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  • ダグラス・アダムス, 安原和見
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みんなの評価3.9

評価内訳

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  • 星 1 (0件)
1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本ほとんど無害

2017/01/01 23:08

フェンチャーチ不在が痛いです。

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投稿者:テトラ - この投稿者のレビュー一覧を見る

4作目の『さようなら、いままで魚をありがとう』で新展開を見せた本シリーズでは同作ではなおざりになっていたかつてのキャラクターが登場する。しかし今回の舞台は並行宇宙での話のようで1~4作までの世界とは異なる次元を舞台にしている。幸せの証が四葉のクローバーではなく三つ葉のクローバーである世界が舞台だ。

途轍もないナンセンスギャグで始まったこのシリーズの結末はなんとも云いようのない虚無感に襲われるようになるとは誰が想像しただろうか?つまり第1作目の地球が消失する発端がここで繰り返され、そこから物語が始まったシリーズが、本書では全く同じ現象でフィナーレとなる。喜劇で始まったシリーズがかくも空しい悲劇に終わろうとは全く言葉が出ない。

前作並びに本書の解説に書かれているが、著者のアダムスは非常に自由奔放な性格で前作も当初予告した内容とは全く異なった恋愛SF物語になったとのこと。それも作者自身が執筆時に後の奥さんとなる相手と恋愛中だったことが色濃く物語に反映されたとのことで、本書の実に虚無的な物語もまた執筆中に会計士の横領と義父の死という不幸が重なったためにそれが作品に出てしまったようだ。このように自身の私生活が否応なく物語に影響を与えてしまう作家なのだ。そして本書は書かれるわけではない続編だったようで、それがゆえに逆に悲劇的な物語の決着の付け方をしてしまったようだ。

本書はそれまでのシリーズに見られたようにナンセンスな装置と物語展開、そして並行宇宙を利用した重層的な仕掛けがきちんとなされ、単に筆を滑らせて書かれた作品ではないことは確かだ。しかし、どうしてこんな結末にしてしまったのだろうかと残念でならない。訳者あとがきにも書かれているように片や「最高傑作」、片や「シリーズ最低最悪の作品」と本書の世評は賛否両論真っ二つに分かれたようだ。そして訳者自身は両方とも納得できるとしており、私も傑作とまではいかないまでも上に書いたように実に計算されて書かれているとは認めるものの、物語の結末に非常に納得のいかない思いが残っている。
特に前作で鮮烈な印象を残したアーサーの恋人フェンチャーチがたった1行で退場し、全く物語に出てこないのが非常に残念だ。前作が個人的には最も楽しかった作品だっただけにフェンチャーチ不在はなんとも心残りである。

アダムスはこの後の作品を書かずに急逝してしまうのだが、無念だったのかどうかは今となっては不明だ。オーエン・コルファーによる続編も書かれているが私としてはこれでこのシリーズは終わりにしたいと思う。アダムスによって生み出された作品はやはりアダムス自身で閉じられた物語が真の結末だと思うからだ。しかしそれがなんとも寂しく感じるのが重ね重ね残念でならない。

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