紙の本
日本を支えた賢人の英知
2001/03/09 10:20
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦後日本は朝日新聞の言うことの逆をやって成功してきたと大阪弁でやんわりとしかしきっぱりと本質を言ってのけた、日本が生んだ最高の国際政治学者の該博な歴史知識に触れる事が出来る本書は万人にお薦め。本当に頭のいい人が書いた本は分かりやすいんです。
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文明がどのように衰亡していくかの可能性を追求した本。 これもまた結構好きな本です。ローマ帝国とヴェネツィアを初め、アメリカや日本にも言及する良書。 高坂さんはお亡くなりになるまで、国際政治論者としてよくテレビなどに出演されてました。
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文明が衰亡する時の諸条件を歴史的にも理論的にも答えてくれる本である。この本は1970年代に出版されたものであるが、現代に慣用できるものもかなり多い。
基本的には国際関係の本であり、個人、社会システム、国際関係などのパワーの総量から文明の行く末を見ている。なぜローマが衰亡したのか、なぜベネツィアが衰亡するのか、そして日本が通称国家としてどうなっていくのか述べている。
筆者の予想は大方当たっているだろう。
日本は戦後通商大国になり、特に湾岸戦争以降プロテクションレント(他国からの脅威に対して準備する費用など)が増加してきている。そしてそのような現状において、もはやアメリカ、アジアなどと枠に捉われた外交をしているようでは遅い。もっと積極的に脅威に対応できるシステム(軍事ではなく対話の面)を構築するべきである。
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ローマ、ヴェネツィア、アメリカの三つの事例から、巨大な文明がいかに流れ衰亡してゆくかをとらえた物語。
まず、ローマの巨大さは明らかで、それが崩壊したことも明らか。しかし、どのように崩壊してゆくかという点では、議論が分かれる。その「議論が分かれる」というのがまさにポイント。ひとつに結論づけられるような、明らかな答えがひとつもでてこず、ギボンの、ウォールバンクの、モンテスキューの、とそれぞれの結論が現れ、ひとつひとつは十分に正しいように見えるが、すべてを説明しきっているわけでもないことも確か。
ただ、それぞれの衰亡論は、それらが書かれた時代とリンクしているらしい。それを手がかりに考えると、「われわれが何を考えているか」が導けるかもしれない。
ヴェネツィアに関しては、著者は結論をずいぶん絞り込んでいる。つまりは繁栄のときに利用できたアドバンテージを利用できなくなったこと、が根本的な原因。
ところが彼らは、衰亡に抵抗し、ある程度は効果を収めた。繁栄も衰亡も一直線ではないということは、ローマ帝国にも現れているが、ヴェネツィアの場合は産業構造の変化という点によく示されていた。そこで次に考えるのは、その「抵抗」が「ある程度」であった理由だ。ここを見極めることは文明にとってヒントになる。
そしてアメリカだ。アメリカとは、西欧文明の極北であり最先端である。開拓し、戦争し、常に新しくあり続けようとする国だ。彼らはヴェネツィア以上に、不透明な未来に熾烈に抵抗していたように思われるのだが、都市は乱れ、ベトナムでは敗れ、工業も福祉国家も揺らぎつつある。
しいてアメリカの失敗を分析し、共通点を挙げるとすれば、都市計画も戦争も計画的であったこと、があるのだろう。「The Best and The Brightest」が企てたものが、現実に敗れたのだ。
これら三つの例を考えつつ、著者は現代日本へ話を導く。その結論はさておくが、ヴェネツィアとアメリカの対比は非常にインパクトがあると思う。ヴェネツィアの前進的改革も、アメリカの戦闘的改革も、あるコンテクストでは敗北を喫したのだ。すべての問題に通用する対策はない、というのがすべての前提となる。
そして、ローマ帝国の結果を見ると、ある時代に完成されたものもやがては崩壊することも明らかだ。これはもはや平家物語の世界に等しい。
つまり、常に繁栄を続けること、少なくとも現状の体制を永遠に続けることは不可能ということが導かれる。あとは、どのように崩壊を遅らせるか、どのように悲劇的な破滅を避けられるか、という消極的な対策を細々と練るしかない。
さて、積極的な結論は出るのか? それは、最後まで読んでほしいから言わない。だけど、おそらく誰もが納得すると思う。残念ながら私には、これ以上積極的な結論を公開する気力もない。
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日本を代表する国際政治学者がローマ、ヴェネチア、アメリカの文明の衰亡について論じた著作。学術書でないため著者の主観的評価が随所にみられるものの、文明がいかに滅びるかを考える手引きとなる。
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高坂正堯著「文明が衰亡するとき」を読んだ。政治学者高坂正堯が1981年に出版した本で、ローマ、ヴェネチア、アメリカを順に取り上げ、最後に日本が生きる道を探る自由な思索の著.
「文明が衰亡するとき」を読んだ:
http://fionfion.seesaa.net/article/151669709.html
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政治学者高坂正尭氏の私的な文明論。自身の歴史に対する深い造詣と至高に裏打ちされた立論は、購入当時の私にとって非情に明快かつ衝撃的な内容であった。1000円(当時)は安かった。良書!
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この本のカテゴリーなんだろ?
歴史?政治?経済?
とりあえずビジネスにしました。
ローマ、ヴェネツィアの衰亡を振り返り、80年代ではあるがアメリカ・日本のこれからを読み解こうとする本。
少し古いが書かれていることは、特に現代でも通じる。
特に日本がアメリカに追いつき追い越そうとしている成長期において、アメリカの衰亡の分析は現代日本の直面している課題に大いに参考になる気がする。
縮こまった日本には、衰退しかまっておらず、意欲的に海外に売ってでるしかもう手がないと確信したよ。
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平成が終わろうとしている。日本衰亡を肯定するわけでないが、タイトルが気になり、81年発行の本書を再読した。そもそも本書は、巨大帝国ローマと通商国家ヴェネツィアの衰亡を20世紀のアメリカと対比しているのだが、ヴェネツィア衰亡の原因が昨今の日本に驚くほど当てはまる(特にp147,156あたり)。これは高坂先生も想定していなかったのではなかろうか。
「その都度目の前の問題に全力で立ち向い、解決して行くことは可能である。それが衰亡論を持った文明の生き方であり、われわれが衰亡論から学ぶものである(p82)」
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ちょっと古いですが、在籍していた国際政治ゼミの高坂・前教授が書かれた書ということで買った本。
装丁は堅苦しそうだけど内容は平易な、タイトルの通り、いかに文明は衰退するかを考察した本。文明の限界点だとか、異質社会が出会ったときに受ける影響だとか。多様性を保持したがる欧州に、帝国化の様相を見せて警戒させるアメリカ。そのアメリカの、国際政治上の失敗の原因と、優越の要因。
「NGO」も「世界化」っていう単語もなかった頃の著作だけれど、そもそも政治って歴史の部分が広いから、むしろつながりが見えてきて読みやすい。
国際政治の本・・・というよりは、世界の見方を養う本?
無知と情熱の組み合わせは、危険だねぇ。とか、日本このままいったら順調に衰亡するね、やっぱ積極的に外でな外!と、仕事の性質上胸にとどめておくべき視点が多いので、社会人になってから何度か思い出しては読んでる。在学中はほとんど読んでなかったのに。
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佐藤優の講演会の参考書籍としてあげられており、読了。
1981年の出版の本だが、ローマ、ベネティア、1970年代までのアメリカの衰退をみながら、歴史の中で財政破綻が引き金になったこと、論理守備から教条主義になって変化を認めなかったこと、1つのサクセスストーリの限界性が見えたこと、などを通じて、文明が衰退し、滅亡する時の問題を提示している。
歴史を知っているだけではなく、歴史から学び、今の自分たちの未来に生かすという意味ではいろいろなことを示唆している。
国際政治学者である著者の書籍を、もっと読みたくなった。
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文明の衰亡について書かれた本
具体的には,ローマやヴェネツィアの衰亡過程が書かれている.
適宜日本の現状と比較して読むと色々と考えさせられる.
決定打となるのはエリートの精神が衰退する時だと感じた.
当事者意識を持つためにも,多くの人に読んでもらいたい.
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世界が変わる、そんな言葉が溢れてるけど、実際滅亡する時ってどうなのよ、っていうのを知りたかったんで。歴史には規則的なパターンがある、その規則を知る良書。
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学長推薦図書。
ローマ/ヴェネツィア/アメリカ/日本の4部構成。
個人的には、この中でローマの所が勉強になった。
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ローマ帝国や通商国家ベネチアはなぜ亡びたのか。
2千余年前、紀元前1世紀頃のローマ帝国は周辺諸国を植民地化せず、同盟国として内政干渉しない寛大な外交によって、600年にわたって永続的に勢力を広げた。しかしローマが拡大し豊かになると、共和制(民主主義)が腐敗した。共和政治の後を受けた政治エリートが、民衆を愚民化した。官僚制が肥大し、重税を課すようになり、巨額の財政赤字によって帝国が破綻していった。
1千年前、11世紀ごろのベネチアは、地中海での海上輸送、香料や羊毛の仲介によって小国ながら、その地理的利点、巧みな二面外交によって経済大国に発展した。新航路発見により香料貿易をオランダに独占されると、羊毛の加工貿易への転換に成功し、通商国家として繁栄した。かつては勤勉倹約なベネチア人であった。国が豊かになり華美な消費と娯楽を楽しむエリートが増えると、冒険を避け、過去の蓄積によって華美な生活を享受しようとした。消極的で結婚しない男子が増え、17世紀になると適齢期の未婚男性は60%にも上昇した。リスクの大きな通商を避け、安定した土地収入に頼るようになると、強国トルコの勃興、周辺国による加工貿易の進展など、環境変化に適応する能力が衰えた。
この本は30年前に書かれたものである。1980年のアメリカや日本は既に衰亡のきざしがあったということか。2012年のアメリカや日本のほうが、もっとローマやベネチアの衰亡期に近い。変化に対応する能力を失えば、通商国家の宿命として、ベネチア同様、衰亡を辿るだろう。