紙の本
共通性と独自性
2023/10/30 20:58
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投稿者:しゅんじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
テッド・チャンの『息吹』と並行して読んだので、良くも悪くも中国っぽさを強く感じるが、ちゃんと現代SFになっていて、かの国の市民と我々との共通性を感じさせる。同じような感性なんだなあ、少なくともSF民は。でもやはりチャンと比べると強く感じる異国感。これが劉さんの味なんだろう。一番気に入ったのは「詩雲」と「円」。こんな話は欧米SFからは出てこない。マジックリアリズムの狂気とはまた違うアルタネイティヴ。次点は「郷村教師」か「地火」かな。ブラック・チャイナ・リアリズム。この人は短編の方がいい気がするな。
紙の本
中国はまだ農村部の貧しい所と大都会の輝かしい所が両方感じられるのかも
2023/04/30 20:45
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投稿者:Yodoyabashi - この投稿者のレビュー一覧を見る
題材の選び方にそんな気がした。
貧しい地域とお金持ちの街の両方があるのは日本も、世界中もそうなのだけど、想像で書くより現実感がある書き方がされている。
私はド田舎の出なので、予想も付くところはあるが語れない。
だから共感はするし、書いている事が良く分かるという所まで。
今後出てくる彼より若い作家はもっと均一化して電脳寄りになるんじゃないかな。
電車の移動中に読むのに丁度よい。
紙の本
深い、そして感慨深い
2024/05/05 00:22
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投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編集なので、一編だけ感想を書く。
結構重めの話が多い、しかし、色んな風味のある短編集なのだが、今回は、「詩雲」について。
唐代の詩人、李白については、様々な考察が成されているだろうが、SFの世界でこんなに楽しく造形されるとは思っていなかった。
もちろん、本作は李白が主人公ではない。
視点人物は、伊依という被征服地球人類なのだが、征服者たる大牙なる恐竜もいい味出しているし、何よりも、「神」たる存在のいい加減さ、こだわり具合、何たる傲慢不遜な態度、物言い、そのすべてが愛らしい。
読みながら思わず、何度も含み笑いをしてしまった。(決して声に出すほどの笑いではない。)
中国人の、李白に対する思いも感じられて、非常に興味深い一編である。
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中国SFの短編集といえば、これまでハヤカワで出された「折りたたみ北京」「金色昔日」を読了しており、勢いがあって面白いんですが、割と「これ、SFというより幻想小説では・・・?」と思ってしまうファンタジー寄りの作品も多く(特に「金色昔日」)、まぁ日本SF黎明期もそうした作風が見られましたので、そんなもんかな、と思ってました。
しかしながら、さすがの劉慈欣。直球王道ハードSFを、SF初心者にもわかりやすいエンターテインメントに仕立て上げる腕前は、中国SFの中でも頭一つ抜きん出ている印象です。
収録された作品は、どれも科学的理論に裏打ちされた大ボラ話=ハードSFとしての骨格がしっかりしていて、安定感があります。鴨が特に好きなのは、「円円のシャボン玉」。小さな子供の頃から大好きなシャボン玉の研究を、小さな子供の頃の無邪気さそのままに推し進め、ついには世界を救う鍵となる話。かつては世界中で熱く語られていた「科学が切り開く未来の可能性」を肯定する、清々しい作品です。
「郷村教師」も、結果的に(地球規模では)何も変わらない切ないストーリーではあるのですが、日々の生活には一見して役に立たなそうな知識の存在意義を詩的な文章で静かに知らしめる、隠れた傑作だと思います。SF者として、初心を思い出させてくれる作品ですね。
正直なところ、今の日本のSF者として、若干の古臭さを感じないわけではありません。
でも、昔のSFってこうだったよなー、と思い返しながら、そのコンセプトを劉慈欣が描くとこのように展開するのね、と新たな視点から楽しむことができました。
しかしまぁ、何といっても表題作のスケールのデカさといったら(笑)ある意味、究極のバカSFと言えるかもしれません(←褒め言葉)。この作品がワンシーンに過ぎない「三体」、いやはや恐るべしです。
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読書記録 2023.7
#円
#劉慈欣
『#三体』は長編ならではのスケールの大きさがあったけど、長すぎて散漫になることも。『円』は短編なので、作者の着眼点を楽しむことができて、SFエッセンスが凝縮されてる感じ。短編ならではのスピード感もよき。
新海監督の帯コメントにひかれて買ったけど、期待通りだったよ。
#読書好きな人と繋がりたい
#読了
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中国SF界の至宝と言われる著者の短編集で、13編が収録されている。
著者の「三体」シリーズが去年読んだ小説の中でも、ぶっちぎりで面白かったので、この短編集が文庫化されて発売されるのを楽しみにしていました。
表題作の「円」は、軍隊による隊列で人間コンピュータをつくるという内容で、その他の短編にも、秀逸な設定があったり、
何より、主人公の行動が思わぬ大規模な変化を引き起こしてしまうような、個人の行動が世界の命運を変えるような、怒涛の展開をみせるストーリー構成が魅力だと思います。
短編集なので、1つ1つは読みやすい文量でもあるので、普段SFを読まないという人にも読んでもらいたい短編集です。
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三体の中に含まれる要素が以前から散りばめられていたというのが分かる作品集。あとがきにある通り、三体が分厚すぎて中々手を出せない人にオススメ。作者の描く壮大な宇宙SF×個人レベルの手触り感のある問題の掛け合わせを体験できる。
個人的に好きなのは、メッセンジャー、詩雲、円円のシャボン玉かなー。
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古き良きとでも言おうか。SFと言えばこういう風な話だった時代が日本にもあったね。変化にはそれなりの理由があるのだが、小難しくなりすぎた国産SFなどからは失われてしまった、物語の原初的パワーみたいなものがあるのも事実。それを改めて気付かせてくれるような作が並ぶ。こういうのって筆力とか馬力とか呼ぶんだろうか。個人的ベストは「カオスの蝶」。
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テッド・チャンの『息吹』を読んだ時と同じくらい,作者の描く世界にのめり込んで読むことができた。こちらの作品の方が小難しくないというか,肌感として理解しやすい。次は『三体』三部作を読んでみよう。
「郷村教師」「円円のシャボン玉」が興味深く読めた。中国をはじめ新興国では最近まで(今でも?)電気もない田舎に人々が暮らしていて,離れた街の発展ぶりとの格差だったりを実際に見てきていることが作者の背景としてあるのかなあと。自分はもう生まれたときに家庭に車やテレビや固定電話があった世代で,今のドローンやスマホもその延長線上にあると感じられるけど,親や祖父母の世代はエネルギーやテクノロジーによって大きく変化した社会によくついていけたなと思う。もう50年以上前か,祖父が手綱を握る馬橇に乗って駅まで雪道を送ってもらった記憶がおぼろげにある。祖父は車の免許を持っていたのだろうか。でも7人もの子供を教育は十分ではないにせよそれなりに育て上げたわけで,時代の色や勢いって人を左右するよなと思うし,やっぱり教育は大事だと思う。
好きなのは「詩雲」。優れた芸術はハイパーなテクノロジーをもってしても超えられないというテーマ。無限大の試行を重ねれば「神の御業」に届くはず,なのだが,そこには生物の生物たる意志なのか,環境に対応する知恵・偶然なのか,生き残った子孫としての我々に根源的な部分で訴えかける何かがマスターピースとして必要なんだと思う。
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三体は巻数多く、まだ読めてないのでこの短編集を先に購読。どれも設定、世界観、テーマが面白い。シャボン玉の話が、一番気に入ったかな。シャボン玉に魅入られた少女がただ大きく割れないシャボン玉の研究に莫大な資金を投じるが、ある地方の課題解決に繋がっていく。
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アイディアが色々あって面白い。
印象的だったのは
『地火』『栄光と夢』『月の光』『円』
『月の光』はちょっと伊藤計劃を思わせる。
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『三体』はいつになったら文庫化されるのだろう?
と思っていたところに本作登場!
いろんな角度のSF作品で気にいる作品は必ずあるはず!
個人的には『円円のシャボン玉』『カオスの蝶』『栄光と夢』『月の光』が良かった!
順番は付けられません。
鯨歌:鯨を使った麻薬密輸の話、オチが秀逸
地火:炭鉱労働者の為に石炭を石炭ガス化させる話、学者の理論と現場の理屈の話かと思いきや・・・
郷村教師:中国の寒村で子供達に自分の人生を捧げて教育を施す教師の話と、全宇宙の覇権を賭けて争う巨大帝国の話が何処で繋がるの?
繊維:パラレルワールドの話
メッセンジャー:有名な理論物理学者のもとに若者が現れた!?その若者の正体は?
カオスの蝶:バタフライ効果を技術として確立した話
詩雲:伊依、恐竜と李白の詩作の旅!?この3人の関係は?テクノロジーによる芸術の限界に挑む!
栄光と夢:戦争の代替手段?経済制裁により衰退していく国家とアスリートの話
円円のシャボン玉:シャボン玉を科学する、シャボン玉に魅せられた少女の話
二〇一八年四月一日:寿命を三百年に伸ばす為には会社の金を横領しなければならない、若者は悩む
月の光:エネルギー問題、何かを選ぶと何かが狂う・・・
人生:産まれてくる胎児と母親の会話
円:始皇帝暗殺のエピソードから始まる、当時のスパコン開発
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短編集なのに一気読みしてしまいました!最高傑作揃い!劉慈欣氏の作品は『三体』を最初の1冊だけ読んだことがあるのですが、いろんなアイデアをひとつのストーリーに押し込むより、短いストーリーでサクッ、サクッと読める短編集の方が私は良いと思いました。世界観もひとつひとつのアイデアに合わせているので、壮絶だったり、底抜けに明るかったりバラエティ豊かな感じです。
個人的には、自然と立ち向かう『地火』、壮大すぎるコメディ『詩雲』『月の光』が超オススメ!『円』もオチまで考えるとやっぱり短編にしなおして良かったと思います。未来への希望感も、貧乏の描き方のエグさも日本の作品にはないものがありますね。西側諸国の価値観マンセーじゃないところも中国作品の良さでしょうか。ほかの劉慈欣氏の短編作品もぜひ読みたい!!
…と、その前に、『郷村教師』を読んで、科学の基礎を勉強しなおそうかな~と思っちゃったり(^_^;)
追記:『三体』の方はイマイチみたいな書き方をしてしまいましたが、別の方のレビュー曰く、『三体』の5冊目のラスト100ページが最高らしいです。…やっぱり『三体』も全部読むべきだろうか…むむむ。
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おっと、これはなかなか…つい一気読みしてしまった。
何処となく過去の名作SFのエッセンスが感じられるSF短編集。
それもクラークから藤子F不二雄、野尻抱介や小川一水、イーガンまでと幅広い。
テクノロジーを推し進めた結果、見慣れた風景を、世界の在り方を(良くも悪くも)まるっきり別物に変えてしまうというSFならではの楽しさを味わえる。
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《目次》
・「鯨歌」
・「地火」
・「郷村教師」
・「繊維」
・「メッセンジャー」
・「カオスの蝶」
・「詩雲」
・「栄光と夢」
・「円円のシャボン玉」
・「二〇一八年四月一日」
・「月の光」
・「人生」
・「円」
・ 訳者あとがき/大森望