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ブランケットタイム みんなのレビュー

  • 著者:沢木 まひろ
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みんなのレビュー3件

みんなの評価3.2

評価内訳

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紙の本ブランケットタイム

2010/08/02 09:36

切ないほどまっすぐで不器用になるほど大好きな人へ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

神様はどこかにいる---いやなことも平気でしそうな気がする。歩いているのを捕まえて文句を言いたい。27年生きていれば何度か思った。この世には理不尽なことが多すぎる。」(p193より)

同性愛者である「初恋のお兄ちゃん」を前に、慰めることも恋人にしてもらうことも出来ない智子の心の声だ。ここで私は何度も頷き、ただただ涙し、何度も何度もこの部分だけ読み返した。
だってそうだろう? 

「この世には理不尽なことが多すぎる。」

うまく行かないこと、困難や苦しいこと、思いが通じないことが多くて文句を言いたい訳じゃない。
うまく行くはずなのに遠回りして、大好きなのに遠ざけて、大切なのに傷つけてしまう・・・
そんな自分に腹を立てたり悔しがったりしているうちに、切なささえ通り越してどうしようもない思いにつぶされてしまう。大袈裟な言い方かもしれないけれど、大なり小なり、だれもが同じ思いをしたことがあるはずで、だからこそこの作品は私みたいな凡人の心を捕らえたのだろう。

主人公は極普通のOL智子 27歳。亮は優しくてかっこよくて心も体も大事にしてくれる大好きな彼氏だが、亮は大手会社を突然辞めアルバイトを転々とするようになってしまった。
イイ所まで行っては正社員にされることを怖れるようにしてバイトを辞めてしまう亮は、そんな自分がストレスを抱えているのか原因が何なのかも解らず焦り、いっそう追いつめられ、しまいには不感症に陥ってしまう。
そんな彼氏に苦情もアドバイスもしてあげることが出来ず 戸惑う智子。
その様子を申し訳なくも苦しく重荷に感じ続ける亮。
別れ話になるのがつらくてつらいことを切り出せない、ただ生きていれば良いと楽観的に結婚話を切り出好ことも出来ない智子に、このままじゃ結婚どころか彼氏でい続けられるかどうかすら不安になってくる亮。
そんな二人のじれったさが各章ごと、智子と亮の視点で二人の近況とともに交互に描かれて行く。

二人はお互い「大好きだよ」の言葉を交わしどうにか身体を重ね、少しずつ回復していくが、それでも一度作られた小さな「結び目」は解かれること無くなおざりにされている。

心に残したままの小さなわだかまり、それは信じきることが出来ないという後ろめたさそのものだ。

智子は優しいだけに脆い彼の心を傷つけてしまうのが怖くて、云いたいことも云えないでいる。
亮は職に就けず「次」を考えることすら出来なくなった自分に自信が持てなくて、結婚から逃げている。

二人ともお互いが大好きなのに、大好きだからこそ信じきることが出来なくなっている。
そんなこと、きっと誰にだってある。恋人同士だけじゃない、親子だって、友達だって、きっと
誰もが大好きな人を目の前にして、嫌われたくなくて、怖くなる。

そんな当たり前の、極普通のことに、彼らは心底悩んで、悩んで、よりいっそう傷つけ合っている。
だからこそ、私みたいな「普通」の読者が共感したり、切なくなったり、応援したくなったりする。

彼らの周りを固めるサイドストーリーもまた面白い。
智子の同僚、同僚の恋話、上司に後輩、両親、兄弟、友人に、新しい出会い‥‥‥
誰も彼もがそれぞれに辛い過去や悩み、苦しみを抱えている。
それでも今日を明日を生きようと、様々な出会いの中でもまれつつ「再生」の糸口を見つけ出して行く。
そう、沢木氏の作品にはいつだって、あたたかい再生がある。
この物語の結末は、ご都合主義かもしれない、現実的な解決は写しかもしれない。
けれど、それでもいい、再生してくれなくちゃ、私だって生きて行けない。

そしてその再生の糸口をたらしてくれるのは、いつも家族だったりする。
沢木氏の作品の多くに、とても個性的で素敵なお母さんや良い所をもって行く兄弟、見守ってくれる父親が出てくる。もしかしたら沢木氏の家族がそうであったからかもしれないし、多分、世の中の多くの「家族」もそうなのだろう。
そんな家族に、あるいは自分を育んでくれた人々に支えられて、私たちは困難を乗り切って行く。

本書には何組もの男女が登場し、大人のくせに不器用ですれ違ったりぶつかったり、どうにもうまく行かずに悪戦苦闘している。似たような経験を私の周りにもしている人はいるだろうし、亮と智子のように切ないほどひたすらで、まっすぐなだけに不器用なカップルだっているだろう。
けれど人を思うことをやめないでほしい。本音をぶつけることを忘れないでほしい。
もしかしたらそれは相手を傷つけることになるかもしれないけれど、それが信じているということなのだと 本書は一つの答えを出してくれた。

切ないほどにまっすぐで、不器用になるほど大好きな人がいる恋人持ちさんへ。
この作品がきっとなにかの救いになると思う。

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