円満退社 みんなのレビュー
- 江上剛 (著)
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紙の本円満退社
2008/03/30 21:42
抱腹絶倒の異色の企業小説を読み、定年を考える
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
江上剛が書く小説のタイトルが『円満退社』とくれば、誰しも企業小説あるいは銀行が絡んだ経済小説と思うのが当然である。実際におきた事件のモデルがあって、それを解き明かしていくと期待する。
本書は、読者に見事な肩透かしを喰わせる。銀行が舞台の小説には違いがない。そこまではよい。主人公は定年直前の某銀行支店長である。無事に定年退職を迎えたい心境である。
ところが、銀行の営業店で起こりがちな事故が頻発する。しかも同時多発に、同じ日にだ。その日は選りによって支店長の定年退職の日であるという設定である。その起こりがちな事故はとくに銀行に限らず生じるものであるし、同じ日に起こるというのも小説ならではの設定であろう。
そういう意味では本小説は企業小説でも経済小説でもなく、喜劇である。テレビドラマにでもすれば案外楽しめそうなテーマである。当日の7:30から18:30までの1日を描いている。何やら外国のサスペンス小説でも読んでいるような緊迫感である。
この1日は、主人公の岩沢支店長にとっては、人生でもっとも長い日となった。というのも銀行での1日だけではなく、家族を巻き込んでいるからである。この円満退社の日を終えて、それを迎えてくれる家族があってこそ、サラリーマン最後の日を迎える意義があるというものだ。
その土台とも言うべき家族も巻き込んでしまう最後の1日とは如何に? 団塊の世代の大量退職が話題になる昨今だが、この岩沢支店長も団塊の世代に属するわけである。この引退の日の迎え方は百人百様であろうが、自己の歩みを振り返って、妙にしんみりするのも一つだが、本書のような迎え方があってもよいのかも知れない。抱腹絶倒の異色の企業小説であった。
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