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紙の本
井上ひさし全著作レヴュー19
2010/09/15 21:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:稲葉 芳明 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「朝日新聞」日曜版1974年4月~1975年4月に掲載された52篇を収録。
『家庭口論』『続家庭口論』は、好子夫人および三人の娘との遣り取りをネタにして語った/騙った家庭エッセイだったが、こちらの方はタイトル通り「男」と「女」、「主人」と「家内」、「亭主」と「奥方」を二元的に語ったエッセイである。人気作家ともなると随筆・雑文の類は山ほど注文があるだろうが、井上ひさしの場合、身辺雑記でお茶を濁したり、世間の喧しさなどどこ吹く風で花鳥風月を愛でたり・・・といった「逃避的」文章は決して書かない。大新聞の日曜版家庭欄に連載されるのだから、担当編集者のみならず読者の方も、恐らく家族揃って楽しく読める万人向け「サザエさん」的エッセイを予想していたはずだが、『家庭口論』以上に辛口の、社会批評的色彩の濃い連載となった。
熱烈なファンとしては不満もある。やはり井上ひさしは、その引き出しの多さ、始めると止まらなくなる蘊蓄症候群、一篇の作品に込めようとする情報量の多さ等々、紙幅が多ければ多いほど面白くなる。だからこの分量では、枕が終わってようやく本題に入った頃に時間切れ・・・という感は否めない。
しかし、一篇一篇は短くとも、52篇も読んでくれば、その背景に一貫して在る筆者の主張はおぼろげながらにも見えてくる。ネタばらしはしないが、最後の「相手はだれか―あとがきにかえて―」を読むと、一見女性批判かつ二元論に見えた「論」に込められた著者の真の思いが明らかにされる。この、作家としての確たる姿勢こそが、井上ひさしを凡百の二流流行作家とはっきり分け隔てているのである。