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紙の本
生きることと死ぬことの実感
2003/11/14 19:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポカ - この投稿者のレビュー一覧を見る
たまたま、学生時代からの友人とこの本の話になったので、本屋をのぞいて、ページをめくってみたら、懐かしい写真が飛び込んできて、この写真を目の当たりにしたときの衝撃を瞬間的に思い出し、即買ってしまいました。
この本は、1983年に発刊された書籍です。
そこには、ニンゲンが犬に食われている写真があって、それがものすごく衝撃的でした。
はじめてこれを見たのは、まだ学生の頃だったと思います。
「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ。」
そう書いてありました。
なにかを突きつけられたような思いでした。
そうか、人間もなんら特別ではないんだ、自然のなかのひとつに過ぎないのだ、と改めて気づかされたように思いました。
「いのち、が見えない。」
と、藤原新也は言います。
「本当の死が見えないと、本当の生も生きれない。等身大の実物の生活をするには、等身大の実物の生死を感じる意識をたかめなくてはならない。」
と。
現在、わたしたちは、死を恐れ、生きることに執着するわりには、死に対しての実感が薄いのではないでしょうか。
死について考えることをしないから、死が恐ろしいのではないでしょうか。
生きることへも死ぬことへも実感が伴なわなくなってきているのではないのでしょうか。
最近の世の中、さまざまな事件を見るにつけ「生きる」ということの根本が失われてきているのではないか、と思います。
頭でっかちになりすぎて「生きる」力というものが、希薄になっているのではないか、と。
それは、延いては「死」というものについて、同時に「命」というものについても希薄になってしまっているということではないか、と。
「ひとがつくったものには、ひとがこもる。だから、ものはひとの心を伝えます。ひとがつくったもので、ひとがこもらないものは、寒い。」
このことばに、わたしは考えます。
今、日本に足りないものは、なんだろう。
今、自分に足りないものはなんだろう。
今だからこそ考えなくてはならないこと、立て直さなくてはならないことがあるのではないか、と。
わたしは、この本を手元に置いて、時折開いて見るだろうと思います。
そして、この本に再会できたことをうれしく思います。
紙の本
すべてが雪崩れていくその一点
2005/09/22 09:19
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯シリル - この投稿者のレビュー一覧を見る
死を想え。ラテン語でメメント・モリ。
さまざま死者たちの写真に著者の短いコメントが添えられている。たとえば、死体を野焼きする写真にはこんな具合に。
「ニンゲンの体の大部分を占める水は、水蒸気となって空に立ち昇る。それは、雨の一部となって誰かの肩に降りかかるかもしれない。何パーセントかの脂肪は土にしたたり、焼け落ちた炭素は土に栄養を与えて、マリーゴールドの花を咲かせ、カリフラワーをそだてるかもしれない」
死を想え。
この言葉は、言葉の厳格な使用法からいって正しい。僕らは死を見ることはできない。想うだけだ。医者や兵士が見なれているのは死ではなく、死体であり、使い果たされた肉体であり、物質である。あるいは死への恐怖や想像であり、かつて生者だった頃の面影であり、追憶であり感情であり、死そのものではない。
死を見るものは死者だけだ。生者にとって死は抽象であって、僕らはただそれを想うことしかできない。ゆえに、死を想え。
死は生の尊さの証明のためにあるものではないし、深刻さや厳粛さを歌ったりもしない。それはただ、そういうものであり、そこにあるものだ。モラルや虚無や法則を持ち込まず、人間も含め、森羅万象が雪崩れていくその一点、物質化していくその一点を想うことは、人の夢想の必然でもある。
メメント・モリ。「無想を想え」という反語のような名著。
紙の本
月光を浴びながら
2003/09/20 08:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
写真集である。
観光写真はない。酸鼻刺激的なものはある。
ぼかしたフレームワーク、さざめく粒子、流麗なブレがページを駆動する。
散文詩集である。
詩は人を救わない。けれど優しい棘があなたを誘う。
警世の書である。
固有人名も、歴史の事件も、登場しない。その必要はない。
隅から隅まで、この世を歩けば、憂いに満ちている。
箴言の書である。
床に着くことが、楽しみになる。戒名はいらない。
直球の書である。
藤原新也は【普遍】である。
そして、死想の書。
藤原新也は、あきらめない。