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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:1991.6
  • 出版社: 東京創元社
  • レーベル: 創元推理文庫
  • サイズ:15cm/380p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-488-27302-5
文庫

紙の本

夏の記憶 (創元推理文庫)

著者 ピーター・ロビンスン (著),幸田 敦子 (訳)

夏の記憶 (創元推理文庫)

税込 619 5pt

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みんなのレビュー4件

みんなの評価3.3

評価内訳

  • 星 5 (0件)
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  • 星 1 (0件)

紙の本

忘れがたい、夏。

2016/07/24 06:13

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る

アラン・バンクス主席警部シリーズ第二弾。
今回は町中の事件ではなく、中心街から15マイルほど離れたキャンプ場やら丘陵などがある場所で、石垣の中に男性の死体が埋まっているのが発見される。

そこから村の人々の心が波立ち、関係性が通り一遍ではないことが浮かびあがる。
思わぬものを目撃してしまい、そのことにおびえるよりも自分の力で事件を解決したら有名になってこんな田舎から出ていけるのに、と考えてしまう若い娘の気持ちがせつない。
その結果、出てしまう行方不明の人物を探すのに、グリスソープ警視は20年以上前の事件を思い出す。
ブレイディとヒンドリー、『荒れ地連続殺人事件』(これは実話)。
そんなにもイギリス本土では衝撃的な事件だったんだなぁ、と感じる(余談ではあるが、FBI行動分析課はゾディアック事件の模倣犯としてサカキバラ事件を分類しているらしい)。

タイトルの『夏の記憶』はこの年の夏だけではなく、そもそもの始まりだったと言える10年前の夏のことでもある。 誰もが抱く誰かへの印象が重なり合ってその人物の実像に近いものをつくっていくけど、でも些細な誤差の積み重なりが虚像をつくっていたのなら? 見えているものはどこまでが真実に近いのか。
謎を生むのも、見つけるのも見つけられたくないのも、結局は人。
後味は大変よろしくないです・・・でもこの苦さが、どうしようもない真実。
地味なれど、古き良きミステリ、という手ごたえは見事なものです。
アラン・バンクスものはいつもそうだけど。

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紙の本

典型的な現代英国ミステリ

2002/03/01 03:27

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 夏のある日、谷間の町イーストヴェルは、一つの犯罪によって、豊かな自然が醸し出す穏やかな雰囲気を奪われた。父親の遺産を受け継ぎ、大学教授の職を辞して田舎に家を買い、郷土の産業史を研究していた敵のない男が殺害されたのだ。
 古い石垣を崩し、その中に隠されていた男の死体は、別の場所から運び込まれている。
 誰が、どこで、何故──彼を殺したのか?
 
 
 世紀の変わってしまった現在からしてみれば、この作品が上梓された1988年という年も、随分と前のような気がしてしまうが、第一作の『罪深き眺め』に続いて、『夏の記憶』も現代英国ミステリを代表する特徴を備えたミステリとして紹介されている。
 
 《現代英国ミステリ》なる枠組みを、もっとも顕著に示しているのが、事件の起こる街がロンドンのような都会ではなく──英国ミステリにおいては、ロンドンが唯一の大都会として認知されてしまうほどに、殺人事件の舞台として酷使されている──、イギリスの北部ヨークシャーのイーストヴェルとなっていることだろう。
 
 そして、小さなコミュニティが持つ、噂を主にした情報伝達の昨日を維持している田舎の街に、ロンドンからやってきたのが主人公のバンクス主席警部。彼は、前作の事件を解決したことによって、部下の警官たちとも馴染み、既にイーストヴェルでの生活も一年半が過ぎている。それでも、彼がまだまだ他所者であることには変わりがなく、おそらくは永久に特殊な位置をしめることになるのだろう。
 
 クリスチアナ・ブランドのキャラクター、《ケントの恐怖》ことコックリル警部は、地元きっての有名人という立場を利用して捜査にあたるが、バンクスの場合、そうはいかない。自分が他所者であることを意識して、さらに警官としてのイメージを巧みに合わせながら、住民たちから情報を引きだしていく会話のシーンは、本シリーズの見どころの一つである。
 
 
 一人の美しい少女が第二の被害者として、作品の表紙、本文の冒頭から登場する。彼女は、若く、幼く、美しい。だが、物語が展開する前から、悲惨な運命が作者ロビンスンの手によって彼女にもたらさせるということがわかってしまう。
 
 結果は言わずもがな。魅力的なキャラクターを描いておきながら、あっさりと命を奪い、死んでしまった人間の愚かしさによって読者の感情を動かそうという試みは、個人的にあまり好きではない。その余韻だけが強烈で、山の麓で見つかった男の死に関する印象が、ほとんど残らなかった。
 
 謎解きが楽しいミステリというよりは、一人の少女が死んでしまうことへの、あまり心地よいとは言えない残響のほうに重心が置かれてしまっている。クリスティならば、誰もが恨んでいる人間を被害者として用意していただろう。酷い話だが、それならば感情の動きが少なくて済むから、謎解きを楽しみたい読者にとっても、楽しませたい作者にとっても都合がいい。
 
 読者の意識を真犯人から逸らすための登場人物たち──赤い鰊──が、上手く配置されているこの作品だけに、もっとも大きな謎として呈示されたはずの殺人に関して、《どうして》《どこで》《誰が?》という答えを求めることを楽しみたかった。現代のミステリには追い求めにくい条件なのかもしれない。
 
 秘せられた人間関係から、真の姿を求めるという趣向も、単一の犯人を求める本格ミステリへ気持ちを偏らせたままでは、なかなか評価しづらい。現代のミステリを楽しもうとするのであれば、古き良き枠組みへのこだわりを捨て去る必要があるということか。
 
 読後に忌忌しいまでの余韻を残す作品。物語としては一流ということだろうか。ミステリとしても、構成は巧み、不正解の可能性へと読者の心理を傾かせる仕掛けが上手く使われ、評価できる。しかし、ミステリとしての新しい驚きはなかった。

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2006/09/08 14:12

投稿元:ブクログ

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2011/05/20 21:11

投稿元:ブクログ

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