剣の女王と烙印の仔 みんなのレビュー
- 著者:杉井 光, イラスト:夕仁
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剣の女王と烙印の仔 1
2009/04/25 19:16
自らの死を見る少女と、死をまき散らす少年の出会い
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
西洋風ファンタジーということで作者の最近の傾向とは少し違う作品なのかな、と思い読み始めたのだけれど、キャラクター的な面では「さくらファミリア!」などの近作を踏襲している。
戦場にあって鎧も身につけず、踊り子の様な服装で大剣を振るうミネルヴァと、獣の烙印による殺戮衝動に怯えるクリストフォロ。そして彼らを保護下に置く、フランチェスカやその近衛たち。無意識に勘違いさせるような発言をすればそれに過敏に反応し、彼らにちょっかいを出して楽しむお姉さん役がいるという構図は、まさに「さくらファミリア!」そのもの。
一方で、託宣を下す女王の下で貴族や神職が実権を握るという政治体系や、女王の力をめぐり争いが起きるという構造は、「火目の巫女」に通じるものも感じる。人気作の良いところを取り入れつつ、あえてこの道を進もうということは、異能ファンタジーを書きたいという強い希望が作者にあるのかも知れない。
問題は、そういう方面の作品を書くと何故かダークサイドに落ちる確率が高いということだろう。今回は何とかバランスを取り、プラスマイナスゼロに止めた感じだが、今後はどちらに傾くのか分からない。最近の、プラス思考、ハッピーエンド思考に傾きつつある流れの勢いを借りて、このシリーズも完結まで突っ走って欲しいと思います。
剣の女王と烙印の仔 5
2010/05/22 19:01
役者たちが決戦の舞台に上がる
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
冥王オルクスの力が取り戻されていくのと呼応するように、急激に高められていく全ての烙印の力。その時を待ち望んでいたかのように、聖都では王太伯や大院司が、そしてそこから遠く離れたアンゴーラでも、テュケーの血を求めた策動が本格化していく。
本国へと戻ったニコロ、未だ黒薔薇章を外すことのないジルベルト、そして、テュケーとオルクスに翻弄されるミネルヴァとクリストフォロ。緩やかにバラバラになって行くかの様に見える銀卵騎士団は、コンクラーベ出席により、絶対的指揮官のフランチェスカまでも軍団から欠くことになる。その隙を突く、王配候ルキウス。
一方、シルヴィアを護り、無益な戦いを止めさせるため、一つの決断をしたジュリオの下にも危機が迫っていた。明らかにされる、テュケーの女神の真の力とは何か。
本当の戦いが始まる前の、役者たちが決戦の舞台に上がる前哨戦という感じがする。だから、前巻の様な派手な戦闘はあまりなく、その分、各所で繰り広げられる出来事の描写が多い。複数に分かたれた流れが時の果てに一つに集まる。その時は次巻以降に訪れるだろう。
シリアス成分が多い代わりに、ほんわか分やいちゃいちゃ分は少なめ。
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