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深くておいしい小説の書き方 (集英社文庫 ワセダ大学小説教室)
ワセダ大学小説教室 深くておいしい小説の書き方
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紙の本
ワセダ大学小説教室・第2弾
2002/03/06 00:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第1弾「天気の好い日は小説を書こう」は、三田氏曰く「小説の書き方の基礎の基礎の基礎」であったが、第2弾の本書は「基礎の基礎」。ワンランクアップしたわけだ。
前回の小説指南は「接続詞を使うな」「手垢にまみれた表現を使うな」等、実践的で分かり易いものだったが、本書は前回と比べると少しばかり難解になり、文学の構造や実存といったところにまで話は及ぶ。
「そんなことより、手っ取り早くデビュー出来るような小説の書き方を教えてくれ」と言う向きもあるかもしれないが、そうした心構えではプロを目指すことは出来ないのだろう。このシリーズの魅力は小説の書き方だけではなく、読み方にまで話が及んでいるところなのだ。それでいて文章は読み易く、面白い。
紙の本
「単なるバカ」にはまずお薦め、でも「ヘンタイ」には…
2003/01/28 23:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アキノ - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めに断っておくと、ここで言う「ヘンタイ」は小説を書く人で「単なるバカ」は書かない人のことである。筆者は冒頭でそういう区分けをしているので、その流儀に従ってここでも同じように(一応かぎカッコつきで)呼ぶことにした。
基本的にこれは「ヘンタイ」用に書かれているが、「単なるバカ」にも十分にお薦めだ。「単なるバカ」は文学がとっつきにくくて理解しがたいものと思っているかもしれない。僕もそう思っていて、その理由は僕が高校の現代国語の授業で判明した。僕は大学時代を含めて、16年(浪人も含めると17年間!)も教育を受けてきたのだけれど、悲しいかなほとんどの授業で何をしていたのか覚えていない。そんな中で唯一、いまでも強い衝撃を思い出せる授業がある。高校のときに現代国語でやった『舞姫』の授業だ。小学校から国語の授業というのは、漢字と文法を覚える以外は何のためにやっているのかさっぱりわからないものだった。だが、『舞姫』の授業は違った。歴史的背景の把握から始まり(そのこと自体が驚きだった)、『舞姫』が書かれた意義まで解説しきったその授業は、「これが『舞姫』に関するもっとも新しい解釈です」という格好のよい締めで終わった。僕はそのとき初めて、文学がもつ深さと面白さに触れたのだ。しかし、同時に他の文学を読んでわかるにはどうもかなり教養が必要だということもわかってしまったのである。めんどくさがりの僕には、これは避けるに十二分すぎる理由だった。僕の文学に対する理解は、それっきり深まらなかった。
だが、実はもうひとつ文学を楽しんで読む方法があった。『舞姫』がわかったのは、先生の導きがあったからだ。だったら、あらかじめ、どこが面白いのか解説してもらえばよいのである。本書はドストエフスキーの大作『罪と罰』を小説の書き方の題材としてとりあげ、どこがどんな風に面白いのかわかりやすく、詳しく解説している。『罪と罰』を読んでつまらなかった人も、まだ読んでいない人も、これを読めば楽しめるようになるはずだ。そんなわけで、この本は「単なるバカ」で文学がいまいち楽しめない人、つまり大多数の「単なるバカ」にも十分お薦めなのである。
では、「ヘンタイ」にはどうなのだろう。僕もたくわんのヘタ程度の「ヘンタイ」の端くれなので「ヘンタイ」の悩みもある程度わかっているつもりだ。その経験から考えると、「ヘンタイ」初心者または「ヘンタイ」志願者にはあまりお薦めしない。なぜなら、初めのうちはまず「書くこと」が重要だからである。書く前からこれを読むと、考えすぎて書けなくなる可能性が高い。どうしても何か指針が欲しい人は、幸いにしてこの前の講義録『天気の良い日は小説を書こう』がある。それだけを読んでとにかく書いてみることが大事だ。その上で何本か書いてみて壁にぶつかった人には、非常に示唆に富んだ内容になっている。
つまり、この本は大多数の「単なるバカ」と悩める「ヘンタイ」にお薦めな本なのである。