ラスト・チャイルド みんなのレビュー
- ジョン・ハート (著), 東野さやか (訳)
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紙の本ラスト・チャイルド 下
2016/10/18 05:06
ラスト・チャイルドという意味の恐ろしさ
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
結構前(発売当初)に買ってましたが・・・そして読んでる人はとっくに読んでいるので、すでに次のこのミス入選有力作品だと噂が伝わってきてます。
あまり先入観を持って読みたくはないのですが・・・はじめの20ページそこそこで主人公・ジョニーの置かれてしまっている境遇のひどさと同時に苦悩が伝わってきて、
泣きそうになってしまい、先入観を忘れた。
ポケミスバージョンもあるようですが、私は慣れ親しんだハヤカワミステリ文庫で購入。ラスト・チャイルドとは、最後まで生き残った子、という意味。
ジョニーは双子の妹・メリッサが何者かに連れ去られた一年前から、ずっと妹を探し続けている。 母親は悲しみのあまり酒と薬に溺れ、父親は失踪。 ジョニーはまだ13歳なのに、一人で全部を背負って町の異常者を探り出そうとしている。
まずそのあたりから読んでるこっちは苦しくなってくるのだが・・・自分の悲しみに沈んでいるジョニーの母親の気持ちもわかるけど、親としての義務が果たせるかどうかぐらいの判断はしてほしいと思うし、けれどこんな母親でもジョニーにとっては大事な母親だというのがなんとも・・・(社会福祉局や里親制度は機能していないのか。 なにが子供にとっていちばんいいのか判断するのは難しい)。
そしてもう一人の主要人物がハント刑事。 彼はメリッサの事件の担当で、解決できないことをずっと気に病み、それ故にジョニーに対して誰よりも気を配る。 ときに、自分の職務の範疇を超えるほどに。 この二人の関係が、最終的に物語の救いになっていくことになるのだけれど。
そんなある日、またもやメリッサと同じ年頃の女の子が行方不明になり、街は騒然となる。
多分、出来事としては一週間ぐらいの間の話なんだろうけど、あまりに濃度が強いためかもっと長い間の出来事のように思えてしまった。
子供を標的にする犯罪という意味では最近のミステリにはありがちではありますが、なにしろジョニーというキャラクターを描いたことがこの物語のすごさ! 多分そうなんだろうなぁと犯人はわりと前半でわかってしまうんだけど、それを補ってあまりあるリーダビリティ。 ただ、無宗教の私には「神はすべてご存知だ」的な啓示や奇跡といった描写にはつい、どうかな・・・?と首をかしげてしまいたくなりはするが。
ジョニー中心の物語であるがために、親友のジャックのことが最小限しか語られないのが物足りなくもあるけれど、仕方ないのかな・・・むしろ描かれていないことに言いようのないかなしさが詰まっている、ような気がする。
自分の子供に「ラスト・チャイルド」の冠をつけてしまうかどうかは親次第、ということなのかも・・・まさに、親の資格、だな(2010年9月読了)。
紙の本ラスト・チャイルド 上
2011/03/19 16:20
事件は「神」に導かれて解決していく………ともいえる。ハント「マスティーとはなんだ」ジョニー「インディアンと黒人の混血だよ。………インディアンの奴隷もいたんだよ。知らないの?」ところでマスティーの「神」ってキリスト教の神とは違うんだろうなぁ。
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投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者のジョン・ハートはノースカロライナ州の生まれだそうだ。ノースカロライナ州レイヴン郡がどんな土地柄かは知らないが、ここはちっぽけな田舎町。それでも貧困、売春、麻薬、異常性格者や小児性愛者による犯罪の多発、格差社会、ドメスティックバイオレン、などなど、どこにでもあるのかもしれないアメリカ犯罪小説のモデル的基点である。
ただ今まで読んだミステリーにはなかった地方色としてインディアンが相当ひどい迫害をうけた怨念が残る地らしい。この郡の解放奴隷第1号はインディアンと黒人の混血奴隷であり、その血を引く男(リーヴァイ・フリーマントル)と当時の奴隷解放運動家の血を引く少年(主人公のジョニー・メリモン)との因縁、神がかりなもつれ合いがストーリーのバックにあることは見逃せない。
「少年ジョニー(13歳)の人生はある事件を境にして一変した。優しい両親と瓜二つのふたごの妹アリッサと平穏に暮らす幸福の日々が、妹の誘拐によって突如失われたのだ。事件後まもなく父が失踪を遂げ、母(キャサリン)は薬物に溺れるように。(しかも町の実業家ケン・ホロウェイの愛人となりその暴力になすすべない毎日)少年の家族は完全に崩壊した。だが彼はくじけない家族の再生を信じ、親友(ジャック・クロス、父は町の警察官で長男を溺愛するが障害を持ったジャックには暴力的。母は狂信的なキリスト教信者。つまりこの家庭も崩壊している)とともに妹の行方を捜し続ける。」
インディアンの歴史に通じその呪術に魅せられ、それで勇気を奮い立たせ、
執拗にアリッサの行方を探索する少年。彼をを見つめる町の人たちの視線は冷たい。アリッサ失踪事件に責任を感じ、少年ジョニーと母キャサリンに心を寄せる刑事・ハントがその探索を助力するが、ジョニーは誰も信用しない。警察組織をはみだした一匹狼のハント刑事もまた仕事師がゆえに妻は離れ、一人息子との仲は険悪である。
そして小児性愛者による別の誘拐事件が発生し、その周囲からは大量の死体も発見される。
単独犯か、警察内に協力者がいるのか?
アリッサはその犠牲になったの?
まだ生きているのか?
脱獄囚・リーヴァイ・フリーマントル(この人物造形は異色である)は事件とどのように関わっているのか?
謎は次々と提示される。
アリッサの生存を信じているジョニーの必死の探索によりひとつひとつと謎が解ければ、さらに新しい謎へと展開する。サスペンス小説の醍醐味がここにある。
そして事件の真相は思いがけないところにあった。
家庭崩壊と再生、愛憎の絡み合う人間ドラマではある。アメリカの暗部や警察組織の保守性等々社会性。いかにも多くの現代アメリカをえぐるテーマで、てんこもりされているように見える。だが最近の小説には、これらのテーマをもっと鋭く丁寧に描いたものがいくらでもあるから、それだけでは新鮮味に欠ける作品になってしまったろう。
この小説の魅力はノースカロライナの地方色が投影された特異な性格を持った少年、彼による真相の追求、その迫力あるプロセスにつきる。
周囲からつまはじきにされた少年の孤独をひしひしと感じ、家族思いのけなげさに心を揺さぶられながら、インディアンの怨念に思いをはせる。
久しぶりにぐいぐいと引き込まれる本格サスペンス小説だった。
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