V・I・ウォーショースキー みんなのレビュー
- サラ・パレツキー(著), 山本やよい(訳)
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紙の本ミッドナイト・ララバイ
2010/10/20 11:30
4年ぶりのヴィクと1966年の夏
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみひこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語はいきなり、従妹のペトラの行方不明で幕を開ける。
大金持ちでカンザスに住む、ヴィクとは不仲の叔父ピーターの娘。父親の友人の息子の選挙事務所を手伝うためにシカゴに来たばっかり。若くて美人で、大学を出たての従妹は、瞬く間に持ち前の明るさで、ヴィクの友人でアパートの階下に住む老人ミスタ・コントレーラスを魅了してしまい、頻繁に訪ねてきては、一族の過去を調べようと、ヴィクを引っ張り回していた。
いったい、どうして?
ヴィクは恋人のジャーナリストと別れて、シカゴに帰ってきたところ。ふとした縁で、病院で世話になった牧師から、人捜しを頼まれた。それは、40年も前に行方不明になったアフリカ系老女の息子を捜すこと。何故か非協力的なその母親にてこずりながら、嫌々仕事を開始したヴィク。だが、彼女はシカゴの町で、次々に奇妙な敵意に、取り囲まれていく。
やがて、物語は、40年前の夏、1966年の夏、キング牧師のいた夏に戻っていく。警官だったヴィクの父親が、殆ど家に戻れなかったほど、暴動で荒れ狂ったあの夏に…。
父親への疑惑、ある修道女の死。国土安全保障省の危機管理局とFBIの威圧的な捜査が彼女に迫り、ヴィクは心身とも窮地に追い込まれていく。
果たして、ペトラは無事なのか?あの夏の真実とは?行方不明の少年はどこに?
相変わらず、かなりハードな立場に追い込まれるヴィクの冒険に、思わず力みながら読み進んでいく内に、現代のアメリカの異様な実態、「愛国者法」施行後の奇妙な実態に、読者の目は向けさせられる。警察やFBIによる盗聴が無条件に許され、ジャーナリズムが検閲を受ける社会の怖さが、物語の中で、垣間見えてくるのだ。
なかなか気の重い部分もある物語なのだが、ただ一つの救いは、音楽だ。魅力的なコントラバス奏者の隣人も登場する。こう言うだけで、このシリーズを愛する読者は、ロマンスの気配を感じたり、或いは、横溝正史の某作品を思い浮かべたりするだろう。が、ここでは、作者は期待を裏切らない、とだけ言っておこう。
4年ぶりのヴィクの物語は、作者の中にある40年前の暑い夏を、語ってきかせてくれる。このシカゴの夏こそ、パレツキーがヴィクを生み出す根源の夏だと、自伝『沈黙の時代に書くということ ポスト9・11を生きる作家の選択』にもあった。
ヴィクの誕生した夏に出会い、この現代社会を生きぬいていく、作者とヴィクとの熱い思いを共にしよう。
紙の本サマータイム・ブルース 新版
2010/11/29 22:28
よく見ると、原題はサマータイム・ブルースではないのですね。いい訳です。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
数年前、「サマータイムマシーン・ブルース」という映画を見た。史上もっともゆるいタイムマシンもの、という謳い文句だったと記憶する。ものを知らない私は、だいぶ後になって、本書のタイトルをパロディにしたことを知った。そんなきっかけで気になっていた本書を、新版になったのをお機に手にとってみた。いわずもがなだが、映画と本書とは内容的にはまったく関連はない。
1970年末とおぼしきアメリカ・シカゴを舞台にした、私立探偵ハードボイルドものである。フィリップ・マーロウものとの違いは、活躍年代と場所、そして性別くらいなものではなかろうか。性別のちがいをあまり意識させないくらい、主人公のヴィク・I・ウォーショースキーはかっこいい。銃撃のような過酷な状況でも冷静な判断ができ、殴られても立ち上がり、そしてジョギングも欠かさない。子どもにはやさしく、お酒には強く、ご飯はきちんと食べ、そして色恋にもトラブルにも積極的である。主人公が女性私立探偵なのは、単に著者が女性であるからばかりではなく、フィリップ・マーロウを現代に蘇らせてもパロディーにしかならないからだろう。
もうひとつマーロウとの違いをあげれば、彼は一匹狼の印象が強いのに対し、彼女の周囲には、頼もしくてかっこいい人がいることである。父母は亡くなっているにせよ、父の友人であった刑事、彼女の避難港みたいな女性医師、ギブアンドテークの関係のようでいてツーカーの新聞記者。彼女の強みである。
このようにくっきりとした人物像に比し、彼女をとりまく空気はどこか弛緩している感じがする。必ずしも「夏だから」だけではないのではないか。右であれ、左であれ、目標を見失っていた、70年代末のアメリカ独特の雰囲気なのだろうか。
ところで、新版の表紙イラストのヴィクは、白のタイトスカート姿である。今風でかっこよく、イメージにとてもあっているのだが、作中にこうした姿はあったかなぁ? 主人公はファッションにも手を抜かないようで、その日その日にどのようなものを着るべきか、についても克明に記述されている。せっかくなら、様々な人の手によるヴィクのイラストを見てみたい。
紙の本ビター・メモリー 上
2007/04/14 15:23
生きてくことのしんどさ
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この頃また小説を読むようになった。
忘れたい現実が多すぎるからなのかどうか。
高校のときから好きだったシリーズ、気がついたら新作がいくつも出ていたのであわてて読み出した。
作中にちらちら出てくる登場人物の過去が、今回は大きな流れになってきたなぁという感じ。
だけど、枝葉の部分のエピソードの落ち着き先がわからないところは不満といえば不満。
ビターすぎたからあえてぼかしたんだってことなら納得はできるから。
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