しゅんじさんのレビュー一覧
投稿者:しゅんじ

蜜蜂と遠雷 上
2020/08/10 13:52
下巻を早く読もう
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完全に出遅れたが、これは傑作だなあ。直木賞と本屋大賞のW受賞も納得。なんだろう、別に悲しいシーンとか感動的なシーンじゃないのに、読んでてふいに涙が出てくる時がある。特に明石のシーンがやばい。歳をとって涙もろくなってはいるんだが、それとは違うような気がする。映画化したらしいが、これは難しいぞ。早く下巻を読まんと。どう着地するんだろう。普段の恩田さんなら予測がつかんが、今回は直木賞だからなあ。楽しみ。

スキャナーに生きがいはない
2017/03/15 20:45
ファンの悲哀
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「アナクロンに独り」を読むためだけに買う。そして結局全部読む。旧版を持ってるのに。そして『ノーストリリア』も徹夜で読んじゃう。今日も仕事あるのに。コードウェイナー・スミスというのは私にとってそういう作家なのです。

沈黙のパレード
2021/11/14 13:51
『X』で唯一引っかかっていたトコを解消
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うまいなあ。帯にヒントが書いてあっても、最後まで驚ける。最後の数頁まで二転三転する真相といい、『容疑者X』を読んでなくても楽しめるが、読んでいても同じパターンかと思わせて、それを裏切る工夫。それでいて『X』を読んでいれば湧き上がる感慨、湯川の心情がしみる。『X』で唯一引っかかっていたトコを解消。傷があるとすれば、マスコミやネットによる社会的制裁がキレイに取り除かれているところか。今の日本では、無罪になっても被害者家族でも無傷ではいられない。嫌な国になったもんだ。

熱帯
2021/10/10 02:51
本についての本はたいてい当たり
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これはすごい。直木賞候補になったときから面白そうだと思ってたけど、文庫化したので読了。幻の本というテーマはいつも面白い(『薔薇の名前』とか『アラビアの夜の種族』とか。『鉄鼠の檻』もそうか)けど。物語の登場人物が語る物語の登場人物が語る物語の、という構造が延々続き、何層になっているのかもう分からない。若い頃ならメモ取って数えたんだろうけどなあ。重ねていっても、最後は最初に戻るというクラインの壺構造も、予想してても面白い。なぜ受賞を逃したのか分からん。

文字渦
2021/02/17 16:50
ドが付く傑作
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ドが付くほどの傑作。書いてあることの半分も判らないが、傑作であることだけはワカるなあ(笑)。長編数冊分のアイデアが詰め込まれていて、アイデアとガジェットの密度に目眩がする。境部石積の「新字」とかルビの反乱とかアミダ・ドライブとか。まさかインベーダーゲームまで出てくるとは思わなかったが。巻末に参考文献が挙げてあるが、まさかこの参考文献達も、自分からこんな小説が生まれてくるとは思わないだろうなあ。

戦国日本を見た中国人 海の物語『日本一鑑』を読む
2023/09/17 20:36
初めて知ることばかり
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『日本一鑑』は前から知っていたけど、書いてあることはともかく、作者がどんな人かまではよく知らず、漠然と「明の役人」なんだろうなあ、くらいに思っていた。盲点。色々そこにもドラマがあるんだな。国をまたいで移動した人の話は例外なく面白い。でも惜しいなあ、もう15年遅く日本に来ていたら、信長や秀吉のエピソードも書き残していたろうに。

山怪 山人が語る不思議な話 朱
2023/04/08 01:26
怪異はきっとなくならない
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安定のクオリティ。シリーズ中で一番良かったかも。同じ話が多いようで、意外にバラエティに富んでいる。良かったのは、コロナ禍で取材が滞った、その緊張感のせいか。山の怪異は今まさに消滅しようとしているんだろうが、多分怪異は無くならない。<拾遺>にあった、怪異かと思ったら女子ワンダーフォーゲル部だったというのが、面白かった。これは謎解きではなくて、怪異発生の瞬間なんだろうなあ。

ギケイキ 2 奈落への飛翔
2021/11/28 23:59
脳がしびれる感じ
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単行本が出たときにはビビって読めなかったが、文庫化を機会に購入読了。平家滅亡がすっ飛ばされてるのに驚愕だが、そうか、本家『義経記』がそうなんだなあ。知らんかった。相変わらず誰一人好きになれそうな奴は出てこないが、混沌のエネルギーが溢れるような二作目。まさに中世という感じ。ともかく読んでるときに息継ぎが出来ない感じ。疲れるというか脳がしびれる。

室町は今日もハードボイルド 日本中世のアナーキーな世界
2021/09/26 17:25
やっぱり中世史はイイ
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清水さんの文章はとても愉快。なかなかこういうユーモアに溢れた文章は書けない。こういう書き手が現れる研究分野は元気があるってことかなあ。やっぱり中世史は面白い。建前ではなく、「多様な価値観を認める」というのはこういうことなんだということがよく判る。中世的な世界に住みたいか、江戸中期的な世界に住みたいのか好みは割れるだろうなあ。

偶然の聖地
2021/09/18 21:48
デバックスタート!
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単行本で読んでたが、文庫化したので購入。宮内作品は好きだけど、これは抜群に好みだった。昨年度の本のベストかも知れん。どこへ転がっていくか判らない展開、驚きのメタな仕掛け、魅力的なガジェット、満載のジョークや笑い。しかもハッピーエンドで読後感がとてもいい。第二部のiが付いてる章は、虚実が判らないか、虚ってことなんだろうが、読み返さないと本当の構造は判らないよなあ。それにしても、何かの折に小さな声で唱えてみたい「デバックスタート」。
2021/01/04 21:41
現実が本作をなぞっている
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基本、コミックスは登録しないんだけど、この時期にこれは別。『インハンド』は読んでたので、筆力があるのは知ってたけど、これと『リウーを待ちながら』に描かれていることは、現在進行していることと全く同じ。違いは新型コロナはハンターほど強毒で無いということだけ。正しい知識があれば、マンガでだってここまで描ける。なのに、なぜ。

マーダーボット・ダイアリー 上
2020/02/06 23:02
久しぶりに痛快
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久しぶりに気楽に読めて楽しいお話。お話は古典的すぎて安心して読める(これはあんまり褒めてない)が、ガジェットやキャラクターがとてもいい。コミュ障のロボットが引きこもってドラマばっかり見てるとか、ツンデレの宇宙船とか。特にARTがいいな。弊機は人見知りの草薙素子みたいだし、ARTは『敵は海賊』のラジェンドラみたい。弊機に性の要素がないのが意外に効いてるような。

ギケイキ 1 千年の流転
2019/09/23 00:50
ビックリ。
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初町田本。清水克行氏の本の紹介で読みたいと思ってたのをようやく読了。筒井康隆を初読みしたときくらいのビックリ感(衝撃、というのとは又違う)。特に後半の大部分を占める弁慶のエピソードは爆笑の連続。セリフがすげえよなあ。続きが出たんやな。これは読まなきゃあなあ。

猟犬の國
2019/07/06 13:59
妙に高いリアリティ
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ハードボイルドとユーモアの混合具合が最高。妙にリアリティも高く、なんだろう、とても続きを読みたくなった。和製スパイものとしては出色の出来だと思う。さすが。