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悪魔の種子 みんなのレビュー

  • 内田康夫 (著)
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みんなのレビュー1件

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評価内訳

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紙の本

紙の本悪魔の種子

2010/10/03 21:36

長寿シリーズの真骨頂が本書でも生きている

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 おなじみ浅見光彦の探偵譚である。このシリーズも数え切れないほどのストーリーを生み出してきた。そろそろ、飽きも出ようとする頃だが、私自身はそうでもない。他の作家の探偵モノ、警察モノと比べると、ストーリーの筋立てに工夫があって、論理構成の辻褄に違和感がないのである。それが長く楽しめる特徴であると思う。

 さらには、浅見光彦のキャラクターなどの魅力が大きいせいか、見過ごされがちであるが、殺人事件の犯人探しであっても論理に矛盾がないし、そこにこそこのシリーズが本格的な推理ドラマに仕上がっている所以がある。

 このシリーズは多様に楽しめるようにできているといっても良い。キャラクターやホームドラマ的な要素も盛り込まれているので、毎回同じ人物が登場し、読者を何となく安心させるような効果もある。そこを楽しむ人も多いであろう。

 推理構成のプロセスに面白さを見出す人もいるであろう。その楽しみ方は様々であるが、であるからこそ、長続きしているともいえる。もうひとつは、日本全国を股にかけてほぼ満遍なく話の舞台とするサービス精神であろうか。故意にぼかすところもあるのだが、かなり微細に街の描写などが出てくる。

 本書は米とバイオテクノロジーに絡んだ事件であった。米については戦後政府の政策、消費者の嗜好などによって大揺れに揺れたわけであるが、バイオテクノロジー、この場合は遺伝子操作によって特殊な機能を保有した米も作れるようになってきたというのが、本書のストーリーのきっかけであるらしい。

 山形、新潟、茨城と駆け回る浅見であるが、多いに楽しめた。以前馴染みとなった刑事との再会など、このシリーズの蓄積を無駄にしていない。これも長寿シリーズの一つの特徴かもしれない。推理構成がこのシリーズの面白さであると言ったが、実際には内田康夫が漏らしているように、登場人物などはその場その場で考えて、あとで辻褄を合せるという方法を取っているようだ。本当にそんなことができるのかどうかは実に怪しい限りである。

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