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Yの悲劇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
Yの悲劇
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紙の本
きわめて現代的な悲劇?
2006/06/07 21:20
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
家族全員がなんらかの精神的身体的障害をもつ大富豪ハッター家を、次々と災難が襲う。一家の長ヨーク・ハッターの不可解な自殺に続く、ハッター家での毒殺未遂事件とヨークの妻エミリーの死。さらに怪事件は続く...全事件の終局後、老俳優ドルリー・レーンにより明らかにされたのは、驚愕の真実だった。
想像を絶するプロット、意外すぎる犯人像、緻密な構成、深刻で重々しいテーマ、すべてにおいて圧巻といえるミステリー文学の最高峰!少なくとも日本においては、最も有名で人気のあるミステリー小説らしい。ことに陰鬱な結末は、きわめて現代的(当時としては未来的か?)な問題を突きつけているようでもある。それゆえ、現代のわれわれが読むとすぐに犯人がわかるのではという人もいるが、はたしてそうだろうか?
クイーンの作品においては、いざ犯人がわかってみると、それがあり得るというだけでなく、あとから事件の顛末を振り返るとすべてが明白に思え、どうして気づかなかったのかと愕然とさせられることが多い。これは、事件の真相を浮かび上がらせる諸々の事実を、最初はたがいにバラバラで無関係であるように見せるテクニックの絶妙さによるものだろう。その点、意外な人物という観点から探りを入れてみると犯人がわかってしまうことの多いクリスティーの作品とは異なる。また前作『Xの悲劇』を読んだ読者は、そのトリックの残像のせいで、あらぬ方向へ推理を働かせるかもしれない。これも作者のマジックと言えよう。
それにしても、この作品中最高のトリックは“blunt instrument”(鈍器)ではないだろうか?無知が生みだした偶然の産物ともいえるこの奇怪なトリックの正体には、だれもがあっと言わされるだろうし、そこには読者をからかうユーモアさえ感じられる。その一方で、不満の残る箇所もいくつかある。特に、最後の殺人に関して、犯人と動機は明瞭であるのに、トリックがはっきりしないまま終わるのは、どうもすっきりせず中途半端な気がする。
紙の本
それでもやっぱり最高傑作
2001/03/12 23:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「飽きた」「古臭い」「もういい」。最近『Yの悲劇』を貶めるような文字をよく目にする。確かにミステリベストなどを選ぶと必ず顔を見せ、充分に語り尽くされたような感もある。それでも私は言いたい、『Yの悲劇』は最高傑作だと。
ちょっと変わり者の家族が集まった大邸宅におきる不思議で気味の悪い殺人事件。その殺人を巡って盛り上がる恐怖。論理的、極めて筋の通った推理を経て明かされる実に以外な犯人。犯人を聞いてさらに増す恐怖。これぞミステリ!という1冊です。
まだ読んだことのない人、ぜひご一読を。もう読んだという人、ぜひ再読を。きっと後悔しませんよ。
電子書籍
ぜひ
2021/02/28 16:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
二回読んでみてください。作者があちこちに犯人の手がかりをおいています。意外な犯人、という面では、何十年前の作品とはいえ、やはり、イチオシ!もちろん、映画化されたり、漫画にもなっていますから、あらすじは知っている方は多いでしょうが……名作です
紙の本
名作です
2014/07/10 13:35
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る
言うまでもありませんが、有名な「4部作」の2冊目です。4つの中で、この「Yの悲劇」が一番にあげられることが多いですが、まず「Xの悲劇」を読んでからのほうが、「Yの悲劇」をより深く楽しめると思います。
紙の本
Yの悲劇
2013/05/20 22:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ホームズ - この投稿者のレビュー一覧を見る
やはり面白いです(笑)犯人の意外性では『Xの悲劇』よりも上だし、レーンが明かす真相もすごいですね。最後はなんとなくこのシリーズの悲劇的な結末を思わせる感じがしました。
これは原書で読んでみたいです(笑)あの凶器のくだりとかね(笑)
紙の本
結末に驚嘆
2002/03/31 23:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:シャーロック - この投稿者のレビュー一覧を見る
エラリイ・クイーンがバーナビー・ロスというペンネームを用いて世に出した、悲劇シリーズの第二作目が本書『Yの悲劇』。主役をつとめるのは、老俳優ドルリイ・レーン。
埠頭から上がった死体は、2ヶ月前に失踪したニューヨークの富豪、ヨーク・ハッターヨーのものだった。死因は青酸中毒。ハッター家の住人は、ヨークの妻エミリー老夫人、詩人バーバラ、遊蕩児コンラッド、淫奔ジル、コンラッドの妻マーサとその子ジャッキー、4歳のビリー、エミリーの先夫の娘で盲目聾唖の三重苦に悩む40歳のルイザら。そのハッター家で、ある日、ルイザに用意された卵酒を飲んだジャッキーが倒れるという事件が起こった。幸いにもジャッキーは一命を取り留めた。しかし、ジャッキーの飲んだ卵酒の中にストリキニーネが入っていたことが明らかになり…。
名作の呼び声高く、本格推理小説の歴代ベストテンでは必ず上位に食い込むのが、本書『Yの悲劇』である。決して期待を裏切らない出来ばえだ。ヴァン・ダインの『グリーン家殺人事件』に通じるような陰鬱な空気が、作品全体を覆っている。しかし、その結末は『グリーン家殺人事件』とは比較にならない斬新さで、われわれを圧倒する。わたしははじめて本作を読んだ後、その結末に圧倒され、しばらく呆然とした覚えがある。あの時受けた衝撃は生涯忘れないだろう。
電子書籍
社会は精神異常者とどのように向き合うべきか
2019/01/21 05:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
家族全員が何らかの精神的・身体的異常を持つハッター家という設定も異常ですが、事件の真相と犯人はさらに驚くべきもので、ドルリイ・レーンが公式に真相を明かすことなく捜査から撤退してしまうところも異様です。もちろん真相は最後にサム警視とブルーの地方検事には明かされますが、そのまま公にしないことを捜査官たちは了解することになります。
最後に残された謎は、犯人が自分の仕掛けた毒を飲んで死んでしまったことが、単なる当人の誤りであったのか、あるいはそこにすべてを見通していたドルリイ・レーンの作為が働いていたのかということです。恐らく作為が働いていたのでしょうが、そこを明確にすると捜査官としてその犯罪を見逃すわけにはいかないので、あえて追及せずに退場することが社会公正のためには得策であるとブルーの検事は判断したということなのでしょう。そこらへんは倫理的に難しいところだと思います。1930年代という時代背景を考えれば、それも「あり」かなと考えられなくもないですが...
社会は精神異常者とどのように向き合うべきかを問いかける作品であると思います。
紙の本
外国ではそうではないのだが日本ではベストミステリーアンケートではこれが第一位になるといわれていた。その理由を考察する。
2003/10/07 00:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1937年に刊行の序文で江戸川乱歩は「『Yの悲劇』は着想のなんともいえぬ恐ろしさと、謎の論理の申し分ない魅力において、探偵小説愛好家の魂に食い入る傑作である」と賞賛した。また別の場所では「この作品にはそういう謎と論理の魅力のほかにもっと大きな魅力がある。それはこの犯罪の動機と犯人とが、ちょっと書き表すことのできないほど、異様で悲劇的で戦慄に満ちていることである。その並外れた着想を読んで私は『アァ、探偵小説のたねはつきないものだなあ。まだこんな素晴らしいのが残っていたじゃないか』と思わずつぶやいたほどであった」とこの作品の犯人像、動機の着想に感嘆している。
私がこの作品を読んだのは40年ほども前のことだ。記憶にはその骨格すら残っていないのだが、ただ犯人だけははっきりと覚えている。それだけこの人物の異常性にはインパクトがあったということだ。
乱歩が読んだ当時、いや私が読んだ当時でもこの手の犯罪は現実にはありえない、だから凡人では思いも寄らない、クイーンという探偵小説の名人にして着想しえた、虚構の産物としての異様性であったはずだ。少なくとも日本では。
ヒッチコックの『サイコ』をはじめて観た時、あの映像と効果音がもたらす生理的恐怖感にはたまげたものだ。ただアンソニーパーキンスの演ずるあれだけの異常人格人間は存在するはずはない、虚構の異様さだと思い込んでいた。ところがその後、日本にも似たような人格がつぎつぎと現れ、事件が現出した。そのときはじめて私は『サイコ』にあった先見性に気がつき、あらためて現実におこりうる恐怖映画であったのだ見直したのである。
『Yの悲劇』を再読して同じような印象を持った。40年前にはこういう犯罪者はいなかった。しかし、いま理解を超えた人格が引き起こすY型犯罪のひろがりに日本中が戸惑っている。
日本ではアンケートなどで古今の海外推理小説ベストが行われると、ほとんど必ず『Yの悲劇』が第1位に選ばれていた。それは日本だけの例外でもある。日本の読者は犯人があまりに異様なために想像することがまるでできず、作者の仕掛けにまんまと欺かれる向きが多かったのではないだろうか、アメリカなどは昔からこんなことがあって、存外多くの読者は犯人を当てることができることから作品がさほど評価されないのかとも思ったりする。さてこの作品を今はじめて読む日本の推理小説愛好者がいたら、昔と違い、早い段階で容易に犯人の見当をつけることができるのではないだろうか。悲しむべきことである。
書評集(よっちゃんの書斎)はこちらです。
紙の本
過大評価
2001/06/30 19:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:女王 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本では名作の誉れ高い作品だが、犯人の設定も、今のご時世なら誰もが真っ先に思いつくだろうし、「Xの悲劇」とは一転して大仰な文体も成功しているとは言いがたい。犯人を割り出すプロセスも、たどたどしい。虚無的な人間悪を感じさせるという点で先駆的だったのだろうが、今ではむしろ牧歌的でさえある。