消えた少年たち みんなのレビュー
- オースン・スコット・カード (著), 小尾芙佐 (訳)
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紙の本消えた少年たち 下
2004/06/20 16:11
世界という布地が切り裂かれ、少年たちが消える
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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
全十五章の最後から二つ目、下巻の「クリスマス・イブ」の章で明らかにされる真実と奇蹟の出来事にふれずして、この作品の魅力、ディテイルや人物描写の見事さ(とりわけ、物語の本当の主人公ともいえる七歳の長男スティーヴィの可憐さ、純粋さの描写は絶品)と鮮烈な感動の質を語るのはとても苦しい。幼い子供たちを取りまく様々な危険や家族の絆への過敏すぎる反応、理不尽な世の中に対する慎ましさを失わない毅然とした姿勢。「屑屋のおっさん(ジャンクマン)」「魚屋のおばさん(フィッシュレデイ)」と互いを呼び合う若い夫婦の思考と行動を支えるある種の過剰が、この優れた「家族小説」(解説の北上次郎の評言)に深いリアリティをもたらしている。──物語の終盤に登場する、冷静沈着で人情の機微に通じたダグラス刑事の言葉が印象に残る。「わたしが言いたいのはね、とても悪いことをする連中がいて、それがあまりにも邪悪なことなので、この世界という布地が切り裂かれてしまう。そしていっぽうにとても心根のやさしい善人がいる。その連中は世界が切り裂かれたときにそれを感じることができるんだ。そういうひとたちには物事が見える、物事がわかる。ただあまりにも心根がやさしく純粋なので、自分に見えているものがなんなのかわからない。それが、おたくの坊やの身に起こっていることじゃないかと思うんだ。」
紙の本消えた少年たち 上
2003/08/25 10:26
たしかに「忘れられない傑作」だけど…
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MIZU - この投稿者のレビュー一覧を見る
たしかに「忘れられない傑作」かもしれません。でも、私には、「90年代ベスト1」の小説とは思えませんでした。
まず、一見して家族小説でありながら、そうではないということ。解説の北上次郎さんの言葉通り、99%は家族小説でありながら、残り1%がそうではない。この作りは、ある意味で読者の期待を根底からくつがえすものとなっていて、それが人によっては高い評価の理由なのかもしませんが、私にはバランスを崩しているように感じました。
そして、この「残り1%」です。私には、とても納得のゆかない、受け入れられないものでした。この長い小説、全体の9割以上にもなる、家族の努力、家族のきずな、すべてがかすんでしまうのです。それが現実なのだということかもしれませんが、ある意味で作者の悪意のようなものを感じたといったら、言い過ぎでしょうか。もしかすると、何か宗教的なものがあって、はじめて受け入れ可能なものかもしれません。
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