紙の本
非ヨーロッパ人がヨーロッパで生きることの困難さ
2001/11/25 00:20
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投稿者:ちひ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は33歳からの数年間をウィーンで過ごした。その実地での経験をもとに、非ヨーロッパ人がヨーロッパで生きることの困難さを考察して綴られたのが本書である。
ヨーロッパ人が「中華思想」を持っていることは多くの論者が指摘していると思うのだが、本書に登場するヨーロッパ人が携えているその思想は非常に強烈であるように思われる。だが、どうもこの強烈さは著者の経験に限定されるものではないようだ。ヨーロッパのヨーロッパ人は本当にこんな感じなんではないだろうか。そういう生き方も別に否定はしないけど、ちょっと待てよと思う。
また、この国の大多数の人間とヨーロッパ圏の大多数の人間とにとっての「謝る」という行為が意味するものの違いについては、以前から本多勝一によって指摘されているが(朝日文庫なんてお薦めです)、著者の経験からも、それがやはり事実であることが判明する。(謝らないヨーロッパ人は傲慢で、すぐ謝るこの国の人間は謙虚だ、なんてどうでもいいことが書かれているわけでは全然ない。念のため。)
中島氏と本多氏、二者の言い分を総合するに、彼らは基本的に謝らない生き物であるらしい。そして、その点や他の点でヨーロッパに暮らす非ヨーロッパ人が「郷に入っては郷に従え」を実践しようとすると、すぐさま「○○人は傲慢だ」という批判が来る。世の中はかくも生きにくいモノである。
様々な実例から、ある意味において地球人でいちばん「エラい」(もしくは「エラそう」な)のはアメリカ人やヨーロッパ人であることがわかってくる、そういう本である。これが事実なんだから仕方がない。
だが、他の著作を読むと、著者はウィーンという土地を年に一度は訪れているようである。困難でもなんでも、憎くてもなんでも、好きなモノは好き。だから「愛憎」なんでしょうね。
紙の本
ヨーロッパ人の中華主義
2019/12/18 22:50
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学者である著者がウィーン大学で博士号を取るためにウィーンに滞在していたときのことを振り返って記したもの。著者はウィーンで体験した数々の強烈の出来事をヨーロッパ人の「中華思想」によるものと呼んでいる。私はこれについてはよくわからないが、著者の平等主義に基づく生き方は参考にしたら楽に生きられるかもしれないと思った。
紙の本
読んでいていらいらしてくる
2002/10/08 17:26
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投稿者:つる - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人に対するヨーロッパ人の差別、筋の通らない言い分などを読んでいるだけで、なんだか疲れてしまう。
ヨーロッパ精神との格闘、私にはできない…。
なんだかヘビーな本だったと思う。
ある意味ギャグとして受け取ったらすこしは笑えるかもしれないけれど、まともに読むと本当に疲れます。
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最初に読んだときはふーん、こんなものかと思ったけれどドイツに来て再読したらうなずけることばかり。
私も格闘します!
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彼のウィーンでの怒涛の生活を描いた一冊。いいですよね。こんな苦労も若いときならって感じです。でも大変だったろうな。重みを感じながら読めました。
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2008/10/2〜3.6.9.10
中島さんの著書。これは薦められて読んだもの。
中島さんは12年の大学生活のち、ウィーンに飛んでウィーンの学生となったときの戦闘記とも言うべき一冊でしょうか。
ウィーンでの生活が事細かに書かれていました。
とてもおもしろいです。
執筆の仕方も面白いのですが、なにより、中島さんの経験した話が突拍子もないことばかりで
日本にしか居住経験の私からすると、大変興味の出る面白い一冊でした。
ここから今の中島さんがうまれたんだなーと思いました。
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ギドー先生の処女作。
遠慮がちな筆致が初々しさを物語る。
あいさつを巡ってのドイツ人教師とのバトルは、
彼の言語観を示すエピソードとしてのちのちまで語られる。
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中島先生自身がウィーンに私費留学していた時の話です。相変わらず中島節炸裂。これを読むと、なんだかヨーロッパに行く気がそがれてしまうかもしれないので旅行前に読むのはやめておこうと思う。きっと生きるのがとっても窮屈なんだろうな。おもしろいけど。
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本書は著者である中島義道氏が、30歳にしてドイツのウィーンに留学した経験が叙述された内容となっている。特にウィーン人のウィーン的人間性のようなものを中心に書かれているのだが、、、こんなにすごいものなのかと正直驚いた。詳細な内容は本書を読んでもらえば分かることだが、公然と明確に自身に非があったとしても、私は間違っていなかったと頑なに主張する。「私は完璧であり、あなたが間違っている」と。そんなことを毅然と言える日本の一般人などまずほとんどいないだろう。たまに見かけることはあるが、ウィーンでは日常的にそのような場面に遭遇するらしい。しかし、そのようないわゆる「頑固さ」というものは日本人にも少しはあってもいいのではないかなと思ったりする。そういう意味では、ウィーン人というのは人間的なものを包み隠さず表出しているという点において、個人的に少し羨ましく感じた。このような自己中心的な人が日本社会にいたとしたら、間違いなく社会不適合者、或いは情緒不安定とか、ひねくれ者とか言われるのだろう。だが、自分の信じる価値観に対して確固とした自信がある、たとえそれが間違っていたとしても。このような”思い込み”により、人は自分以外の価値観を度外視した考えで生きることになる。そっちの方が幸せなんだろうか、自分がいかにおかしな人間かということを自覚せずに生きているほうが幸せなのだろうか。このような”いい”意味で頑固な人間になれれば、周りを気にせず生きられる。こんなウィーン的価値観も一概に悪いとは言えないのではないかなと、そう個人的に感じた。
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[ 内容 ]
学士号2つに修士号を1つ得ながら学問への心残り絶ち難く、33歳にしてウィーンに赴いた青年を待っていたのは、“高慢”にして“偏見”に満ちたヨーロッパであった。
他人の不正に敏感で、自己の権利を頑迷に主張する高飛車な人々の中で、諦めてひそやかに暮すか、姿勢を硬くして耐えるか。
青年は決意する、後悔や不安を残さぬため、理不尽な言動に対しては断固戦うと。
潔癖な憤りと涙と笑い溢れる、4年半のウィーン喧嘩留学記。
[ 目次 ]
1 黄昏のウィーン
2 日本人学校教師として
3 ウィーンの日本人社会
4 ウィーン人とは
5 永遠の学生
6 家主との闘い
7 ウィーンでの結婚
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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中島義道はもういいかなと言っていたけれど、読んじゃった。これまで2冊の本を読んでいて、文章は好きだったのです。面白かったです。漱石先生の頃からあるどうしようもないヨーロッパコンプレックスが作品全体に流れてて、それを自覚しつつヴィーンで悪戦苦闘する中島さんのエッセイです。全然、哲学が出てこない。主人公は、30を過ぎて親から仕送りしてもらって留学するという、社会的にちょっと・・・な人でしかない。『若き数学者のアメリカ』を思い出しましたが、藤原さんの場合はアメリカ人に反撥しつつもけっこう上手くやっていたような気がします。中島さんのを読むと、ヨーロッパ人とは永遠に分かりあえないのではないかと思えてくる(笑) まあその辺は、自分で確かめてみなきゃ分かりませんが。藤原さんはその後のイギリス生活の方が嫌だったんだっけか。朝永振一郎の『滞独日記』の場合は内面の苦悩や焦り、物理のことが多いですね。でもあるインド人の孤独な死は悲しい。あと、『のだめ』の中の黒木くんという登場人物のパリでの生活が『青緑日記』と題されています(マニアックか?)。これは朝永さんのをモデルにしたんじゃないかと勝手に思っています。そんなヨーロッパに、行ってみたいです。あとこの本は、新書として出すものではないような気がする。そうでなくても、新書御三家というらしい、岩波新書、中公新書、講談社現代新書には微妙な本が増えていると思う。もっと自重してほしいですね。たなぞう利用者諸賢と比べては全然まだまだですが、それなりに感想が増えてきてしまったので、読んでくれている方(ともちろん自分)の便を考えて、これからは感想間のリンクを充実させようと思います。願わくば自動的に飛べるような機能をたなぞうに望みたいところです。関連リンク・中島義道の本 『哲学の教科書』http://review.webdoku.jp/note/4390/12835/1?id=179406 『哲学の道場』http://review.webdoku.jp/note/4390/14870/1?id=194154・藤原正彦『若き数学者のアメリカ』http://review.webdoku.jp/note/4390/13216/1?id=172404・朝永振一郎『量子力学と私』(「滞独日記(抄)」収録)http://review.webdoku.jp/note/4390/13216/1?id=128469昔書いた感想を読むのは、ちょっと照れくさい。
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読み物として頗る興味深く読んだ。「森鴎外はわれわれの国民的作家なのだ。そんなふうに扱わないでくれ!」という部分は、本当に共感できた。
他にも異文化世界で暮らすには、格闘が必要なのだということを痛感させられた。
他の著書を見たら家族に対する恨みが書かれてあったが、本書では、そういった身内に対する毒というものは感じられない。
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33歳でウィーン大学哲学科に留学した著者。異境の地で待っていたのは、音楽の都、ハプスブルグの栄光の街という印象のあるウィーン。観光で1〜2日訪れるだけだとほとんど目に入らないかもしれないが、実は偏見に満ち満ちた街、頑固で声高に権利を主張する人が多い街でもある。4年半、ウィーンで過ごした著者の孤独な戦い。しかし理不尽には屈せず、闘う姿勢を魅せる著者に、心の中でエールを送りたくなる、そんな本。ヨーロッパ圏の人々の思想・考え方が強烈に伝わってきて逃げ出したくなるが、理解するためには、まずそれを知ることから始めねばならない。そしてその立場を知ることが、憎だけでなく、愛も生み出す原動力になるのである。
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読んでいて、少し辛い。
自分の間違いを認めているところからすると、著者は傲慢な人ではない。
しかし、何をしたくてウィーンに行ったのかが明確でない。
ウィーンに行った目的が明確でないので、細かな事件が重大に書かれている。
固有名詞を出してまで書くようなことではないと思う。
私費留学生で、同じ思いをしないようにという老婆心だろうが、
それなら私費留学生用のパンフレットでよいかもしれない。
お話は、ありがちな話だし、契約がからむことは、言葉の障壁は大きい。
日本語では、いいかげんな口約束が、実現される確率は高い。
欧米でそれを期待することが問題なのではないだろうか。
相手の国の文化を理解せずに、そこで暮らそうという点は、著者が傲慢なのかもしれない。
それでも、参考にはなる。
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学生としての海外ウィーン生活での異文化との奮闘、海外での日本人社会における階級社会など、30年前の体験談。今なら違うだろうな、という点(情報収集の容易さ)や今も一緒かな(日本人社会の階級)他の都市(自分の住んできた都市)ならどうか、など、比較して考えて読めた。