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余った傘はありません みんなのレビュー

  • 鳥居みゆき
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紙の本

紙の本余った傘はありません

2017/07/12 01:40

作家鳥居みゆきの才能を見よ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あずきとぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る

2012年刊。
2015年に文庫化。
著者は、お笑い芸人として知られ、他に女優、MV監督としても活躍し、そして本書を含め小説を二冊出版している作家でもある。
本書は、連作短編集の形を取りながら、それぞれの作品が少しずつ関わりを持ち、全体で一つの物語を形成している。
そうした意味では、各章に分けられた長編作品と見ることも出来る。
最初のエピソードでは、よしえという老女が死期を前にして病院のベッドに横たわっている。
彼女には、ときえという双子の妹がおり、以降よしえの生涯を振り返るように、二人の幼少期からの過去のエピソードが描かれる。
やがて、それらは二人と関わりを持った周囲の人物へと広がり、遂には関係のない人物たちのストーリーとなる。
面白いのは、これらの一編一編が異なる文章スタイルで書かれていることである。
子供の作文、トリックの仕込まれた手紙、複数の入院患者の語り、ミステリ風、官能小説のパロディ、笑いもあればシリアスなものもある。
特に、「クレーム」という一編は、眼鏡屋にクレームの電話をしている一人語りなのだが、著者の一人芝居(コント)の台本なのではないかという最高に笑える作品となっている。
しかし、この一見関係のなさそうなストーリーも読み進めていくうちに、再びよしえとときえの二人へと収斂していく。
この辺りの手腕は見事という他はない。。
そして、最後は感動的な一編で幕を閉じる。
ところで、文庫化に際してこの後に一編の書き下ろし作品が収録されている。
これもまた見事な作品で、改めて本書全体を締める役割を果たしている。
ここにも著者の才能が存分に発揮されている。

著者をお笑い芸人としてしか知らない人に、本書を通して彼女の多才ぶりの一端に触れてもらいたいと思う。

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