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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんとか出版されてくれよと思いながら読んでた。
間に合って良かったね。
しかし、馬琴ってーのはひどい奴だね。
朝井まかてさんも、昨年あたり書いてなかったっけ?
今年の大河にもきっと出てくるよね。
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自分の出版したばかりの熊野古道の本でずっと鈴木牧之を追いながら書いた。なので出版直後に本屋の店頭で鈴木牧之の文字を見てすぐ購入。こんな偶然はあるのかと。しかし残念ながら、熊野古道の話はチラッと前半に関西方面へ旅したと書かれるだけ。若い頃に書いたものだったのだ。
しかしそれとは別に江戸時代の出版事情が実在の人物中心に描かれて面白い。というか結局出版事情は昔から変わっていないのだ。本当に出版社から出そうと思えば全く今も同じだろう。もっともamazonからの自己出版によって別の方法も出来たのだが。
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物語は蔦屋重三郎の死後、山東京伝や曲亭馬琴などの戯作者が活躍している江戸後期時期。京伝は押しも押されぬ人気作家であり、馬琴は『南総里見八犬伝』の執筆を始めようかという時期。
当時の新潟といえば、江戸からしてみれば未知の国。豪雪地帯での暮らしなど想像もつかない。さらに鈴木牧之が物語ではない、現(うつつ)であると語っている奇譚。送られてくる物語に惹かれた京伝は、出版を試みるが、実績のない書き手であるので、伝手のある出版社は何色を示すばかり。京伝の死後は、馬琴が引き受けたかに見えたが・・・。
内容についてはここで書けないが、いやもう、読んでいて儀三治(鈴木牧之)の胸の内を図ると、如何ともし難い心にさせられる。彼はきちんと商売をしながら、心の赴くままに雪国のことを書き溜め、絵にしていった。その真摯な心とどこまでも生真面目な人柄は、文章の固さにも現れ、文学的要素に乏しかったかもしれないが、その生真面目さが、山東京伝や馬琴の心を動かしたのだと思う。しかしその後、こうも長引くとは。
山東京伝や曲亭馬琴、そして鈴木牧之が交互に語られ、時が進んでいく。牧之の思惑がなかなか江戸に伝わらない様子や、江戸からの文の内容に疑心暗鬼に陥ったり、出版に至るまでの長すぎる道程。『北越雪譜』となるべき原稿の行方についても衝撃的な展開が訪れる。
どの人物の心も細やかに描かれ、山東京伝や曲亭馬琴、そして山東京伝の弟である京山は、こういう人だったに違いないと思わせる、木内昇の筆が冴え渡る。
満足できる一冊だった。
馬琴については過去に下記の2冊を読んだが、木内昇の馬琴が一番辛辣であった。
『曲亭の家』 西条奈加
『秘密の花園』 朝井まかて
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良いですね。
越後塩沢の商人・鈴木牧之が越後の風俗・奇譚を集めた『北越雪譜』を江戸で出版するまでの40年を描いた作品です。
多くの戯作者、版元が登場します。主人公の鈴木牧之に加え山東京伝とその弟の京山、滝沢馬琴、そして2代目蔦重や文溪堂・丁子屋平兵衛など。特に戯作者についてはその家庭や妻や子も描かれ登場人物の多さにいささか苦戦。また、上手く行きかけては挫折を繰り返す様子を描いた前半はやや冗長な感じもあります。
ようやく出版の夢が叶おうとする前夜。『雪譜』の舞台を我が目に収めるべく越後を訪れた刪定者の山東京山と、中風に倒れ回復途上にある編選者の鈴木牧之の会話。刊行を思い立ってから永い苦難の歳月を経て、年老いた二人が静かに「ものを書く」という事を語り合う姿が妙に印象に残ります。そういえばこの二人に限らず京伝も馬琴も「ものを書く」事について語っています。これがこの小説の主題であり、木内さん自身がこの小説を通して自分にとって「ものを書く」という事は何なのかを見直そうとしているのかもしれません。
それにしても、これまで『秘密の花園』朝井まかてーや『曲亭の家』西條奈加ーでも、主人公でありながら吝嗇や横暴に描かれた滝沢馬琴、今回はまた随分狷介に描かれましたね。まあ史実として仲の悪かった京山側から書かれた物語ですからね。
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おもしろかった。
一気読みでした。
木内昇さんの新刊なので
迷いなく手にした一冊。
刊行するまで40年を要した
『北越雪譜』
ー江戸の人々に雪国の風物や綺談を教えたいー
鈴木牧之はその思いを胸に諦めず書き続けた。
『北越雪譜』
勉強不足でどのような物か知らなかった。
それにしても、しつこく書き続け
刊行に漕ぎつけた鈴木牧之には頭が下がる。
天才肌の戯作者・山東京伝。
反対に努力型の曲亭馬琴。
その対比もおもしろく、当時の出版業界の様子を知ることもできる。
木内さんのおかげでまた世界が広がった。
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40年かけて世に出た鈴木牧之の「北越雪譜」
江戸の人々に雪国・越後の風物や綺談を教えたい
ただそれだけを思い、山東京伝・京山兄弟、馬琴、蔦重などと40年に亘り関わりながらも「北越雪譜」が誕生するまでの話
江戸と越後の距離と、牧之自身の家業がなければ、40年も続けて来られなかったかもしれない
とはいえ40年、ここまで続けられたことが凄い
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江戸時代、越後の鈴木牧之が地元の雪や生活の様子を書いて書物になるまでの長い長いお話。
巻末の装画の記載を目にして鳥肌がたった。ずっと気がつかなかった。牧之さん、本当によかったね。
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刊行を夢みて執筆を続ける鈴木牧之。夢叶うまで40年。我慢強く、諦めない彼の執念に感心するも、やきもきが続く。江戸で活躍中の山東京伝や十辺舎一九らとの交流は微笑ましいが、粘着質な滝沢馬琴の偏屈極まりない人格に辟易。越後の『雪話』が一冊の本になるまでの過程を丁寧に描く著者の妙味に感服。
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男のロマンの執念たるや!
新潟に越してきて、北越雪譜って?と思ってたらこういう話なんだと興味を持ちました。
ともあれフォーカスが色々あってどんどん読み進みられた。文学史好きにも好まれるだろうなー!
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「夢というのは一度見てしまうと、そこから逃れられぬものなのかもしれぬ」
とはいえ、刊行までに四十年も経とうとは。ここまでくると"夢"よりも執念が勝っているのでは。
"越後の鈴木牧之"この名は今回初めて知った。
山東京伝や滝沢馬琴などこの時代の名だたる作家たちを巻き込んでようやく日の目を見た大作『北越雪譜』。"鈴木牧之記念館"も建っているようで、今も彼の地の人たちに親しまれていると思うと他人事ながら嬉しい。
ここ数日日本列島を騒然とさせている最強寒波も、現代の我々はテレビの映像で見ているから各地の状況も知っているけれど、江戸時代には当然知る術もなく。鈴木牧之が江戸の人たちに越後について知らしめたい気持ちもよく分かる。
山東京伝は、NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」で古川雄大さんが演じるらしいので、古川さんの美しい顔立ちを想像しながら読んだ。もちろん初代蔦重はちょっと老けた感じの横浜流星さんを当てはめて。こうなると滝沢馬琴や十辺舎一九は誰が演じるのか(そもそも出てくるの?)。鈴木牧之はさすがに出て来ないよね、と大河ドラマの先も楽しみになってきた。
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越後塩沢で縮の仲買と質屋を営む豪商を継いだ鈴木牧之。
地元の豪雪の中の暮らしを江戸に伝えようと随筆を書き溜め、晩年に版行(板行)した「北越雪譜」の出版にまつわる紆余曲折と、それに関わった江戸の戯作者たちの人間関係を描く。
牧之の依頼を受け、出版の仲介にとどまらず、企画、編集、校正(校合)を行おうとしたのは、当代きっての戯作者である山東京伝や曲亭馬琴たち。
それぞれ乗り気ではあるものの、版元の抵抗に合ったり自らの執筆があったりで話が進まず、十年単位の月日が経つなか京伝や絵師の岡田王山などは道半ばでこの世を去る。
最後に引受けたのは京伝の実弟山東京山。
兄と同じ戯作者だが兄ほどの才能はなく、元武士で実直な性格、作風を持つ。
息子の絵師京水と越後を訪れ二月ほど滞在するなど、真摯により良いものを作ろうとする姿勢は京山親子の責任感や真面目な性格の表れだったろう。
巡り合せに恵まれない牧之の板行にかかる境遇には同情を禁じ得ないが、人生の幕が下りる前に京山という人を得、「北越雪譜」の出版にこぎ着け、あまつさえそれが江戸の地で評判となり続編の出版に至ったことは、牧之にとってどれほどの喜びであり誇りであったことか。
京伝に師事した馬琴と、京伝、京山の関係は、それぞれの言い分が異なるため彼らをモデルとする小説でも誰を主人公にするかによって取る立場が違うが、本書は京伝、京山寄りであり、必然的に馬琴は嘘つきの陰謀家として描かれる。
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最近宮田珠己さんの本で、江戸後期に鈴木牧之なる人が書いた『秋山記行』という民俗誌的な本があるということを知った。娯楽として“面白そう”とまでは思わなかったため、読みたい本リストには入れずメモもしていなかったものの、なんとなく気になって覚えていたら、木内昇さんの新刊の主人公になっているではないか。運命!
しかも、よくよく見ると今の大河ドラマ「べらぼう」に近い時代設定。初代蔦重は亡くなってしまっているが耕書堂は二代目が継いでおり、西村屋だの鱗形屋だの、ドラマで現在進行中のストーリーに登場する本屋さんの屋号も出てきて、常なら頭に入りづらそうな名前や人間関係もスッと馴染み、読むならまさに今!という感じ。
歴史の教科書で見たなという程度にしか知らなかった山東京伝や曲亭馬琴といった戯作者たちも生き生きと描かれ、江戸町人になって彼らの本をあれこれ読んでみたいなあと思った。同じく木内昇さんの『浮世女房世話日記』は、まさに読者の立場で京伝や馬琴の本の感想など書いてあった記憶がある。そちら読み直しても面白そう。彼らの戯作者としての独白は、木内さん自身の作家としての思いに通じるところもあるのかも、との想像も働く。
木内さん作品群における「傑作」感はあまり感じなかったが、今の私にぴったりな題材で大変楽しめた。
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『北越雪譜』が刊行されるまでの四十年とそれを通して描かれる江戸の出版業界(特に山東京伝、京山と曲亭馬琴の確執)が面白かった。現代と比べて圧倒的に地方の情報が少なく、また伝わりづらいなか、知って欲しいという一心で綺談を集め、絵まで描いた鈴木牧之の執念と呼んで差し支えない郷里愛は読んでいて胸を打つ。と同時にだからこそ、遠く江戸や大阪で刊行の話が一方的に頓挫したり版元を盥回しにされた事実に悔しい思いがふつふつと湧きもする。馬琴のキャラクターが峻烈で誰よりも目立っていて印象的だった。
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昔「北越雪譜」を読んだことがあって、どういうきっかけで手に取ったのか思い出せないのですが、原野に燃える火の話は覚えていました。新潟は石油(臭水)が出るので、夏に原油が自然発火するのでしょう。猫又がなぜ出るかはわかりませんが⋯w
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四十年!!
鈴木牧之の「北越雪譜」が世に出るまでの年数である。なんと長きに渡って翻弄され続けたことか。
それでも彼は粘り強く,諦めることなく、生きてこの本の成功を味合うことが出来た。
当時の江戸出版界の様子も描かれる。 山東京伝、十返舎一九、滝沢馬琴と言ったあの当時のスター達も共演。牧之との根の深い絡みも。お互いの意地、張り合い,足の引っ張り合い。なかなか同業者同士はいつの時代も大変だ。
「北越雪譜」の題名だけちらっと聞いたことがあったので手に取ってみたが この様な展開が待っていたとは。でも牧之は頑張った!