利腕 みんなのレビュー
- ディック・フランシス, 菊池光
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紙の本利腕
2002/02/08 19:08
シリーズ白眉の傑作
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろぐう - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなにラストがスッキリとした話は久しぶりだ。ストーリーそのものが、それほど飛び抜けて素晴らしいというわけではないが、『大穴』の続編として、随所でソフィスティケート&パワーアップされている。たとえば悪役。そのどぎつさは相変わらずだが、リアリティがあって漫画的な印象は少ない(えげつない行為はプロに任せることにしたことが奏効)。
それに、サブストーリーの詐欺事件での元妻との葛藤をからませる手際や、気球レースへの飛び入りで追跡を逃れる場面での、絵画的なイマジネーションを喚起させて忘れられない印象を植え付けるテクニックなど、心憎いばかりの技量だ。
特に主人公のシッド・ハーレーのくっきりとした人物造型が素晴らしい。現実的には彼ほどの自尊心や克己心を持つことは裏腹で、一歩間違えれば不寛容で思い上がった人間になる危険もあるのだが、(冒険)物語のヒーローとしては、これくらい輪郭の太い人物を描いてほしいと思う。
紙の本利腕
2018/12/26 19:18
人間の弱さと強さが交差する、勇気のドラマ
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さらさばく - この投稿者のレビュー一覧を見る
『大穴』に続く、シッド・ハレ―2作目。
元妻ジェニイの巻き込まれた詐欺事件、有望な競走馬が次々に心臓障害で死ぬ怪事件を捜査するうちに、シッドは何者かから脅迫を受けます。
隻腕のシッドは、残る右腕を失うかもしれない恐怖で、一度は現場を離れたものの、葛藤の末に戻ってきます。
この、内なる恐怖心との闘いが本作の見せ場。
「自分が永遠に対応できない、耐えられないこと、それは自己蔑視である」というシッドのセリフが光ります。
アメリカ探偵作家クラブ賞、英国推理作家協会賞受賞作。
フランシスの競馬作品シリーズが、ミステリ仕立てでありながら、イギリス冒険小説の流れをくむものとして位置付けられている理由がわかる作品です。
紙の本利腕
2001/11/10 19:38
もう少しリラックスしてよ、ハレーさん!
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
競馬シリーズの1979年の第18作で、シッド・ハレーが登場する第2作。
「大穴」の書評でも書いたが、私はシッド・ハレーはあまり好きではない。本書を読んで嫌いになったと言ってよい。ハレーは自分の内なる弱さを表に出すまいと、常に自分を厳しく律している。フランシスの主人公には大なり小なりその傾向があり、それが悪いという気はない。ただハレーの場合、この性格が際立ちすぎていて、自虐的とすら言える。とにかく、精神的なゆとりが全くないので、読んでいて疲れるのだ。「大穴」では、彼が第2の人生に踏み出す過程に重点が置かれていたためか、それほど気にならなかった。しかし本書では、彼のこの “マゾ的な突っ張り” が、これでもか、これでもかと前面に打ち出されており、正直言ってかなり鼻についた。
実を言うと、この第2作ではハレーが何らかの形で、たとえば心から打ち解けられる人間と出会うなどして、一皮むける事を内心期待していたのだが、アテがはずれたのでなおさら嫌いになったものである。「大穴」では立ち直る途上だったから仕方ないが、立ち直ったのだからもう少しリラックスしてよ、あなたは自分が思い詰めているような弱虫じゃないよ、と言いたくなった。
だが、読者に人気があり、作者も好いているようだから、ハレーの自虐的克己主義の性格が変わる見込みはなさそうだ。だからもう第3作は読む気はない。
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