ブランケットタイム みんなのレビュー

派手さはない。でも、だからこそ読ませる恋愛小説。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者：惠。　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

ハジメマシテの作家さん。

本書はフリーペーパー「L25」のモバイル版に連載されていた
恋愛小説を文庫化したものだ。

元がモバイルへの連載だったせいか、
文章が平易でやさしく読みやすい。

情景描写は緻密でも複雑でもない。
登場人物も多くない。
設定も至って平凡だ。

でも…。
いや、「だから」か、よかった。

ところどころ「フィクション」故のご都合主義が
登場するのだけれど、
全体的に至って普通。

主人公はどこにでもいそうな27歳のOLとその彼氏。
出会いはドラマチックだけれど、
長年付き合ってきた関係は今、微妙なところにある。

それはそれぞれに他に気になる人ができたからではない。
会社を辞めてフリーターとなった彼は
自分に自信をもてなくなり、積極的になれず、
そして焦りそんな自分に嫌気がさす。
そしてまた自信を失うという負の連鎖に陥る。

一方の彼女は…
彼のことを愛しているのに
彼を理解できないでいる自分がはがゆく
彼女は彼女で悩んでしまう。

どちらもお互いを思いやっているのに、
いろんな歯車がうまくかみ合わない。

派手さはない。
でも、だからこそじわじわ伝わってくるものがある。

モバイル連載のため敢えて
そういう身近な設定にしたのだろう。
そのアイディアがすごく効いている。

続けて読むのはきついけれど
（恋愛小説は苦手なため）
たまにはこういうのもいいな、と思った一冊だった。