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紙の本
へたも絵のうち (平凡社ライブラリー)
著者 熊谷 守一 (著)
朝起きて奥さんと碁を打ち、昼寝して絵を描いて寝る−。その絵が「天狗の落とし札」と呼ばれた超俗の画家・熊谷守一から紡ぎ出された思い出の数々。日本経済新聞社1971年刊の再刊...
へたも絵のうち (平凡社ライブラリー)
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商品説明
朝起きて奥さんと碁を打ち、昼寝して絵を描いて寝る−。その絵が「天狗の落とし札」と呼ばれた超俗の画家・熊谷守一から紡ぎ出された思い出の数々。日本経済新聞社1971年刊の再刊。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
熊谷 守一
- 略歴
- 〈熊谷守一〉1880〜1977年。岐阜県生まれ。東京美術学校で黒田清輝らに学ぶ。洋画によって二科展に出品、後に日本画に転向。戦後も精力的に創作・個展を行う。著書に「ひとりたのしむ」など。
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紙の本
偉大なる「ふつう」
2003/06/01 18:08
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヨーダ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は91歳の熊谷氏が記者を前にして語る内容を採録したもので、昭和46年当時の日本経済新聞に「私の履歴書」として連載されたという。
語り手との信頼関係を築き、相手が十分心を開いていなければ、ここまで「聞き語り」はうまく運ばなかったのではと感じる見事な内容である。担当した記者の名前を知ろうと思って探してみたが、本の中には見つけられず、無署名である。ただ、ふだんの話をまとめて掲載するのも嫌がったという熊谷氏からこれだけ話をひきだした聞き手の力に感じ入ってしまう。
赤瀬川原平さんは解説で「感受性の浸透圧の、同質の聞き手にめぐり合った」のではないか、と指摘する。そしてこうも書いている「熊谷さんは文章をほとんど書かないけれど、言葉に対しては絵と同じような敏感さを持っていたのだろう。〈略〉論理化できない微妙なニュアンスのところをあれこれ考えるものにとっては、それを単純な論理でまとめられるのが生理的に耐えられない。一言ではいえないことだから、ひょっとしたらその場のタイミングでしゃべっているのに、そんなタイミングを無視して言葉の意味だけでまとめられたんでは、ぜんぜん違うものになってしまうし、そういう粗雑な神経が嫌なのである」と。
これはそのままマスコミジャーナリズムの取材姿勢を厳しく問いただす言葉とも受けとめられるんじゃないかと思う。記者にコメント発表することを毛嫌いするようになるスポーツ選手の理由もこれに近いものがあるのではないか、と。
さて画家である熊谷さんは、言葉に対してどんな想いを抱いていたか。探してみると本文中にこうあった。「一般的に、ことばというのはものを正確に伝えることはできません。絵なら、一本の線でも一つの色でも、描いてしまえばそれで決まってしまいます。青色はだれが見ても青色です。しかしことばの文章となると「青」と書いても、どんな感じの青か正確にはわからない。いくらくわしく説明してもだめです。私は、ほんとうは文章というものは信用していません」。
なるほど、最終的なところでは信用していないのか。すごい。言葉のもつ意味とその定義性は一面とても便利なものだけど、反面ひとはその意味に捕われすぎて、言葉に振り回され、本質を見失ってしまうこともある。言葉によって世界を正確にとらえようとすることなどはこの画家にとって、とても不遜で胡散くさいものに映っていたのかも。
では、本職の描くことの力を無邪気に信じていたのか、というと、そうでもないんである。ここがとてもおもしろいところだ。
「人間というものは、かわいそうなものです。絵なんてものは、やっているときはけっこうむずかしいが、でき上がったものは大概アホらしい。どんな価値があるのかと思います。しかし、人はその価値を信じようとする。あんなものを信じなければならぬとは、人間はかわいそうなものです」。
この肩透かし感、力の抜け具合はいったい何なんだろうという感じである。しかしそうやって言われてもちっとも不快ではないから不思議だ。絵を描く一人間として、そこに執着する自身もかわいそうな存在に含みつつ、そこをどこかで超越している。本人はそう呼ばれることを好まなかったというが、「仙人」と言われたのも、むべなるかなである。このひとの生き方をまねしようとしても決してまねできるものではない。しかし偉大なる「ふつう」を生ききった希有なひととして、「ふつう」軽視の時代風潮のいま、さらに見直されてもいい人物だと思った。
*生き方と共に魅力溢れる作品にふれるには、旧居跡に建っている熊谷守一美術館がオススメです。http://plaza10.mbn.or.jp/~kumagai_morikazu/
紙の本
へたも絵のうち
2021/01/08 18:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
郷土の天才画家として有名な熊谷守一氏の著書です。
題材は身の回りの草花や昆虫など何でも興味を示し、こよなく愛して注意深く観察して筆を運ばせる。
名誉や金銭欲はなくただ仙人の如く画業にいそしむその姿に崇高さを覚えました。
紙の本
フォービズムの画家と位置付けられる熊谷守一氏が晩年に人生を振り返って書いた一冊です!
2020/05/12 10:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、日本の美術史においてフォービズムの画家と位置付けられている画家、熊谷守一氏が晩年に自分の人生を振り返って書いた一冊です。熊谷守一氏は、フォービズムとは言いながらも、作風は年を追うごとに徐々にシンプルになり、晩年は抽象絵画に接近したとも言われています。富裕層の出身であるにも関わらず、極度の芸術家気質で貧乏生活を送り、「二科展」に出品を続け、「画壇の仙人」とも呼ばれました。勲三等や文化勲章に選ばれていますが、どちらも辞退されています。同書は、そのような熊谷守一氏が90歳になって語った口述本です。同書の中には、仙人のような風貌と自由奔放な生活、波乱万丈の人生、極貧の時も描きたい絵しか描かなかった暮らしなどが朴訥とした語り口で記述されています。