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商品説明
キャリアも積んだ。名声も得た。だが、俺に何が残されたというのか。過ぎ去った時、遠い出会い、苦い別れ。閃光が灼きつけたせつない記憶。50歳のカメラマン喜多川の脳裏によみがえる熱き日々を描く連作小説。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
真保 裕一
- 略歴
- 〈真保裕一〉1961年東京都生まれ。千葉県立国府台高校卒業。アニメーションディレクターを経て、91年「連鎖」で江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。他の著書に「ホワイトアウト」「奪取」など。
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紙の本
本を読んでから、もういちど目次をみると何かが見えるよ
2002/10/16 20:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
真保裕一に関しては、人の評価と私のそれが大きく異なる。いつも、それが気になって仕方が無い。とくに、その差が出たのが『奇跡の人』と『ホワイトアウト』。私には、主人公の自分のことしか考えない正義感が、鼻について仕方がなかった。むしろ、『トライアル』で見せてくれた人情や、江戸川乱歩賞作『連鎖』などのクールさのほうが遥に好ましい。今回の小説も、おもわず「うまいなあ」と唸ってしまった。これは、推理小説ではない。カメラマンの人生を年齢で区切りながら、芸術家とは何かを、五つの短編で描く連作小説である。
或る日、ベテラン写真家喜多川光司の前に母の写真を撮って欲しいという娘が現れる。プロのカメラマンに依頼するということがどういうことかを素人に教えてやろうと、被写体がいる病室に向かった彼は、死を迎えようとする人間を前に自分の傲慢さを知る。人間が、若いとき、如何に愚かで、傲慢であるか。それが年を経ることで、どう変化し、あるいは変化しないのか。人間の弱さ、そして気高さ。それらが、考え抜かれた構成と相俟って、素晴らしい成果を産んだとしかいいようがない。
「慣れと計算と年期で仕事をした10年、代わりに失っていくもの」といったことばに、看護婦の仕事に慣れたことをベテランと言って、すこし流し始めた自分の態度をたしなめられたような気がする。社会派の作家として出て来た時は、どちらかと言うと理知的な作風という印象だったが、『トライアル』で小説作りの腕をあげた。それが今回は、泣かせるだけでなく、さらに人間のあり方を深く考えさせるようになった。これが『発火点』に結実していくのかもしれない。