでも思想を必要とする人々へのたたき台として自らの思考を提供し、具体的な解決策はそれぞれの読者が示していけばいいのだ、という基本姿勢が徹底して貫かれている。こういった姿勢は、最終章で少しだけその可能性が示されている、ノージックに発想を得たと思われる「メタ・アナーキズム」の構想にも通じるものだろう。それは価値観が揺らいでいる現代における知識人としてもっとも誠実な態度の一つだと言えるかもしれない。そんなわけで、彼の手による本シリーズの続編が今から待ち遠しい。

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紙の本アナーキズム

2004/05/11 21:10

抜群に面白い思想講談

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:GG - この投稿者のレビュー一覧を見る

定番中の定番として丸山真男『日本の思想』(岩波新書)、あるいはぐっと渋く竹内好『近代の超克』(冨山房百科文庫)など、新書は思想系のロングセラーを輩出してきた。そうした名著の系列に新たな一冊が加わった。

本書がそれである。政治思想上の異端「アナーキズム」をめぐる考察を、よく練られた構成と明快な叙述で一気に読ませる。前口上としての序章に続いて、俎上に載せられ解読・解説されていく書物は次の十冊。

1.『大杉栄』(日本の名著46)
2.竹中労・かわぐちかいじ『黒旗水滸伝』
3.鈴木貞美編『大正生命主義と現代』
4.滝沢誠『権藤成卿』
5.埴谷雄高『政治論文集』
6.勝田吉太郎『アナーキスト』
7.宮田登『ミロク信仰の研究』
8.鶴見俊輔『方法としてのアナーキズム』
9.松本零士『宇宙海賊キャプテンハーロック』
10.笠井潔『国家民営化論』

予備知識になしにこのラインナップを見た場合、1・5・6はともかくとして、2・9はマンガだし、4はあまりにマニアックで非常に読みにくい本が予想される。しかし、そこは希代の弁士浅羽通明、読者を片時も退屈させることはない。博覧強記を誇る著者であるが、学者・評論家の中には同程度の読書家ならば、きっと別にもいる。しかし、蓄えた知識をこれだけ歯切れよく、エンターテインメントとして展開してみせる語りの芸を持っている者となると、現代日本でも屈指の存在ではないか。難解な理路をまるで講談を聞くように解き明かしてくれる(張り扇の音が聞こえてくるかのようだ)。

個人的には、千年王国論に引きつけての笠井潔読解がとても説得的だった。

しかし——。話は面白いけれど、結局著者は何が言いたいのだろう、という気分が芽生えてくるかもしれない。そうした部分へのフォローは、終章のまとめとあとがきの部分できっちりなされている。浅羽本の初読者は、まず本書あとがきを読んで「臨床思想士」たらんとする著者の構えを知っておくとよいと思う。

同時刊行された『ナショナリズム』もとても面白い。シリーズとしての刊行を構想しているようなので、続編への健筆を大いに期待したい。

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