サマー・バレンタイン みんなのレビュー
- 唯川恵 (著)
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紙の本サマー・バレンタイン
2003/05/07 22:51
満たされているのに、迫り来る不安を感じたら…
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yaeba - この投稿者のレビュー一覧を見る
会社で働いて、友達と遊んで、オケイコに通って、飲み会に行って、デートして……24歳OLの主人公・詩織はそこそこ快適な毎日を過ごしている。だが、「皮膚の内側がひりひりするような感じ」や「暗い洞窟の前に立った時のような不安」を不意に感じて泣きたくなる時がある。満たされているのに迫りくる不安と孤独。自分はこれでいいのか?と自問自答を繰り返す日々…。
だが、高校時代の仲間達との6年ぶりの再会を通じて、詩織は昔の自分を思い出す。そして、現在の自分自身を正面から見つめられるようになり、自分の気持ちに正直に行動できるようになっていく……。
文章とストーリーはごく平易だが、それゆえ、心に染みる個所がいくつもある。唯川さんはOLとして10年間勤めていただけあって、OLの心理や行動をよく分かっている。24歳OLが主人公のこの小説は、24歳OLの私にとって身近であり、共感できる部分が多々あった。
この作品の中で、印象に残った台詞がある。
「私、幸福ってものは世の中に存在しないんじゃないかって思うの。不幸はあるのよ。それは現実として存在してるの。でも幸福はないの。ないっていうのはね、つまり、幸福っていうのは現象じゃないってこと。どんなことでもいい、それを幸福だと感じられるかどうかで決まるの。たとえば、ほら、サルビアの花がそろそろ咲きかかってる。それを見て、志織は幸福を感じられる?」(P158)
これは主人公の姉が主人公に対して言った言葉であるが、私は自分自身に言われているような気がしてハッとした。
幸福……。
人はそれなしに、生きることができない。
それが欲しくて、私達は生きるのかもしれない。
しかし、それは「在る」ものではなく、「感じる」ものなのだ。
そして誰だって幸福になれるのだ、それに気づいて、感じることができたなら。
あなたは、幸福ですか?
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