司馬遼太郎の時代 歴史と大衆教養主義 みんなのレビュー
- 福間良明 著
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紙の本司馬遼太郎の時代 歴史と大衆教養主義
2023/01/26 16:25
「余談」の効用
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年(2023年)は、作家司馬遼太郎の生誕100年にあたる。
それを意識しなかったはずはないだろうが、
福間良明氏による『司馬遼太郎の時代』は2022年10月に刊行されている。
ただ執筆に至る経緯を記された「あとがき」によれば、
当初は「司馬遼太郎の時代」から昭和史を再考してみたいということであったようだ。
ちなみに福間氏は大学教授で、専門は歴史社会学・メディア史であるという。
著者は、司馬遼太郎がなぜ「国民作家」と呼ばれるほどまでになった背景を、
「昭和50年代」にみている。
本文に「司馬の歴史小説は明らかに、「昭和五〇年代」の大衆歴史ブームに重なり合っていた」とある。
なかでも、ビジネスマンやサラリーマンたちに支持されたと。
その要因として、NHK大河ドラマの原作に何作も取り上げられたことや、
その頃の文庫隆盛が司馬という名前を格段に高めたのではないかとしている。
さらに、司馬の作品にたびたび登場する「余談」について、
そこに記された内容が「読者の教養への憧憬を刺激した」と見ている。
確かに司馬の作品には単に文学的な面白さだけではない、
「文学・思想・歴史方面の読書を通じて人格を陶冶しなければならない」という
教養主義にあこがれた人々にとって、
明らかに他の歴史小説家とは一線をひいていたといえる。
司馬遼太郎とは何者だったのか、司馬文学をどう読み解くのか、
司馬遼太郎生誕100年にあたり、
面白く読めた一冊だった。
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