両編を通じ陸軍の軍閥の相克・毀誉褒貶・合従連衡が描かれる。
が、
① 単純に皇道派・統制派という色分けは不可。
② ある一つの事件で皇道派や統制派が陸軍権力を掌握したというものではない。陸軍の組織運営の円滑化には双方に目配せを要。
③ 皇道派・統制派といっても陸軍内部での主導権争いに過ぎず、海軍・政府・政党・財界・宮中に対しては、陸軍という立場を重視し事に当たる(ただし一枚岩というわけでもない)。
補足
① 天皇機関説事件は枢密院内の権力闘争。
② 陸軍からの報道干渉・規制があったことを、関係者の各日記から伺い得る。
③ 天皇機関説排撃がS10年10月以降、ピタッと報道されなくなり、一方、陸軍内部の後継内閣を巡る政治暗闘が始まる時期と軌を一にする等。
④ 当時においては、在郷軍人会の圧力団体としての意味に注目する必要あり。